溺愛されていると信じておりました──が。もう、どうでもいいです。

 いつものように屋敷まで迎えにきてくれた、幼馴染みであり、婚約者でもある伯爵令息──ミックに、フィオナが微笑む。

「おはよう、ミック。毎朝迎えに来なくても、学園ですぐに会えるのに」

「駄目だよ。もし学園に向かう途中できみに何かあったら、ぼくは悔やんでも悔やみきれない。傍にいれば、いつでも守ってあげられるからね」

 ミックがフィオナを抱き締める。それはそれは、愛おしそうに。その様子に、フィオナの両親が見守るように穏やかに笑う。


 ──対して。

 傍に控える使用人たちに、笑顔はなかった。


24h.ポイント 504pt
197
小説 2,232 位 / 183,880件 恋愛 1,068 位 / 56,033件