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街道にて
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ローグ町で稼いだドーラは小さな荷車を買っていた、人目の付かない場所へくると空間収納からズルリと取り出す。
馬は使わず魔力で動かす魔導式だ、彼女は小さな魔石に魔力を貯めておいたのだ。
これなら道すがら魔力を消費せずに済む、彼女が稀代の魔女だからこそ出来ることだ。
「うふ、便利すぎる!好きな時に稼働させて移動できるのは有難いわ、乗り合いだと時間に縛られるし窮屈だもの」
不定期に運行されている辻馬車は乗客がある程度集まらないと動いてくれない。
運賃はそれなり取るくせにサービスも悪いのが不満だったドーラは、自分専用の移動手段が持てて最高にご満悦である。
「頑張った甲斐があるよね~しがらみを捨てた自由な旅ってサイコー!」
鼻歌を奏で干芋を噛みながら街道を走るドーラは次の集落の確認をする、地図は所有しているが正確とは言い難い代物だ。
「真っ直ぐ街道を行けば迷いようがないけど、小さな集落は消滅してることもあるからね」
住み慣れても環境が悪化すれば人は移動する、すべてが安定している王都とは違うのである。
いざとなれば転移するか空を滑空すれば良いが、彼女とて体力と魔力は温存したいのだ。
「魔力を増やすってどうすれば良いんだろう?みんな魔法が使えないもん、教わりようがないのよね」
城にあった古い文献を漁ったこともあるが、ろくな手掛かりは記されていなかった。わかったことは個々に所有する魔力量はバラバラということだけだ。
「使って増やすしかないのかな……8年前に比べればかなり増えたけど」
血脈と共に流れるという魔力はどのように作られているのか、古代からの謎とされていて物の本には生命力と呼応比例するとしか書かれていないかった。
考えるのが面倒になったドーラは噛み砕いた芋を飲み込み水筒に口を付ける。
そして、ふと前方を見た時に異変に気が付いて荷車を停車させた。風に乗って漂ってきたのは血の臭いだった。
「盗賊かな、やっぱ都から離れると増えるもんだね」
ローグ町周辺でも良くない噂は耳にしていた、上位ランクの冒険者はほぼ毎日のように不届き者の退治に駆り出されていた。
「Fランの私には声がかからないもんなぁ」
ドーラは荷車から降りると収納して風魔法を発動させると鳥のように旋回して、トラブルの元を探った。
停車場所から150mほどの所に商団らしき馬車が2台確認できた、その護衛らが盗賊団と応戦している最中のようだ。
「このまま飛行してやり過ごすか、首を突っ込んで親切なふりをするか……どうしよ?」
選択に少し悩む彼女は戦況を見る、戦いは拮抗していてるが馬と幾人かの商人が負傷しているようだ。
怪我人を見てしまった彼女は見ぬふりをするのが辛くなる、人間不信の彼女は人と関わるのを嫌っているが情けだけは捨てきれない。
「はぁ私も大概お人好しだよね~」
自由に飛び回る所を見せたくない彼女は近くの林へ降り立った。
そこから街道へと真っ直ぐ突進すれば現場が目前に現れる、小柄な女子が空気を読まずに現れたものだから争っていた両陣は剣戟の手を止めて視線を一斉に向けて来た。
「あーどうも道に迷っちゃって、御取込み中に失礼」
「は?」
一番に我に返ったらしい盗賊の一人が攻撃対象を生意気そうな小娘へと変更させて襲ってきた。
「きゃーこわーい」
ドーラは棒読みで台詞を吐きながら振り上げられた錆びた剣を往なし、電撃で盗賊の一人を地に沈めた。
電撃魔法は指から発せられ対象をバチンと感電させるので、目の前にいても何をしたのかわからない。
相変わらず護衛兵とぶつかり合う盗賊は弱そうな女子には目もくれない。
「仲間がやられたのに冷たくない?それとも視界に入らないのかな」
掛けた言葉をガン無視された上に、交わす剣の音が耳障りに思った彼女は立腹した。
盗賊側にだけ電撃を横に流して卒倒させれば、さすがに彼らは気が付いて、ドーラの方へ視線を集めるのだった。
バチバチという不快音とともに電撃の光を目にした者達は何事かと騒ぎ立てる。
「ちょっと、騒ぐ前に負傷者を診せなさいよ。それからそこで惚けてるアンタ、盗賊を縛り上げてよ」
「あ、ああ……済まない動転してしまったよ」
雇われ護衛兵は4名いたが、さして活躍もできないまま終わったことに拍子抜けをしていた。
一方、ドーラは倒れていた商人達に治癒魔法をかけて歩いた。身バレがどうこう言っている場合ではない。
呻き声をあげていた怪我人たちは、急に楽になった体に驚いて傷があったはずの腕や腹を擦っていた。
内臓をやられれば命を落とすのが当然の世界では奇跡的である。
「おお、なんと礼を言えば」
「あ~そういうのいいから。こんな事で礼も要らない、ただ私がしたことは他言しないでほしいわ」
恩を押し付けることもせず、起きた事を口止めしてくるだけの不可解な女子を見て商団の彼らは茫然とするばかりだ。
「なあアンタ、王都に現れた魔女様ってまさか」
「……だからそれが嫌なんだってば!」
ドーラは気遣いを知らないらしい護衛兵に、電撃と炎玉を出して威嚇してみせる。目の前で顕現された魔法を見て兵は腰を抜かして後退る。
「いいこと、私の噂をどう聞いてるかしらないけど、今日の事を誰かに漏らしたら容赦しないから」
「ひぃ!」
こうやって脅しても人の口に戸を立てられないことを彼女は知っていたが、牽制せずにはおれないのだ。
「時間稼ぎにはなるでしょ」
慌てて後退していく兵達を睨み彼女は独り言ちた。
馬は使わず魔力で動かす魔導式だ、彼女は小さな魔石に魔力を貯めておいたのだ。
これなら道すがら魔力を消費せずに済む、彼女が稀代の魔女だからこそ出来ることだ。
「うふ、便利すぎる!好きな時に稼働させて移動できるのは有難いわ、乗り合いだと時間に縛られるし窮屈だもの」
不定期に運行されている辻馬車は乗客がある程度集まらないと動いてくれない。
運賃はそれなり取るくせにサービスも悪いのが不満だったドーラは、自分専用の移動手段が持てて最高にご満悦である。
「頑張った甲斐があるよね~しがらみを捨てた自由な旅ってサイコー!」
鼻歌を奏で干芋を噛みながら街道を走るドーラは次の集落の確認をする、地図は所有しているが正確とは言い難い代物だ。
「真っ直ぐ街道を行けば迷いようがないけど、小さな集落は消滅してることもあるからね」
住み慣れても環境が悪化すれば人は移動する、すべてが安定している王都とは違うのである。
いざとなれば転移するか空を滑空すれば良いが、彼女とて体力と魔力は温存したいのだ。
「魔力を増やすってどうすれば良いんだろう?みんな魔法が使えないもん、教わりようがないのよね」
城にあった古い文献を漁ったこともあるが、ろくな手掛かりは記されていなかった。わかったことは個々に所有する魔力量はバラバラということだけだ。
「使って増やすしかないのかな……8年前に比べればかなり増えたけど」
血脈と共に流れるという魔力はどのように作られているのか、古代からの謎とされていて物の本には生命力と呼応比例するとしか書かれていないかった。
考えるのが面倒になったドーラは噛み砕いた芋を飲み込み水筒に口を付ける。
そして、ふと前方を見た時に異変に気が付いて荷車を停車させた。風に乗って漂ってきたのは血の臭いだった。
「盗賊かな、やっぱ都から離れると増えるもんだね」
ローグ町周辺でも良くない噂は耳にしていた、上位ランクの冒険者はほぼ毎日のように不届き者の退治に駆り出されていた。
「Fランの私には声がかからないもんなぁ」
ドーラは荷車から降りると収納して風魔法を発動させると鳥のように旋回して、トラブルの元を探った。
停車場所から150mほどの所に商団らしき馬車が2台確認できた、その護衛らが盗賊団と応戦している最中のようだ。
「このまま飛行してやり過ごすか、首を突っ込んで親切なふりをするか……どうしよ?」
選択に少し悩む彼女は戦況を見る、戦いは拮抗していてるが馬と幾人かの商人が負傷しているようだ。
怪我人を見てしまった彼女は見ぬふりをするのが辛くなる、人間不信の彼女は人と関わるのを嫌っているが情けだけは捨てきれない。
「はぁ私も大概お人好しだよね~」
自由に飛び回る所を見せたくない彼女は近くの林へ降り立った。
そこから街道へと真っ直ぐ突進すれば現場が目前に現れる、小柄な女子が空気を読まずに現れたものだから争っていた両陣は剣戟の手を止めて視線を一斉に向けて来た。
「あーどうも道に迷っちゃって、御取込み中に失礼」
「は?」
一番に我に返ったらしい盗賊の一人が攻撃対象を生意気そうな小娘へと変更させて襲ってきた。
「きゃーこわーい」
ドーラは棒読みで台詞を吐きながら振り上げられた錆びた剣を往なし、電撃で盗賊の一人を地に沈めた。
電撃魔法は指から発せられ対象をバチンと感電させるので、目の前にいても何をしたのかわからない。
相変わらず護衛兵とぶつかり合う盗賊は弱そうな女子には目もくれない。
「仲間がやられたのに冷たくない?それとも視界に入らないのかな」
掛けた言葉をガン無視された上に、交わす剣の音が耳障りに思った彼女は立腹した。
盗賊側にだけ電撃を横に流して卒倒させれば、さすがに彼らは気が付いて、ドーラの方へ視線を集めるのだった。
バチバチという不快音とともに電撃の光を目にした者達は何事かと騒ぎ立てる。
「ちょっと、騒ぐ前に負傷者を診せなさいよ。それからそこで惚けてるアンタ、盗賊を縛り上げてよ」
「あ、ああ……済まない動転してしまったよ」
雇われ護衛兵は4名いたが、さして活躍もできないまま終わったことに拍子抜けをしていた。
一方、ドーラは倒れていた商人達に治癒魔法をかけて歩いた。身バレがどうこう言っている場合ではない。
呻き声をあげていた怪我人たちは、急に楽になった体に驚いて傷があったはずの腕や腹を擦っていた。
内臓をやられれば命を落とすのが当然の世界では奇跡的である。
「おお、なんと礼を言えば」
「あ~そういうのいいから。こんな事で礼も要らない、ただ私がしたことは他言しないでほしいわ」
恩を押し付けることもせず、起きた事を口止めしてくるだけの不可解な女子を見て商団の彼らは茫然とするばかりだ。
「なあアンタ、王都に現れた魔女様ってまさか」
「……だからそれが嫌なんだってば!」
ドーラは気遣いを知らないらしい護衛兵に、電撃と炎玉を出して威嚇してみせる。目の前で顕現された魔法を見て兵は腰を抜かして後退る。
「いいこと、私の噂をどう聞いてるかしらないけど、今日の事を誰かに漏らしたら容赦しないから」
「ひぃ!」
こうやって脅しても人の口に戸を立てられないことを彼女は知っていたが、牽制せずにはおれないのだ。
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慌てて後退していく兵達を睨み彼女は独り言ちた。
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