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呑気な魔女と動き出す追手
医学と薬草学の街ローグに滞在して、荒稼ぎしていたドーラだったが貢献度が高く評価と点数が増えてFからDにランクアップしないかと打診があった。しかし、彼女は頭を横に振って断った。
「どうしてですか!?受けられる仕事も増えますよ、箔も付きます」
「いや、そういうのいいから。目立ちたくないし、ひとつ飛びとかヤダ過ぎる」
「え、自覚ないんですか?十分目立ってますよ、希少な薬草ばかり採取してくるから医局と薬局ではかなり有名ですよ」
「な!?噓でしょ!これほど地味なFランなのに」
調子に乗って稼いでしまった彼女は意図せず名を上げてしまっていたのである。
見た目ばかりを気にしていたドーラはうっかりが過ぎたようだ。
「やばいな、嗅ぎつかれたらどうしよう……」
認識疎外の魔法をかけているとはいえ、疑惑はついて周るものだ。正体がバレるのは非常に面倒だ。
「いっきにボーン!と片づけても良いけど要らぬ恨みは買いたくないしな~」
「ぼーん?とは」
「こっちの話。とにかくランクアップは願い下げだから、そろそろ違う町にも行きたいし」
冒険者である彼女を引き止める権利はギルドにはない、”冒険者は自由気儘”そういう規約なのだから。
「うーん、それは残念です。でもいつか戻ってきてくださいね!」
「気が向いたらね、お世話になりました」
改めて暦を確認すれば、ローグに二週間近くも滞在していた。
身バレがしたくないはずのドーラは少し反省する、取り合えず食糧調達と日用品を買い漁りどこへ移動しようか考えた。
「やっぱこのまま南かな、迂回してもいいけど勝手な王族のために予定変更も腹立つもん」
思えば好きでもない王子と婚約させられ8年間も自由を奪われてきた。
賞賛の声より妬み嫉みと迫害の声の方が大きかった、国益の為だけに繋がれていた少女にとって八年間は長すぎる苦行だった。
ドーラことカサンドラが暴走せずに堪えたのは僅かな理性があったお陰である。
そのせいか少し性格が歪み、人間不信で素直になれない部分は見逃して良いと思われる。
***
ドーラが鞄一つも持たずに街を移動していたその頃。
アルニム国王城では魔女カサンドラが家を捨てたことが露見して大騒ぎになっていた。
「召還に対して一向に反応せんと思っていたら!クソォ!」
常日頃から王家をコケにした態度を貫いていたカサンドラだった、それ故に登城しないのはいつものように拗ねているのだろうと王たちは楽観していた。
雨季に入る前に毎年行っていた山間部視察と河川の堤防修復などを、カサンドラ一人に押し付けて来た王と政府高官らは青褪める。
「ど、どうしたらいいのだ……今からでもギリギリ間に合うとて人を使う予算が」
魔法が自在に使える少女一人に任せてしまえば、ほとんど金はかからなかった。それが当たり前と享受してきた彼らは焦り出す。
今更予算振り分けなど出来ようもないのだ。
「もしも予期せぬ嵐や台風災害が発生したら、被災者への支援はもちろん国全体の食糧確保が……あぁあ!」
真っ先に床に崩れ落ちたのは財務大臣だ、なにか不測の事態が起きてもカサンドラが動けば簡単に対処してしまう。それに慣れた大臣らは備蓄などの事項が念頭から消し去っていた。
余剰分となった国家予算はそのまま政務に携わった者たちへ賞与として分配されてきた。
誰よりも貢献したカサンドラに褒章など与えもせずに――。
街道整備やら国交拠点を荒らす厄介な盗賊が現れても彼女一人が動けば簡単に処理できた。国の防衛手段さえも幼い少女に丸投げしていたのは呆れた所業だ。
いま現在、穴だらけで無能と化した集団が統べる国家はいつ瓦解しても可笑しくない。
最悪の事態と漸く気が付いた王は「今すぐ連れ戻せ」と咆えた。
「方法は問わん!なにがなんでも捕まえるのだ、逆らうようなら侯爵一家を人質にでもして良い!」
手段を選べる状態にない大臣らはほぼ全員が同意して動き出す。
しかし、水を注す声があがる。
「父上、それは最大の悪手となりましょう。彼女は家族を愛していた、それなりにですがね」
「な、なにを呑気な!もはや情や道徳心など」
形振りかまっておれないと騒ぎたてる父王にブルーノ王子は頭を振って諫める言葉繋いだ。
「彼女を怒らせたら自然災害の比ではありません、長年虐げられ道具として酷使されてきたカサンドラがなぜ去り際に我々に報復しなかったかわかりませんか?」
「え……、ま、まさか」
「彼女は言いました”家族を咎めないと約束して欲しい”とね、言葉の裏にある意味をお考えください」
「あ――あぁぁ、そんな……たかが小娘ごときに!余は大国アルニムの21代目の王なのだぞ!」
その散々侮った相手に国の存亡の危機を握られているという事実を愚王はまだ認めようとしていない。
ガクリと肩を落とした王に少し場違いな明るい声がかかった。
「ならば私が連れ戻して差し上げよう、はなから愚弟などに稀代の魔女様の相手として不足だったのが大きな原因なのですよ、この眉目秀麗にして天才の私が甘い事をちょっと囁けば……ふふふ」
「あ、兄上」
第一王子エリアスが荒れる議会の場に颯爽と現れて、不敵な笑みを浮かべた。
「どうしてですか!?受けられる仕事も増えますよ、箔も付きます」
「いや、そういうのいいから。目立ちたくないし、ひとつ飛びとかヤダ過ぎる」
「え、自覚ないんですか?十分目立ってますよ、希少な薬草ばかり採取してくるから医局と薬局ではかなり有名ですよ」
「な!?噓でしょ!これほど地味なFランなのに」
調子に乗って稼いでしまった彼女は意図せず名を上げてしまっていたのである。
見た目ばかりを気にしていたドーラはうっかりが過ぎたようだ。
「やばいな、嗅ぎつかれたらどうしよう……」
認識疎外の魔法をかけているとはいえ、疑惑はついて周るものだ。正体がバレるのは非常に面倒だ。
「いっきにボーン!と片づけても良いけど要らぬ恨みは買いたくないしな~」
「ぼーん?とは」
「こっちの話。とにかくランクアップは願い下げだから、そろそろ違う町にも行きたいし」
冒険者である彼女を引き止める権利はギルドにはない、”冒険者は自由気儘”そういう規約なのだから。
「うーん、それは残念です。でもいつか戻ってきてくださいね!」
「気が向いたらね、お世話になりました」
改めて暦を確認すれば、ローグに二週間近くも滞在していた。
身バレがしたくないはずのドーラは少し反省する、取り合えず食糧調達と日用品を買い漁りどこへ移動しようか考えた。
「やっぱこのまま南かな、迂回してもいいけど勝手な王族のために予定変更も腹立つもん」
思えば好きでもない王子と婚約させられ8年間も自由を奪われてきた。
賞賛の声より妬み嫉みと迫害の声の方が大きかった、国益の為だけに繋がれていた少女にとって八年間は長すぎる苦行だった。
ドーラことカサンドラが暴走せずに堪えたのは僅かな理性があったお陰である。
そのせいか少し性格が歪み、人間不信で素直になれない部分は見逃して良いと思われる。
***
ドーラが鞄一つも持たずに街を移動していたその頃。
アルニム国王城では魔女カサンドラが家を捨てたことが露見して大騒ぎになっていた。
「召還に対して一向に反応せんと思っていたら!クソォ!」
常日頃から王家をコケにした態度を貫いていたカサンドラだった、それ故に登城しないのはいつものように拗ねているのだろうと王たちは楽観していた。
雨季に入る前に毎年行っていた山間部視察と河川の堤防修復などを、カサンドラ一人に押し付けて来た王と政府高官らは青褪める。
「ど、どうしたらいいのだ……今からでもギリギリ間に合うとて人を使う予算が」
魔法が自在に使える少女一人に任せてしまえば、ほとんど金はかからなかった。それが当たり前と享受してきた彼らは焦り出す。
今更予算振り分けなど出来ようもないのだ。
「もしも予期せぬ嵐や台風災害が発生したら、被災者への支援はもちろん国全体の食糧確保が……あぁあ!」
真っ先に床に崩れ落ちたのは財務大臣だ、なにか不測の事態が起きてもカサンドラが動けば簡単に対処してしまう。それに慣れた大臣らは備蓄などの事項が念頭から消し去っていた。
余剰分となった国家予算はそのまま政務に携わった者たちへ賞与として分配されてきた。
誰よりも貢献したカサンドラに褒章など与えもせずに――。
街道整備やら国交拠点を荒らす厄介な盗賊が現れても彼女一人が動けば簡単に処理できた。国の防衛手段さえも幼い少女に丸投げしていたのは呆れた所業だ。
いま現在、穴だらけで無能と化した集団が統べる国家はいつ瓦解しても可笑しくない。
最悪の事態と漸く気が付いた王は「今すぐ連れ戻せ」と咆えた。
「方法は問わん!なにがなんでも捕まえるのだ、逆らうようなら侯爵一家を人質にでもして良い!」
手段を選べる状態にない大臣らはほぼ全員が同意して動き出す。
しかし、水を注す声があがる。
「父上、それは最大の悪手となりましょう。彼女は家族を愛していた、それなりにですがね」
「な、なにを呑気な!もはや情や道徳心など」
形振りかまっておれないと騒ぎたてる父王にブルーノ王子は頭を振って諫める言葉繋いだ。
「彼女を怒らせたら自然災害の比ではありません、長年虐げられ道具として酷使されてきたカサンドラがなぜ去り際に我々に報復しなかったかわかりませんか?」
「え……、ま、まさか」
「彼女は言いました”家族を咎めないと約束して欲しい”とね、言葉の裏にある意味をお考えください」
「あ――あぁぁ、そんな……たかが小娘ごときに!余は大国アルニムの21代目の王なのだぞ!」
その散々侮った相手に国の存亡の危機を握られているという事実を愚王はまだ認めようとしていない。
ガクリと肩を落とした王に少し場違いな明るい声がかかった。
「ならば私が連れ戻して差し上げよう、はなから愚弟などに稀代の魔女様の相手として不足だったのが大きな原因なのですよ、この眉目秀麗にして天才の私が甘い事をちょっと囁けば……ふふふ」
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