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冒険者たち
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命を救われた事に感謝を述べる商人達だったが、どこかドーラを恐れているようだった。
大昔に消えたとされる魔法を知らしめられたのだから畏怖して当然かもしれない。
金が要らないのなら物資はどうかと商人は言う。
「そう?ならばドライフルーツとかあれば分けて頂戴」
「ええ、そんなもので良ければいくらでも」
携帯食として重宝される干物類は旅をする者には有難い食べ物である、袋いっぱいに詰め込まれたそれをいくつか受け取るとドーラはホクホク顔で立ち去ろうとした。
彼女を呼び止めたのは護衛兵の男だ、やや長身で腕に覚え有りな感じの青年である。さきほどは警戒して後退していたくせに甘味好きのただの少女と見縊ったようだ。
「キミ、それほどの力があるのなら人の役に立つべきだ。俺達とともに来い」
「はあ?私は冒険者だよ、ローグでは十分に働いたし、王都では長年に渡って貢献してきた、事情をしらないアンタに説教される謂れはないね」
「な……、貢献したとかどうせ法外な報酬を要求していたのだろう」
「無償で8年間奴隷のように使われ来たんだ、これ以上私に苦しめというのか?」
10歳からただ働きを強いられてきたと聞いた護衛兵の青年は、己の物差しで彼女を見ていたことに青褪めて謝罪する。
「す、済まない。魔女が現れたと広まった年から税が跳ね上がったから、そういうことかと邪推していた」
「なるほど、全部私が悪者にされてきたのか、通りで貴族から白い目で見られていたわけだ、恵まれた環境に身を置いていたなら私は家出なんて面倒なことしなかったわよ」
合点が行く旅の理由にやっと気が付いたらしい兵たちは手の平を返したように魔女ドーラを褒めたたえた。
噂を鵜呑みにしてきた彼らは深々と頭を下げて、魔女の間違った情報を人々に広めるとまで言い出した。
「紹介が遅れた俺はニクラスという、俺達はそこそこ名の通ったBランク冒険者グループなのさ、今回は護衛の依頼を受けてここにいる。良いところは全部嬢ちゃんに取られたけどな」
「取られたね……この先だって盗人は出るだろうし、精々頑張りなよ」
すっかり正体がバレたドーラは魔法を使ってフワリと空に飛び上がり「じゃーね」と去って行く。
なにか叫ぶ声が聞こえたが、彼女はまるっと聞こえないふりをして飛び去ったのだ。
「これ以上は付き合いきれない、冒険者ならいつかまた会うでしょ」
街道に残された彼らは崩れた馬車荷を直しながら「勧誘できなかった」と愚痴るのだった。
「稀代の魔女様をそう簡単に仲間にできるわけないじゃん」
「そうだけどよ、彼女がいれば無敵だろう?」
「それって俺達が仲間にいる必要性が霧散しねぇか」
「あ……そりゃそうだ俺ら御荷物じゃんか」
彼女ひとりで旅した方が、どれほど楽勝かとわかってしまった彼らは浅慮すぎた事を自嘲するのだった。
***
空を駆けるドーラは地を行くのに懲りて多少魔力の無駄遣いになっても下りる気にならなかった。
それに目印にしていた集落はやはり残っておらず、人の手が入った形跡が僅かに残る場所を通り過ぎる。
「この世は人に優しくないのね、ひとつ所に留まれないのは私も同様だけれど」
海の街まではまだまだ遠い、疲れた彼女は街道を少し離れた所に泉を見つけてそこにテントを張ることにした。
「ここの泉はとても冷たい、澄んでいる証拠だわ」
一応は危険はないか鑑定してから水筒へ水を注いだ、魔法で水を出しても良かったがそれでは味気ないらしい。
彼女は大きく伸びをすると己に浄化魔法をかけて横になる、道中で食べたナッツと干芋のせいかお腹は満たされていた。
周辺には獣がいるはずだが彼女は気にしない、無敵な魔女を害することが出来るならそれは神くらいだろう。
どれほど時間が過ぎたか、暗闇の中に獣とは違う気配があった。
眠っていたドーラは微動だにしないが、すでに察知して現れた者の様子を覗っている。
軽く探査魔法を使えばすぐにわかることだ、寝ながらも駆使できるのはさほど魔力を使わないからである。
テント近くをソレは探っているようだが、害意は感じられなかった。
「あぁ……そういうことか。ご苦労なことね」
彼女はゴロリと寝返りうつと気づかぬふりを貫いて浅く眠った、どうしてこんなことが出来たのか。それはその者が彼女を護らんと獣を蹴散らしていたからだ。それからソレの正体はとっくに把握していた。
「王子の頼みならなんでもするのねぇ闇の剣士さん」
ドーラは目を瞑ったままそう呟くと再び深く眠り落ちるのだ。
大昔に消えたとされる魔法を知らしめられたのだから畏怖して当然かもしれない。
金が要らないのなら物資はどうかと商人は言う。
「そう?ならばドライフルーツとかあれば分けて頂戴」
「ええ、そんなもので良ければいくらでも」
携帯食として重宝される干物類は旅をする者には有難い食べ物である、袋いっぱいに詰め込まれたそれをいくつか受け取るとドーラはホクホク顔で立ち去ろうとした。
彼女を呼び止めたのは護衛兵の男だ、やや長身で腕に覚え有りな感じの青年である。さきほどは警戒して後退していたくせに甘味好きのただの少女と見縊ったようだ。
「キミ、それほどの力があるのなら人の役に立つべきだ。俺達とともに来い」
「はあ?私は冒険者だよ、ローグでは十分に働いたし、王都では長年に渡って貢献してきた、事情をしらないアンタに説教される謂れはないね」
「な……、貢献したとかどうせ法外な報酬を要求していたのだろう」
「無償で8年間奴隷のように使われ来たんだ、これ以上私に苦しめというのか?」
10歳からただ働きを強いられてきたと聞いた護衛兵の青年は、己の物差しで彼女を見ていたことに青褪めて謝罪する。
「す、済まない。魔女が現れたと広まった年から税が跳ね上がったから、そういうことかと邪推していた」
「なるほど、全部私が悪者にされてきたのか、通りで貴族から白い目で見られていたわけだ、恵まれた環境に身を置いていたなら私は家出なんて面倒なことしなかったわよ」
合点が行く旅の理由にやっと気が付いたらしい兵たちは手の平を返したように魔女ドーラを褒めたたえた。
噂を鵜呑みにしてきた彼らは深々と頭を下げて、魔女の間違った情報を人々に広めるとまで言い出した。
「紹介が遅れた俺はニクラスという、俺達はそこそこ名の通ったBランク冒険者グループなのさ、今回は護衛の依頼を受けてここにいる。良いところは全部嬢ちゃんに取られたけどな」
「取られたね……この先だって盗人は出るだろうし、精々頑張りなよ」
すっかり正体がバレたドーラは魔法を使ってフワリと空に飛び上がり「じゃーね」と去って行く。
なにか叫ぶ声が聞こえたが、彼女はまるっと聞こえないふりをして飛び去ったのだ。
「これ以上は付き合いきれない、冒険者ならいつかまた会うでしょ」
街道に残された彼らは崩れた馬車荷を直しながら「勧誘できなかった」と愚痴るのだった。
「稀代の魔女様をそう簡単に仲間にできるわけないじゃん」
「そうだけどよ、彼女がいれば無敵だろう?」
「それって俺達が仲間にいる必要性が霧散しねぇか」
「あ……そりゃそうだ俺ら御荷物じゃんか」
彼女ひとりで旅した方が、どれほど楽勝かとわかってしまった彼らは浅慮すぎた事を自嘲するのだった。
***
空を駆けるドーラは地を行くのに懲りて多少魔力の無駄遣いになっても下りる気にならなかった。
それに目印にしていた集落はやはり残っておらず、人の手が入った形跡が僅かに残る場所を通り過ぎる。
「この世は人に優しくないのね、ひとつ所に留まれないのは私も同様だけれど」
海の街まではまだまだ遠い、疲れた彼女は街道を少し離れた所に泉を見つけてそこにテントを張ることにした。
「ここの泉はとても冷たい、澄んでいる証拠だわ」
一応は危険はないか鑑定してから水筒へ水を注いだ、魔法で水を出しても良かったがそれでは味気ないらしい。
彼女は大きく伸びをすると己に浄化魔法をかけて横になる、道中で食べたナッツと干芋のせいかお腹は満たされていた。
周辺には獣がいるはずだが彼女は気にしない、無敵な魔女を害することが出来るならそれは神くらいだろう。
どれほど時間が過ぎたか、暗闇の中に獣とは違う気配があった。
眠っていたドーラは微動だにしないが、すでに察知して現れた者の様子を覗っている。
軽く探査魔法を使えばすぐにわかることだ、寝ながらも駆使できるのはさほど魔力を使わないからである。
テント近くをソレは探っているようだが、害意は感じられなかった。
「あぁ……そういうことか。ご苦労なことね」
彼女はゴロリと寝返りうつと気づかぬふりを貫いて浅く眠った、どうしてこんなことが出来たのか。それはその者が彼女を護らんと獣を蹴散らしていたからだ。それからソレの正体はとっくに把握していた。
「王子の頼みならなんでもするのねぇ闇の剣士さん」
ドーラは目を瞑ったままそう呟くと再び深く眠り落ちるのだ。
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