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愛とは
しおりを挟む「私は愛を取り戻したかっただけですわ!」
反省する様子も見られないバネッサの言い分に、呆れと怒りの感情を綯交ぜにしたオーギュスタンの父バダンテール公爵は深く溜息を漏らす。
彼もまた息子のしでかした大罪に頭を悩ませていた。
「申し訳なかったアレオン伯爵殿、私がアレの言い分を真に受けてしまったのが原因だ。愛するシャルドリーヌ嬢の為に支援したいなどと出まかせを聞いてしまった」
沈痛な面持ちの卿は深々と頭を下げる、彼もまた被害者と言えよう。
「これまで通り白い結婚が成立するまで支援は続ける、こんな事で赦されるとは思っていないが」
「いいや、顔を上げて下されバダンテール殿。私が助かったのは事実ですから、それに支援も結構、我が家は持ち直したのだ」
しかし、バダンテール卿は引かなかった。慰謝料とでも思って欲しいと言ったのだ。そして、バネッサの所業については色々と意見がでたが、反省させる意味で娼館行きにした。これも慰謝料を払わせる意味がある。果たして貴族に支払う額面を考えると一生出て来られないかも知れない。
それを聞いたオーギュスタンは半狂乱になり彼女を救おうと動いたが、バダンテール卿に敵うわけもなく「白い結婚後は廃嫡とする」と宣言された。
***
「はぁ、空気が美味しいわ!私は自由なのね」
晴々とした顔でそう言うのは17歳になったばかりのシャルドリーヌである。なんの柵もなくなった彼女は今にも飛び跳ねそうな勢いである。
「お嬢様、はしゃぎ過ぎです。お気持ちは痛いほど存じておりますが」
「ふふ、ありがとう。でも良かったの?公爵のところにいた方が安泰でしょうに」
これまで親身に世話をしてきたメイドの一人が「ついて行きたい」と申し出た。最初は断ったが、給金が減ったとしても側に仕えたいのだと熱意に折れた。
「さぁ、働きますよ!お嬢様、最初のお仕事はなんでしょう?」
メイドは人懐っこい顔でそう言った。
「うん、そうねぇ。じゃあ私の愚痴でも聞いて貰おうかしら?これまでの3年間の愚痴なんだから覚悟しといて?」
「お、お手柔らかにお願いします。ハハッ」
完
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