6回目のさようなら

音爽(ネソウ)

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「え、リーザが来ていない?」

翌日、学園へやってきたマークスは彼女のクラスへやってきてアホヅラを晒した。

「なんだい!せっかく恋人に戻してやろうと来てやったのにさ!」
「……きみたち、また別れたの?」

「別れてないから来てやったんだよ!」
「なんでそんなに上から目線なの?立場からいえばリーザ嬢は目上の存在だよ」

婚約者でもないマークスが、リーザを呼び捨てにすることを疑問に思っていたクラスメイトが言う。
「いいだろ別に!将来は婚約してやるんだから!」
「……してやるんだ、へぇ」





プリプリと身勝手に怒ってマークスは学食へやってきた。ちょうど昼時だった。
そしてハタと気が付く、学食はただではない。


衣服のポケットに手を突っ込み探すが出てくるのはゴミばかり、銅貨1枚なかった。
仕方なく無料サービスの冷水だけをコップに入れて飲む。


ググーッと腹が鳴って切なくなった。

そう、いつもならリーザにひっついて奢らせていたから。それも一番高いメニューを。
周囲からビーフシチューの香と美味しそうに食む咀嚼音に耐えかねて、マークスは食堂から逃げる。


たった一食分の代金が払えない自分が惨めになり、午後の授業を放棄して帰っていく。
辻馬車に乗る金もないので、すきっぱらを摩りながら歩く。


「くそっ!こんなことなら別れ話なんて演出しなきゃ良かった!次からは週末か連休に別れてやろう」
意味不明な恋人ごっこを思い描いてマークスは家路を急いだ。



***

「ただいま」
貧乏男爵家には住み込みのメイドすらいない、なので誰も迎えない。
通いの下女が週一回やってきて、掃除と洗濯をしていくだけだ。


とにかく腹が空いて辛いのでキッチンへ急ぐ。
そこには残り物を温めていた母がいた。


「あら、マークス早いのね?」
「あぁ、昼飯食えなかったからね……」

やっと一人分というスープを二人でわけることにした、それからカピカピの固い黒パンも半分こ。
寂しい食卓を囲んで食べる親子。


「リーザ様とうまくいってないの?いつも奢ってくださるのでしょ?私も食べたいわービーフシチューといちごケーキ」

「……、昨日別れ話したらスネちゃったんだ。まぁ、すぐもとに戻るけど」
硬いパンを浸して薄味のご飯に顔を顰めるマークス。


「恋は駆け引きとはいうけど、あまり頻繁では逆効果よ?女心は移ろいやすいから」
ウッカリ気味な息子を窘める母にマークスは聞こえないフリをした。


「デザートはないの?」
「庭のオレンジの木が実を付けたわ、まだ酸っぱそうだけど」

マークスはチェッと舌打ちして、居室に籠った。

彼はいまいち満たされない腹とは逆に、なにかモヤモヤする心でいっぱいだ。

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