6回目のさようなら

音爽(ネソウ)

文字の大きさ
1 / 4

しおりを挟む
「悪いな好きな人ができたんだ、だから別れて欲しい」
「そうですか」


何度目かわからない別れ話をされたリーザは目が死んでいた。

「ところでマークス、これは何度目のことか覚えてる?」
「え、……さぁ?」


”今月だけで6回目よ”
リーザは真顔で教えた、しかしマークスはキョトンとした顔をしただけだった。
少なからず相手を傷つける行為をしているのに罪悪感がないようだ。


「ところでリーザ、どうして公園なんだい?ボクはカフェでケーキを食べながら話したかった」
「別れ話の度に私に集るからでしょ、いい加減にしてよ、サヨナラ」


元恋人を置いてさっさと馬車に乗りこむリーザ。
だがマークスは駆け寄ってきてドアを叩いた、いまさらなんの用だとリーザは不快な表情を剥き出しにした。


何言か叫んでいるが知ったことではない。


「さっさと帰りましょう、小腹が空いたわ」
「では、お屋敷に着きましたらオレンジケーキをお出ししましょう」

同乗していた侍女が予め用意していたらしいオレンジムースのケーキを聞いて機嫌が良くなるリーザである。


***

一方、置き去りにされたマークスは奢られるつもりだったカフェを無念そうに見つめていた。

「仕方ないなぁ……また恋人にしてあげなきゃね。ふふ、泣いて喜ぶぞ。でも最近は泣いて縋って来ないからツマラナイや、毎回嘘の浮気じゃ効果がないのかな?」


貧乏男爵家の次男のマークスは恋人ごっこを楽しんでいた腹黒だ。
裕福な伯爵家の長女のリーザとは恋仲のつもりだ、周囲がどう思っているかなどお構いなしなのだ。


「まぁいい、そのうち婚約してやるからさ。せいぜい楽しませてよ。バカで可愛いリーザ」
次男を乗せるような馬車はないので、マークスは辻馬車を拾って帰宅した。
いつもならリーザが彼を送っていくのだが、今回は置き去りにされてしまった。

リーザの心はとっくに冷めているという事に気が付かない愚かな男である。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私はアナタから消えます。

転生ストーリー大好物
恋愛
振り向いてくれないなら死んだ方がいいのかな ただ辛いだけの話です。

利害一致の結婚

詩織
恋愛
私達は仲のいい夫婦。 けど、お互い条件が一致しての結婚。辛いから私は少しでも早く離れたかった。

あやまち

詩織
恋愛
恋人と別れて1年。 今は恋もしたいとは特に思わず、日々仕事を何となくしている。 そんな私にとんでもない、あやまちを

セラフィーネの選択

棗らみ
恋愛
「彼女を壊してくれてありがとう」 王太子は願った、彼女との安寧を。男は願った己の半身である彼女を。そして彼女は選択したー

あなたに何されたって驚かない

こもろう
恋愛
相手の方が爵位が下で、幼馴染で、気心が知れている。 そりゃあ、愛のない結婚相手には申し分ないわよね。 そんな訳で、私ことサラ・リーンシー男爵令嬢はブレンダン・カモローノ伯爵子息の婚約者になった。

見栄を張る女

詩織
恋愛
付き合って4年の恋人がいる。このままだと結婚?とも思ってた。 そんな時にある女が割り込んでくる。

欲しいものが手に入らないお話

奏穏朔良
恋愛
いつだって私が欲しいと望むものは手に入らなかった。

裏切り者

詩織
恋愛
付き合って3年の目の彼に裏切り者扱い。全く理由がわからない。 それでも話はどんどんと進み、私はここから逃げるしかなかった。

処理中です...