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「酷いわ……ちゃんと教えてくれないなんて」
ジメジメと泣くのは平民の娘ロミー、招待もされていない祝宴に紛れ込んでいた。とうぜん主催側はどうしたものかと困り果てる。
「ロミー……きょうは気楽な場ではないのよ、縁戚でもないので席を設けられなかったの。招待客も御父様が決定したことでもあって」
「わーん!酷い酷いそうやって私を苛めるのね、そりゃ私にはパーティドレスなんて買えないけど……」
チラッ
「貴女のお古ドレスは沢山あるのでしょ?貸してくれても……貰ってあげても良いのよ」
チラッ
「……」
いつもの調子で我儘を言うロミーは衆目を集めて同情作戦に出て来た。大袈裟に泣いて声を荒げて訴えている。コリンソン伯爵家の娘オフェリアはいつも大事にしたくないとロミーの我儘を飲んで来た。それが、ここに来て後悔することになった。
彼女たちふたりは幼い頃からいつも一緒だった。
オフェリアは幼過ぎて身分差などを理解していなかったし、ロミーも当然そうだった。そんなだったから伯爵令嬢がどこへ行こうが必ず金魚の糞の如く付いてまわった平民娘ロミーである。
伯爵夫妻も娘と仲の良い存在を引き裂くのは酷だからとかなり甘く見ていた、ロミー本人は”お情け”を掛けられて同行を許されているなど露ほども思っていなかった。
「だって私達は幼馴染で親友だもの!待遇も同じなのは当たり前じゃない!」と威張り腐っては使用人を翻弄してきた。
「リアがリボンを付けるなら私にも頂戴!」
「はあ」
「リアがケーキを食べるなら私にも食べる権利があるわ!」
「はあ」
「リアが宝石を買って貰えるなら私にだって!」
「……」
こんなふうに平民ロミーは年々増長して、言いたい放題に育ち18歳になった今も悪癖が治らなかった。
ワガママが通らない時は臆面もなく”嘘”までついて欲しいものを手に入れて来た。
その強欲精神の延長で伯爵家の婚約パーティにまでも我が物顔で乱入してきたのであった。
「ねぇお願い、きょうは本当に大事な日なのよ。せめて大人しくして欲しいの」
さすがのオフェリアも父の耳に入れば拙い事だと思った、幼少の頃だったのならばともかく今は分別がついて当たり前の年齢に成長したのだから。
「あら伯爵様ならだいじょうぶよ、あんたの親友の私を邪魔者にするわけないわ!ずっと良き友としていて欲しいとたのまれてるんだから!」
「……それはそうだけど、でも今日は」
場を収めようと必死なオフェリアだったがもう一人の主役が騒ぎの一角に現れてしまう。
「リア、なんの騒ぎだい?おやそこの可憐なお嬢さんはどちらの?」
オフェリアの婚約者であるセシル・バーノル伯爵令息が怪訝な表情を浮かべてやって来た。彼は3男なので婿養子としてコリンソン家に入る予定だ。
家格が同等ということで両家は良縁が結べて良かったと安堵し合ったばかりであった。
「あぁ……セシル騒がせてごめんさい。こちらは友じ・・」
「わたしはロミーと言います!よろしくね!」
紹介される前に出しゃばって名乗り上げたロミーに周囲は目を瞬き、ヒソヒソと話して遠巻きにする。
「や、やあ元気なお嬢さんだね。ふふ、そしてとても可愛い」
「まあ、お上手だわ!うふふ……でも皆さんのような素敵な服でないのでお暇しようかと」
同情を誘う言い回しをして、上目遣いでお強請りするような目を彼に向けている、オフィリアは頭を抱えて頭をふる。無理にでも追い出すべきだったと後悔した。
「ふむ、ドレスか……そうだ今すぐは無理だが次のお茶会にはプレゼントしてあげよう。ね、リア?」
「え、次のお茶会って。王女様主催のですか?」
王族の催しに平民が混ざるなどあり得ないと彼女は青褪めた。王族は民を平等に愛しむが身分差は重んじる。貴族が優遇されるのは国に大きな貢献と功績を残したという理由があるからだ。
「それは難しいわ……それなら我が家主催の気楽な茶会の時に」
「ひどーい!また意地悪を言うのね!クスンクスン……幼馴染で親友なのにー!リアは変わってしまったわ!悲しいわ!ずっと一緒にいたいのは私だけなのね!冷たいわ……グスグス」
その言い分にオフェリアはさすがにカチンときてしまった。ロミーはわざと人前で”虐げられている可哀そうな子”を演じるから質が悪い。伯爵夫妻も幼少期にはよく騙されたものだが、いまはロミーの腹黒さを看破していた。
それでも可愛い顔立ちのロミーに騙される者はいる、今正にセシル青年がグラグラと揺さぶられている。
「あーごほん!友人を悲しませるリアは好ましくないな、少しは譲歩すべきだよ」
「そんな!私は意地悪で言っているのではなく」
事情を話そうとセシルに近づいた令嬢だが、またもロミーが話の腰を折ってきて、あろうことか令嬢を押し退けてしな垂れかかった。
「いいの、セシルさま。貧乏な私が華やかな場に参加してはリアが迷惑するのだわ。我慢するわ……グスン」
儚げな美少女を演じるロミーにセシルは頬を染めて「なんて奥ゆかしい」と骨抜きにされてしまう。
「ロミー、セシル……貴方達まさか……」
ジメジメと泣くのは平民の娘ロミー、招待もされていない祝宴に紛れ込んでいた。とうぜん主催側はどうしたものかと困り果てる。
「ロミー……きょうは気楽な場ではないのよ、縁戚でもないので席を設けられなかったの。招待客も御父様が決定したことでもあって」
「わーん!酷い酷いそうやって私を苛めるのね、そりゃ私にはパーティドレスなんて買えないけど……」
チラッ
「貴女のお古ドレスは沢山あるのでしょ?貸してくれても……貰ってあげても良いのよ」
チラッ
「……」
いつもの調子で我儘を言うロミーは衆目を集めて同情作戦に出て来た。大袈裟に泣いて声を荒げて訴えている。コリンソン伯爵家の娘オフェリアはいつも大事にしたくないとロミーの我儘を飲んで来た。それが、ここに来て後悔することになった。
彼女たちふたりは幼い頃からいつも一緒だった。
オフェリアは幼過ぎて身分差などを理解していなかったし、ロミーも当然そうだった。そんなだったから伯爵令嬢がどこへ行こうが必ず金魚の糞の如く付いてまわった平民娘ロミーである。
伯爵夫妻も娘と仲の良い存在を引き裂くのは酷だからとかなり甘く見ていた、ロミー本人は”お情け”を掛けられて同行を許されているなど露ほども思っていなかった。
「だって私達は幼馴染で親友だもの!待遇も同じなのは当たり前じゃない!」と威張り腐っては使用人を翻弄してきた。
「リアがリボンを付けるなら私にも頂戴!」
「はあ」
「リアがケーキを食べるなら私にも食べる権利があるわ!」
「はあ」
「リアが宝石を買って貰えるなら私にだって!」
「……」
こんなふうに平民ロミーは年々増長して、言いたい放題に育ち18歳になった今も悪癖が治らなかった。
ワガママが通らない時は臆面もなく”嘘”までついて欲しいものを手に入れて来た。
その強欲精神の延長で伯爵家の婚約パーティにまでも我が物顔で乱入してきたのであった。
「ねぇお願い、きょうは本当に大事な日なのよ。せめて大人しくして欲しいの」
さすがのオフェリアも父の耳に入れば拙い事だと思った、幼少の頃だったのならばともかく今は分別がついて当たり前の年齢に成長したのだから。
「あら伯爵様ならだいじょうぶよ、あんたの親友の私を邪魔者にするわけないわ!ずっと良き友としていて欲しいとたのまれてるんだから!」
「……それはそうだけど、でも今日は」
場を収めようと必死なオフェリアだったがもう一人の主役が騒ぎの一角に現れてしまう。
「リア、なんの騒ぎだい?おやそこの可憐なお嬢さんはどちらの?」
オフェリアの婚約者であるセシル・バーノル伯爵令息が怪訝な表情を浮かべてやって来た。彼は3男なので婿養子としてコリンソン家に入る予定だ。
家格が同等ということで両家は良縁が結べて良かったと安堵し合ったばかりであった。
「あぁ……セシル騒がせてごめんさい。こちらは友じ・・」
「わたしはロミーと言います!よろしくね!」
紹介される前に出しゃばって名乗り上げたロミーに周囲は目を瞬き、ヒソヒソと話して遠巻きにする。
「や、やあ元気なお嬢さんだね。ふふ、そしてとても可愛い」
「まあ、お上手だわ!うふふ……でも皆さんのような素敵な服でないのでお暇しようかと」
同情を誘う言い回しをして、上目遣いでお強請りするような目を彼に向けている、オフィリアは頭を抱えて頭をふる。無理にでも追い出すべきだったと後悔した。
「ふむ、ドレスか……そうだ今すぐは無理だが次のお茶会にはプレゼントしてあげよう。ね、リア?」
「え、次のお茶会って。王女様主催のですか?」
王族の催しに平民が混ざるなどあり得ないと彼女は青褪めた。王族は民を平等に愛しむが身分差は重んじる。貴族が優遇されるのは国に大きな貢献と功績を残したという理由があるからだ。
「それは難しいわ……それなら我が家主催の気楽な茶会の時に」
「ひどーい!また意地悪を言うのね!クスンクスン……幼馴染で親友なのにー!リアは変わってしまったわ!悲しいわ!ずっと一緒にいたいのは私だけなのね!冷たいわ……グスグス」
その言い分にオフェリアはさすがにカチンときてしまった。ロミーはわざと人前で”虐げられている可哀そうな子”を演じるから質が悪い。伯爵夫妻も幼少期にはよく騙されたものだが、いまはロミーの腹黒さを看破していた。
それでも可愛い顔立ちのロミーに騙される者はいる、今正にセシル青年がグラグラと揺さぶられている。
「あーごほん!友人を悲しませるリアは好ましくないな、少しは譲歩すべきだよ」
「そんな!私は意地悪で言っているのではなく」
事情を話そうとセシルに近づいた令嬢だが、またもロミーが話の腰を折ってきて、あろうことか令嬢を押し退けてしな垂れかかった。
「いいの、セシルさま。貧乏な私が華やかな場に参加してはリアが迷惑するのだわ。我慢するわ……グスン」
儚げな美少女を演じるロミーにセシルは頬を染めて「なんて奥ゆかしい」と骨抜きにされてしまう。
「ロミー、セシル……貴方達まさか……」
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