虚言癖の友人を娶るなら、お覚悟くださいね。

音爽(ネソウ)

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「ひどいわ、ひどいわ!どうして私がメイドのふりなんてしなきゃならないの!?彼がせっかく綺麗なドレスを買ってくれたのに!お仕着せじゃ意味がないわ!」
王女の茶会当日に無理矢理についてこようとしたロミーであったが、貴族子女でなければ入場できないと説明して「お付きのメイドならば控室までは入れる」と我儘を受け入れたのだが話が通じない。

「えーんえーん!どうして!?ねぇおじ様!私もドレスを着てお茶会に行きたいのー!リアの親友なんだもの良いでしょ」
子供のように大泣きして伯爵にお願いをするロミーだったが嘘泣きなのは明白だった。伯爵は嫌悪の表情を剥き出しにして「いい加減にしろ!大馬鹿者が!平民風情が王城に入れるか!」と怒鳴りつけた。
「ひぎ!!」
大声で拒否されるとは思っていなかった彼女は怯んで後ろにコケた、拍子にドレスの裾に踵が引っ掛かってビリビリと破けてしまう。
「きゃー!私のドレスが!」
上品で繊細な布で作られたドレスはとても脆く、無惨に裂けてしまった。
「ひどーい!おじ様まで私に意地悪するのねー!うわわーーーーん!」
今度は本気で泣き始めたロミーだったが、伯爵が相手にするわけもなく屋敷から放り出された。我慢にも限界だとたいへん立腹した伯爵は屋敷中に緘口令を敷いた。ロミーがここに出入りし生活してという痕跡は抹消され、彼女は二度と伯爵邸に入れなくなった。

「もっと早くそうすべきでしたわよ、貴方」奥方がチクリと言う。
「うむ、済まなかった……オフェリアが寂しがると思っていてな。庭師の娘だからと居室まで与えてしまった。いまでは毒にしかならん」

「お父様、私の為に申し訳ありませんでした。甘やかして側に置いた私が悪いのです、それから茶会から戻りましたら大切な話がありますの」
珍しく神妙な顔の娘を見て、伯爵はざわつく心をなんとか抑えて彼女を見送った。
「気を付けて行くのだぞ」
「はい、早めに戻りますわ!」

***

王女の茶会は香しい春の花園で行われた、招待客たちは贅を尽くした装いで見栄を切り参加する。”我が家こそが力を持っている”と王族に誇示するのである。

「お招きありがとうございます、アンネリ殿下」
花束と贈り物を持参したオフェリアが丁寧に挨拶をした、それを大歓迎と言って抱きしめてきたアンネリ王女は「いつでもいらして欲しいのに、貴女ったらちっとも来ないのね」と口を尖らせた。
「ふふ、アンネリ殿下ったら、申し訳ありません婚約のことでバタバタしてましたの」

婚約披露パーティには王女も招いていたが、スケジュールが合わず断念したのであった。代わりにオフェリアのもとには店が開けるほどの花々と大きなケーキが届けられていた。
「ケーキは美味しかったかしら?特注なのよ!」
「ええ、とっても美味しかったですわ。なにかの花の香がしました」
「うふ、そうなの。桜の塩漬けを使った生地とクリームを……って!そんなことより!あの平民がやらかしたそうね!だいじょうぶだったの?縁を切りなさいとあれほど言ってたのに」

一気に捲し立てられたオフェリアは苦笑いをして当日の話を少しづつ吐露した。それから婚約者セシルの心変わりの兆しがあったことなど……。
詳細を聞いた王女は自分の事のように怒って「婚約破棄一択よ!私のリアをバカにして!」と声高に言った。

「殿下の忠告を聞かなかった私が悪いのです」
「そうよ!貴女は優し過ぎるの!そんなことじゃ社交界で生き残れないわ!それから殿下じゃなくてアンネと呼びなさい何度も言ったでしょ」
「はい、で……アンネ様」
本当の親友はここにいたのである。


***

「チクショー!なんで締め出されたのよ!」本性を剥き出しにして歩くロミーは当てもなくガニマタで歩いた。庭師を父に持つロミーは伯爵邸の使用人部屋まで与えられていたが、我儘放題の生活を奪われて途方に暮れる。
爪を噛みギチギチとながら「どうしたものか」と街中を彷徨った。

噴水広場にいつの間にか辿り着き喉が渇き飢えていたことに気が付く、屋敷へ戻ってなにか拝借してこようかと悩んだ。だが捕縛されたら折檻された後に牢獄だと思ったら足が竦んだ。空腹に耐えていたら屋台のほうから美味しい匂いがしてきた。買い食いする親子が目の前をうろついてロミーを苛立たせた。

「きぃーー!どいつもこいつも!皆消えちゃえ!」
悪態をついても事態は好転しない、無い頭で考えた結果、茶会から帰って来るリアに泣きついて元通りの生活をしてやろうと考えた。
「そうと決まれば屋敷の前で待ってやる!リアはお人好しだもの上手くいくわ」
ニタニタと不気味な笑みを浮かべて屋敷のほうへ戻って行く。悪鬼のように歪んだ顔のロミーに、すれ違う人々が「なんだアレは」と畏怖して避けて行く。

邸近くへ潜んだロミーだったが、待てど暮らせど伯爵家の馬車は帰ってこない。
イライラがつのる彼女であるが待つほかない。路地で縮こまっていると豪奢な馬車が彼女から数メートル先で止まった。伯爵家の馬車ではないと知ったロミーは「チッ」と舌打ちするが見知った顔が降りて来た。

「やあ!キミはロミーじゃないか!嬉しいな送ったドレスを着てくれたんだね、茶会はどうだった?」
「あ、セシルさま。セシルさまセシルさまーーーー!」
獲物を捕らえた彼女は遠慮なく彼の胸に飛びついた。



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