虚言癖の友人を娶るなら、お覚悟くださいね。

音爽(ネソウ)

文字の大きさ
23 / 23

閑話 温泉の町にて

しおりを挟む
「スゴイねぇ、王都中が祝福ムードだよ。結婚式後はパレードまでしたんだよ、アタシもちらっと見たけどね!本物のオフェリア様の美しさときたら!女神だよ、女神!」
「へぇ、そう」
飯場で芋の皮むきをしながら下女とロミーは王子の結婚の話をしていた。あまり良い反応をしないロミーであるが、そんなことは構わず下女は楽しそうに当日のことで盛り上がっていた。
「はいはい、おばちゃん。芋は剝き終わったわ。次はどれよ?」
「ああ、次は人参をいちょう切りにしとくれ。それでね~王子ときたら奥方にメロメロでー」
「……」

興味のない話を延々聞かされるロミーであったが、完全に無の境地である。
幼馴染として一緒に過ごしたオフェリアの事は、今では身分が違い過ぎて過去の思い出と合致せず他人ごとになりつつある。
「ふ……こういうのを遠い思い出っていうのかな」
大鍋に水を注ぎながらロミーは呟く、板についてきた囚人暮らしで性格も容姿も大分変ってしまった。湯を沸かすのに薪の束を下ろしていると中背の男が手伝うと言って薪束を背負う。
「そりゃどうも。ついでにこっちも持ってよ、全然足りないんだから」
「ああ、わかった」

ぶっきら棒に会話する相手はセシルだ、青白くヒョロガリだった面影なく小麦の肌に程よく筋肉が浮かんでいた。
「ロミーは王子の結婚の恩赦で刑期が終わっただろ?どうしてここに留まってるんだ?」
「……ふん、行く当てがあったら出てるわよ。元罪人が簡単に世間に戻れるもんか」
そういうものかとセシルはガッカリし「世知辛いぜ」と言って遠い目をした、大罪を犯した彼はここから出る事は叶わない。

「王都に戻って白い目で見られるより、この町で暮らした方が楽よ。ご飯も美味しいし、それに……」
「それに?」
ロミーは一拍置いてから「良い人がここにできたもの」と微笑んだ。それを聞いたセシルは見る見る顔を輝かせて「そうか、そうだよな!」と相槌を打つ。そして、「罪人同士でも結婚出来るって知っているか?」と言った。
それを聞いたロミーは「知ってる」と小さく頷いた。

「ろ、ロミー!もし良ければ……」
セシルが何か言いかけたタイミングでバリトンボイスが頭上から邪魔してきた。話の腰を折られたセシルは「無粋者は誰だ」と怒る。しかし、声の主を見て縮こまった。

「ロミー、今日の昼飯はなんだい?」
「あらバート!蒸し鳥のサラダと芋スープ、それからハムチーズサンドよデザートはプリンがつくの」
陽に焼けた男は白い歯をニカッと光らせて「それはいいな!」と笑う。
その太くて逞しい腕にロミーは自分の腕を絡ませて親し気に歩いた、バートと呼ばれた長身の男は照れながらも受けいれている。

「な、……嘘だろ。闇ギルドの頭と……ロミーまさか良い人って!?」
元恋人ロミーはとうの昔に恋心が移ろっていた、少し期待してしまったセシルは惨めに頽れてしまう。

「バートとは先月結婚したの、新婚の邪魔をしないで貰える?」
「ロミー!そんなぁ!」

しおりを挟む
感想 2

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(2件)

エステル
2023.03.17 エステル

ロミーの親は、どうなった?これだけわがまま放題だったのに親は、放置してたのか?

解除
紅榊
2023.03.11 紅榊

さすが元庶民ロミー。強い。

解除

あなたにおすすめの小説

婚約破棄で見限られたもの

志位斗 茂家波
恋愛
‥‥‥ミアス・フォン・レーラ侯爵令嬢は、パスタリアン王国の王子から婚約破棄を言い渡され、ありもしない冤罪を言われ、彼女は国外へ追放されてしまう。 すでにその国を見限っていた彼女は、これ幸いとばかりに別の国でやりたかったことを始めるのだが‥‥‥ よくある婚約破棄ざまぁもの?思い付きと勢いだけでなぜか出来上がってしまった。

婚約破棄を求められました。私は嬉しいですが、貴方はそれでいいのですね?

ゆるり
恋愛
アリシエラは聖女であり、婚約者と結婚して王太子妃になる筈だった。しかし、ある少女の登場により、未来が狂いだす。婚約破棄を求める彼にアリシエラは答えた。「はい、喜んで」と。

婚約者様への逆襲です。

有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。 理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。 だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。 ――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」 すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。 そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。 これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。 断罪は終わりではなく、始まりだった。 “信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。

そちらがその気なら、こちらもそれなりに。

直野 紀伊路
恋愛
公爵令嬢アレクシアの婚約者・第一王子のヘイリーは、ある日、「子爵令嬢との真実の愛を見つけた!」としてアレクシアに婚約破棄を突き付ける。 それだけならまだ良かったのだが、よりにもよって二人はアレクシアに冤罪をふっかけてきた。 真摯に謝罪するなら潔く身を引こうと思っていたアレクシアだったが、「自分達の愛の為に人を貶めることを厭わないような人達に、遠慮することはないよね♪」と二人を返り討ちにすることにした。 ※小説家になろう様で掲載していたお話のリメイクになります。 リメイクですが土台だけ残したフルリメイクなので、もはや別のお話になっております。 ※カクヨム様、エブリスタ様でも掲載中。 …ºo。✵…𖧷''☛Thank you ☚″𖧷…✵。oº… ☻2021.04.23 183,747pt/24h☻ ★HOTランキング2位 ★人気ランキング7位 たくさんの方にお読みいただけてほんと嬉しいです(*^^*) ありがとうございます!

復縁は絶対に受け入れません ~婚約破棄された有能令嬢は、幸せな日々を満喫しています~

水空 葵
恋愛
伯爵令嬢のクラリスは、婚約者のネイサンを支えるため、幼い頃から血の滲むような努力を重ねてきた。社交はもちろん、本来ならしなくても良い執務の補佐まで。 ネイサンは跡継ぎとして期待されているが、そこには必ずと言っていいほどクラリスの尽力があった。 しかし、クラリスはネイサンから婚約破棄を告げられてしまう。 彼の隣には妹エリノアが寄り添っていて、潔く離縁した方が良いと思える状況だった。 「俺は真実の愛を見つけた。だから邪魔しないで欲しい」 「分かりました。二度と貴方には関わりません」 何もかもを諦めて自由になったクラリスは、その時間を満喫することにする。 そんな中、彼女を見つめる者が居て―― ◇5/2 HOTランキング1位になりました。お読みいただきありがとうございます。 ※他サイトでも連載しています

【完結済み】婚約破棄したのはあなたでしょう

水垣するめ
恋愛
公爵令嬢のマリア・クレイヤは第一王子のマティス・ジェレミーと婚約していた。 しかしある日マティスは「真実の愛に目覚めた」と一方的にマリアとの婚約を破棄した。 マティスの新しい婚約者は庶民の娘のアンリエットだった。 マティスは最初こそ上機嫌だったが、段々とアンリエットは顔こそ良いが、頭は悪くなんの取り柄もないことに気づいていく。 そしてアンリエットに辟易したマティスはマリアとの婚約を結び直そうとする。 しかしマリアは第二王子のロマン・ジェレミーと新しく婚約を結び直していた。 怒り狂ったマティスはマリアに罵詈雑言を投げかける。 そんなマティスに怒ったロマンは国王からの書状を叩きつける。 そこに書かれていた内容にマティスは顔を青ざめさせ……

【完結】とある婚約破棄にまつわる群像劇~婚約破棄に巻き込まれましたが、脇役だって幸せになりたいんです~

小笠原 ゆか
恋愛
とある王国で起きた婚約破棄に巻き込まれた人々の話。 第一王子の婚約者である公爵令嬢を蹴落とし、男爵令嬢を正妃にする計画を父から聞かされたメイベル・オニキス伯爵令嬢。高位貴族を侍らせる身持ちの悪い男爵令嬢を正妃など有り得ない。しかし、大人達は計画を進め、自分の力では止めることは出来そうにない。その上、始末が悪いことにメイベルの婚約者もまた男爵令嬢の取り巻きになり下がっていた。 2021.9.19 タイトルを少し変更しました。

伯爵令嬢の逆転劇

春夜夢
恋愛
名門貴族の令嬢クラリスは、婚約者である侯爵子息から突然の婚約破棄を言い渡される。理由は「平民の令嬢と真実の愛を見つけたから」。だがそれは仕組まれた陰謀だった──。家族を守るため黙って身を引いたクラリスだったが、彼女の真の力と人脈が今、王都で花開く。裏切った彼らに「ざまぁ」を届けながら、唯一自分を信じてくれた騎士と新たな未来を歩むことに――!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。