虚言癖の友人を娶るなら、お覚悟くださいね。

音爽(ネソウ)

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真冬の山猿騒動から半年後。

曇天と小雨が続いた初夏の頃、奇跡的に快晴に恵まれた青空に祝福の鐘の音が響いた。
花弁が舞うそこには満面の笑顔があった、王城の大聖堂にて無事に挙式を終えた二人は今日から夫婦になる。
王侯貴族はもちろん祝いに駆け付けていたが、式に参加できなかった者たちは晴れ姿を一目見ようと城壁周辺に集まり民衆がどこからか覗けないものかと犇めきあっていた。
「兵隊さん!なんとかならないの!?」
「そうよ、幸せのお裾分けをして欲しいわ」
「せめて遠目からでもご尊顔を!」
婚期を迎えたらしい女性たちが姦しく詰め寄った、屈強な彼らも女子軍団には敵わないと逃げ惑う。兵士長らが見かねて「王都を一周する予定があるから落ち着きなさい」と宥めて回る。その情報がゆっくり浸透すると漸く観衆たちが疎らに散りだした。

婚約パーティの当日に捨てられた悲劇のヒロインから、王子を射止めたシンデレラとしてオフェリアは羨望の眼差しを向けられていた。
「世間とはいつも勝手なものだよな、散々リアを貶す醜聞で盛り上がっていたくせに」
「ふふ、でもそれを覆して幸せを掴みましたわ、きょうの私は誰よりも幸せですのよ」
頬を薔薇色に染めた花嫁が婿に抱き着いてそう言ったが、思いがけず王子に反論されてしまう。
「いいや、ボクが一番幸せなんだよ。それは譲れない!」
「まあ、アルったら!ふふふ、ほんとに可愛い人」

婚約から約2年、いろいろと面倒ごとに巻き込まれた二人だったが、無事にこの日を迎えられた幸運をどこかにいるであろう神に感謝を捧げる。
「愛しているよ、リア」
「愛してますわ、アル」
恋焦がれてきた初恋の君を射止めたアルベリックは、初夜で甘美な愛を成就させた翌日から数カ月間、不気味な笑顔を浮かべながら執務に励む姿を晒し続け、侍従らをドン引きさせたことは別の話である。

***

「やっと安定期に入りました、主治医の話では軽い運動をしても良いそうですわ」
「そうか!良かった!ボクは来年には父親になるんだね、ハハッ!なんか気恥ずかしいな」
ほんの少し目立ってきた妻のお腹を摩って、アルベリックはニコニコと破顔する。懐妊の報せを聞かされたのは婚姻した年の冬の日だった。来年の夏には賑やかになることだろう。

「男の子だったらチャンバラで遊びたいな、女の子だったら可愛く着飾ってダンスを教えたい」
気が早いアルベリックは今からアレコレと子供との未来を描いて楽しそうだ。無邪気過ぎる夫に少々不安を感じる妻だが「アルだから仕方ない」と苦笑した。

話は変わり、アルベリックは見事に温泉の町を復興させ、王籍に留まりながら侯爵の地位を授かった。昔ほどとはいかないが観光地化に成功させ、温熱による試験栽培も本格化して公私ともに忙しい日々を過ごしている。
「子が育って歩けるようになったら遊びに行こう」
「ええ、楽しみにしてますわ」
復興後の町をまだ目にしていないオフェリアは田舎の町へ想いを馳せる。



本編完結
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