完結 愛される自信を失ったのは私の罪

音爽(ネソウ)

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晴れやかな午後を貴方と

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ディアナは疲労が積もりに積もって漸く寝付けた晩を過ごした、次の日はなんとも軽やかで、陰鬱として過ごしたのが嘘のようだった。
「あぁ、とても晴れやかな気分だわ、どれくらいぶりかしら」
うーんと伸びをして大欠伸をした、こんな所をメイドに見られたら叱られてしまうだろうと思う。ふと時計の針を見るとギョッとした。

「まぁなんて事!もう昼を過ぎているじゃないの。もう嫌だわ、起こしてくれれば良いのに」
呼び鈴を鳴らして早速と着替えの準備をした、メイドがふたり連れだって「おはようございます」と笑っていた。

「どうして起こしてくれないの?意地悪ねぇ」
プクッと頬を膨らませて抗議するディアナに対し、悪戯が成功して嬉しそうに微笑む二人だ。
「ふふふ、だって良くお眠りになっておいででしたので」
「そうですよ、10日ぶりじゃないですか」

「え?そんなに経った?」
着替えつつ自分でも驚いた、そんなに長い事眠れていなかった事に気づいていなかったのだ。それから朝食とも昼食とも言えない食事は軽く済ませ、ゆったりと散歩に出かけた。

「はぁ……良い天気、少し暑いくらいね」
日傘をさして沼の畔を歩く、そして木陰に来た時にほんの僅か風にあたろうと歩を止めた。やはり爽やかな緑の匂いがして彼女は微笑んしまう。

「やはりここの風は爽やかなものだね」
「ええ、そうね…え!?」
聞き覚えのある声に酷く驚いて振り返ればそこには愛しい顔があった。

「ぶ、ブラッド!どうしてここに……」
狼狽えて数歩下がるもその後ろは沼である、「危ないよ」と言って手を差し伸べてくる彼は少しはにかんでいる。会いたかった人だというのにどうしてか彼女は素直になれず、視線を外して「何の用?」と冷たく言ってしまう。

「ディアナ、どうかこの手を取って。そして、別れ話は嘘だと言って欲しい。私達は愛し合っているだろう?」
「な!巫山戯ないで頂戴!どうしてそんな事を」
ワナワナと蒼い顔で震えているディアナの前に跪き「どうか許してくれませんか」と頭を垂れる姿が写る。

いよいよパニックになったディアナはそんな事をしないでと叫んでいた。

「今更だわブラッド……散々、私の前でブリタニーと抱き合っていたのに……悲しくて胸が張り裂けそうだったわ」
「ごめん」
「抱き合って笑いながら私を侮辱していた癖に」
「そんな事はしていないよ、本当だ」

悲しそうにそう言い訳してくるブラッドは銀色の髪を風に靡かせ、いつまでも跪ずいて手を差し伸べていた。彼女は愛しくて、恋しくも憎らしい恋人を見た。嫌いになったはずだった、「貴方は愚かだ」と罵倒してやりたかった。
でも、出来そうもない。

「うっ、どうしてブラッド……どうしてここに来たのよ……貴方を忘れるために来たのに、どうして私の心を揺さぶるの!放っておいてよ」
滂沱に涙を流すディアナは前が見えなくなった、そして視界が僅かに暗くなる。それから、強く優しい温もりを感じる。

「あ……」
「大好きだよ、愛してる!私が全面的に悪かった、言い訳しても許されるはずがないんだ。でも、どうか聞いて私はブラッド・レスリーが愛しているのは、この世でディアナただ一人だけだ」
彼の胸の中に閉じ込められたディアナは震えて「本当に?」と小さく言った。

「愛しているよ、あの太陽に誓って」
彼は微笑むとディアナの頬に流れる涙をチュッと吸ってから、啄むような口付けをした。








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