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変化と本性
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今回の婚約破棄騒動は社交界に漏れることなく収まった。
ブラッド・レスリーとディアナ・パースデンは、二人連れだって戻ってきて早々にイチャイチャと始めた。彼らは居間のカウチを占拠して見つめ合い、ブラッドが肩を抱くとディアナはそれに応えるようにそっとしな垂れ掛かる。
なんでもない仕草だったがメイドらは目のやり場に困ると視線をあちこちに這わせる。そこでメイド長が二人に苦言を呈した。
「おほん、仲の良いことはたいへん宜しいことですが、ほどほどにお願い申し上げます」
そう言われたブラッドは肩を竦めて言い返す。
「ええ?そんな事を言われても自然にこうなってしまうんだよ」と嘯く。呆れたメイド長は部屋のドアを50センチも開いてメイド達に廊下で控えているように伝えた。
一連の騒動の一端である存在のブリタニー・ロベルは、遠方に旅立ったと聞いていたディアナが僅か一月たらずで戻ったと知り、肩を怒らせて歩いていた。
「なんなのあの女!てっきり傷心の旅にでも出たのかと喜んでいたのに!キィイイィッ!」
怒り任せにドアを開いて乱暴に閉じると、自室のベッドにダイブした彼女は苛立ちをぶつけるようにボスボスと枕にヤツ当たりをした。
「なんてことかしら、外堀を埋めていよいよ彼を完全に落とそうと計画したのに、婚約破棄の話も出ていたはずよね!どうしてこう上手くいかないの?」
穴だらけの計画だというにブリタニーは鼻息が荒い。彼女の目当ては侯爵家の財産である、彼女の家もそれなりに潤沢な財を築いてはいたが、それは全てレスリー家あってのものだ。
コバンザメのようにレスリー家から少しづつ、お零れを吸い上げているロベル家とは格が違う。
***
いつものように先触れも無く侯爵家に突進してきたブリタニーは、あの甘ったるい顔をしてきてこう述べる。
「ディアナが出て行ったのは私のせいだものぉ、せめて言い訳させて頂戴」としな垂れだれかかった。左側に当のディアナがいようがお構いなしである。
だが、いつもと違ったのはブラッドが毅然とした態度にでてブリタニーを引っぺ返した事だ。彼女がよろけるのも気にせずに彼は強引に「止してくれ」と突き放した。
「以前から思っていたのだがキミは何と言うかあざといな、その狂った距離感をやめてくれないか」
ワザとらしく面前によろけ床に尻を着いたブリタニーはウルウルとした目でブラッドを見つめた。
「痛~いぃ、そんな事いわないでぇ、私はブラッドの事が心配なのよぉ」
「心配だと?はっ!キミ如きに何が出来ると言うのか。甘い言葉で擦りより媚を売ることしか出来ない阿呆の癖に」
「んまぁ!なんですって!?」
流石のブリタニーも阿呆と言われてショックだったのか、悪鬼のような顔を曝け出す。やっと本性を現したようだ。
彼女は顔を真っ赤にしてこう叫ぶ。
「私の父様がいないと何もできない癖に!優秀な補佐をしているのは全てロベル家なんですからね!規約を反故にしても良いのよ!」
彼女は「キィーキィー」声で叫んで罵倒した、だが、見当違いも甚だしいとブラッドは取り合わない。
「ではその優秀な父上にそう言えば良い。なんなら今直ぐにでも取引は中止しても良いが?」
「わかったわよ!私の名を使って中止させるわ!偉そうにほざいて泣きを見ても知らないんだからね!」
彼女は大層立腹して規約書に代理人としてサインをしてしまうのだった。
ブラッド・レスリーとディアナ・パースデンは、二人連れだって戻ってきて早々にイチャイチャと始めた。彼らは居間のカウチを占拠して見つめ合い、ブラッドが肩を抱くとディアナはそれに応えるようにそっとしな垂れ掛かる。
なんでもない仕草だったがメイドらは目のやり場に困ると視線をあちこちに這わせる。そこでメイド長が二人に苦言を呈した。
「おほん、仲の良いことはたいへん宜しいことですが、ほどほどにお願い申し上げます」
そう言われたブラッドは肩を竦めて言い返す。
「ええ?そんな事を言われても自然にこうなってしまうんだよ」と嘯く。呆れたメイド長は部屋のドアを50センチも開いてメイド達に廊下で控えているように伝えた。
一連の騒動の一端である存在のブリタニー・ロベルは、遠方に旅立ったと聞いていたディアナが僅か一月たらずで戻ったと知り、肩を怒らせて歩いていた。
「なんなのあの女!てっきり傷心の旅にでも出たのかと喜んでいたのに!キィイイィッ!」
怒り任せにドアを開いて乱暴に閉じると、自室のベッドにダイブした彼女は苛立ちをぶつけるようにボスボスと枕にヤツ当たりをした。
「なんてことかしら、外堀を埋めていよいよ彼を完全に落とそうと計画したのに、婚約破棄の話も出ていたはずよね!どうしてこう上手くいかないの?」
穴だらけの計画だというにブリタニーは鼻息が荒い。彼女の目当ては侯爵家の財産である、彼女の家もそれなりに潤沢な財を築いてはいたが、それは全てレスリー家あってのものだ。
コバンザメのようにレスリー家から少しづつ、お零れを吸い上げているロベル家とは格が違う。
***
いつものように先触れも無く侯爵家に突進してきたブリタニーは、あの甘ったるい顔をしてきてこう述べる。
「ディアナが出て行ったのは私のせいだものぉ、せめて言い訳させて頂戴」としな垂れだれかかった。左側に当のディアナがいようがお構いなしである。
だが、いつもと違ったのはブラッドが毅然とした態度にでてブリタニーを引っぺ返した事だ。彼女がよろけるのも気にせずに彼は強引に「止してくれ」と突き放した。
「以前から思っていたのだがキミは何と言うかあざといな、その狂った距離感をやめてくれないか」
ワザとらしく面前によろけ床に尻を着いたブリタニーはウルウルとした目でブラッドを見つめた。
「痛~いぃ、そんな事いわないでぇ、私はブラッドの事が心配なのよぉ」
「心配だと?はっ!キミ如きに何が出来ると言うのか。甘い言葉で擦りより媚を売ることしか出来ない阿呆の癖に」
「んまぁ!なんですって!?」
流石のブリタニーも阿呆と言われてショックだったのか、悪鬼のような顔を曝け出す。やっと本性を現したようだ。
彼女は顔を真っ赤にしてこう叫ぶ。
「私の父様がいないと何もできない癖に!優秀な補佐をしているのは全てロベル家なんですからね!規約を反故にしても良いのよ!」
彼女は「キィーキィー」声で叫んで罵倒した、だが、見当違いも甚だしいとブラッドは取り合わない。
「ではその優秀な父上にそう言えば良い。なんなら今直ぐにでも取引は中止しても良いが?」
「わかったわよ!私の名を使って中止させるわ!偉そうにほざいて泣きを見ても知らないんだからね!」
彼女は大層立腹して規約書に代理人としてサインをしてしまうのだった。
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