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しおりを挟む「申し訳ございません、殿下。取り乱しました」
そう言って詫びるレイシアはまた作り笑いをしてそこを立ち去ろうとした。だが、それは彼により阻止されて「話してごらんよ」と優しく問いただす。
するとこん度は滂沱に涙する彼女にギョッとした、堰を切ったように泣くレイシアは「ご、めんなさい」と何度も謝るのだ。
思いがけず涙の意味を知ったエイルナー殿下は共にいた侍女に控えているように言い、近くの部屋へ彼女を通した。
「ここは私専用の書斎だよ、気にしなくて良い。聞き耳防止が施してある、さぁ話してごらんよ」
「は、はい殿下。ありがとうございます」
やっと落ち着いたらしい彼女は涙の痕を拭い、「ほぅ」と一息を付く。
「そうか、やはり強いたれた結婚だったのだね、気が付いてやれずに申し訳ない。母上はあの通り”上手くやっている”としか言わないからね。私自身も自分の事ばかりで研究やらで配慮に欠けていた済まなかった」
丸眼鏡をかけた殿下は身形など気にしたことがないらしく、髪は伸び放題で無精髭が顔を覆っている。それでも瞳は柔らかで優しい人物なのだと思わせる。
「殿下、十分です。優しさに甘えてしまって、こちらこそ申し訳ございません。愚痴を聞いてくださる方がいて少し心が軽くなりました」
決められた運命だとしてもそれを受け入れると覚悟をする彼女に、エイルナーは心を痛める。
「ほんとうにそれで良いの?キミはまだ若いんだ、違う道もあるだろうに」
しかし、彼女は首を振りそれ以上は語らず静かに部屋を出て行った。
***
「あぁ、なんてことだ……幸せな結婚を迎えるとばかり。私はなんて浅はかなんだ」
周囲から目を逸らし続けてきた事を悔やむエイルナーは憤って机を叩く、王妃の話を鵜呑みにして肝心のベンラントとレイシアの行動を見ていなかった。
彼はベンラントと婚約したと言われるレイシア・オズワルト公爵令嬢を見て一瞬で恋に落ちた。叶わない恋をした彼は己の気持ちを封印してこれまできたのだ。
「彼女を救いたい、でもどうやって」
美しいレイシアの姿を思い浮かべて彼は葛藤する、ベンラントはポリアーナという女性に傾倒してレイシアを蔑ろにしていたと初めて知った。
「ダメだなぁ私は……どうしてわかってやれなかったんだ、研究などに現を抜かして最愛の君を大事にしてやれなかった」
このままでは駄目だと判断した彼は意を決して書斎の奥へと歩を進める。
「そうよ、貴方はこのまま挙式まで眠っていなさい。それからあの娘の処分をしないと……でも困ったことに所在が知れないのよね。一体どこに匿ったやら」
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「大丈夫よ、私に任せないさい。必ず貴方を王にしてあげましょう、それにはレイシアの力が必要不可欠なのですから」
彼女はそういうと手元にあった瓶を揺らして中にある臓物のようなものに口づける。それは魔法で抉りとった心臓だった。
「レイシアの心臓はとても綺麗ね、貴方もそう思うでしょ?」
歪んだ愛情を拗らせた王妃はくつくつと笑う。
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