婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される

田中

文字の大きさ
6 / 8

第六話

しおりを挟む
「リアンの従者か。どけ、邪魔だ」
「いいえ、退くことは出来ません」
「ええい! 不敬だ! 誰かこの者を……っ!」

 アルフレッド王子が言いかけた言葉に、あれ? となる。
 王子はいつも護衛を連れている。
 なのに今日はいない。なんで?

「貴方は反逆罪に問われますね。王命をお忘れなったのですか? いえ、忘れてないからこそ護衛も付けずに来たんでしょうが」
「王命……?」
「リアン様には言っておりませんでしたが、この方は今後一切リアン様に関わらないよう王命が下されているのです。それを破ってまでここにいる、どうなるかおわかりになりますよね?」
「ぐっ……!」

 そんなことになっているなんて知らなかった。


 テオは慣れた手つきで王子を縛る。その間も王子はテオを罵倒していた。

「貴様! こんなことをしてタダで済むと思っているのか!」
「ええ。貴方こそ王に勝手に公爵家との婚約を破談にし、その上公爵家が貴方を今後リアン様に接触しないことを条件に許していただいた身……廃嫡で済めば良いですが、ヒスコック家がそれをお許しになるかどうか……」

 王子の顔がどんどんと青ざめていく。
 俺が知らない間に父様は色々とやってくれていたみたいだ。
 ……知らなかった。

「リアン様。申し訳ないですかこの者を王都に返してきます。しばらくの間不在にしますが、この屋敷のものはみな精鋭ばかりですのでご安心くださいませ」
「そ、そんなテオ……俺も一緒に行った方が良くないか……? ほら、証言とか」
「大丈夫です。その代わりマーサを連れて行きますので。リアン様を煩わせるものを排除するのも従者の仕事ですから」

「そ、そうなの……」

 王子を引きずってテオとメイドのマーサが去っていった。



 この短時間で、何が起こったんだろう……。

 あまりのことに呆気にとられていると、執事のセバスチャンが現れる。

「リアン様、あまり外に居るとお身体に触りますよ。中にお戻りください」
「あ、ああ。テオとマーサは大丈夫だろうか……? 俺も追いかけた方が良いんじゃないか……」
「大丈夫ですよ、リアン様。テオは強いですし、マーサもああみえて強いんです。お二人ともヒスコック家に信頼されているものですから」
「そうか……」

 セバスチャンは物腰柔らかな老紳士で、セバスチャンが言うなら不思議と大丈夫だと思えてしまう。

「さあお部屋にお入りくださいませ。ハーブティーを入れましょう。気持ちが落ち着きますよ」
「ああ、ありがとう」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!

冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。 「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」 前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて…… 演技チャラ男攻め×美人人間不信受け ※最終的にはハッピーエンドです ※何かしら地雷のある方にはお勧めしません ※ムーンライトノベルズにも投稿しています

王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)

かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。 はい? 自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが? しかも、男なんですが? BL初挑戦! ヌルイです。 王子目線追加しました。 沢山の方に読んでいただき、感謝します!! 6月3日、BL部門日間1位になりました。 ありがとうございます!!!

この世界で、君だけが平民だなんて嘘だろ?

春夜夢
BL
魔導学園で最下層の平民としてひっそり生きていた少年・リオ。 だがある日、最上位貴族の美貌と力を併せ持つ生徒会長・ユリウスに助けられ、 なぜか「俺の世話係になれ」と命じられる。 以来、リオの生活は一変―― 豪華な寮部屋、執事並みの手当、異常なまでの過保護、 さらには「他の男に触られるな」などと謎の制限まで!? 「俺のこと、何だと思ってるんですか……」 「……可愛いと思ってる」 それって、“貴族と平民”の距離感ですか? 不器用な最上級貴族×平民育ちの天才少年 ――鈍感すれ違い×じれじれ甘やかし全開の、王道学園BL、開幕!

【完結】元勇者の俺に、死んだ使い魔が美少年になって帰ってきた話

ずー子
BL
1年前くらいに書いた、ほのぼの話です。 魔王討伐で疲れた勇者のスローライフにかつて自分を庇って死んだ使い魔くんが生まれ変わって遊びに来てくれました!だけどその姿は人間の美少年で… 明るいほのぼのラブコメです。銀狐の美少年くんが可愛く感じて貰えたらとっても嬉しいです! 攻→勇者エラン 受→使い魔ミウ 一旦完結しました!冒険編も思いついたら書きたいなと思っています。応援ありがとうございました!

ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね

ヒラヲ
BL
「オーレリア・キャクストン侯爵令嬢! この時をもって、そなたとの婚約を破棄する!」 オーレリアに嫌がらせを受けたというエイミーの言葉を真に受けた僕は、王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付ける。 しかし、突如現れた隣国の第一王子がオーレリアに婚約を申し込み、嫌がらせはエイミーの自作自演であることが発覚する。 その結果、僕は冤罪による断罪劇の責任を取らされることになってしまった。 「どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!?」 卒業パーティーから一ヶ月後、王位継承権を剥奪された僕は王都を追放され、オールディス辺境伯領へと送られる。 見習い騎士として一からやり直すことになった僕に、指導係の辺境伯子息アイザックがやたら絡んでくるようになって……? 追放先の辺境伯子息×ざまぁされたナルシスト王子様 悪役令嬢を断罪しようとしてざまぁされた王子の、その後を書いたBL作品です。

『君を幸せにする』と毎日プロポーズしてくるチート宮廷魔術師に、飽きられるためにOKしたら、なぜか溺愛が止まらない。

春凪アラシ
BL
「君を一生幸せにする」――その言葉が、これほど厄介だなんて思わなかった。 チート宮廷魔術師×うさぎ獣人の道具屋。
毎朝押しかけてプロポーズしてくる天才宮廷魔術師・シグに、うんざりしながらも返事をしてしまったうさぎ獣人の道具屋である俺・トア。 
でもこれは恋人になるためじゃない、“一目惚れの幻想を崩し、幻滅させて諦めさせる作戦”のはずだった。 ……なのに、なんでコイツ、飽きることなく俺の元に来るんだよ? 
“うさぎ獣人らしくない俺”に、どうしてそんな真っ直ぐな目を向けるんだ――? 見た目も性格も不釣り合いなふたりが織りなす、ちょっと不器用な異種族BL。 同じ世界観の「「世界一美しい僕が、初恋の一目惚れ軍人に振られました」僕の辞書に諦めはないので全力で振り向かせます」を投稿してます!トアも出てくるので良かったらご覧ください✨

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…

こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』  ある日、教室中に響いた声だ。  ……この言い方には語弊があった。  正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。  テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。  問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。 *当作品はカクヨム様でも掲載しております。

どこにでもある話と思ったら、まさか?

きりか
BL
ストロベリームーンとニュースで言われた月夜の晩に、リストラ対象になった俺は、アルコールによって現実逃避をし、異世界転生らしきこととなったが、あまりにありきたりな展開に笑いがこみ上げてきたところ、イケメンが2人現れて…。

処理中です...