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第六話
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「リアンの従者か。どけ、邪魔だ」
「いいえ、退くことは出来ません」
「ええい! 不敬だ! 誰かこの者を……っ!」
アルフレッド王子が言いかけた言葉に、あれ? となる。
王子はいつも護衛を連れている。
なのに今日はいない。なんで?
「貴方は反逆罪に問われますね。王命をお忘れなったのですか? いえ、忘れてないからこそ護衛も付けずに来たんでしょうが」
「王命……?」
「リアン様には言っておりませんでしたが、この方は今後一切リアン様に関わらないよう王命が下されているのです。それを破ってまでここにいる、どうなるかおわかりになりますよね?」
「ぐっ……!」
そんなことになっているなんて知らなかった。
テオは慣れた手つきで王子を縛る。その間も王子はテオを罵倒していた。
「貴様! こんなことをしてタダで済むと思っているのか!」
「ええ。貴方こそ王に勝手に公爵家との婚約を破談にし、その上公爵家が貴方を今後リアン様に接触しないことを条件に許していただいた身……廃嫡で済めば良いですが、ヒスコック家がそれをお許しになるかどうか……」
王子の顔がどんどんと青ざめていく。
俺が知らない間に父様は色々とやってくれていたみたいだ。
……知らなかった。
「リアン様。申し訳ないですかこの者を王都に返してきます。しばらくの間不在にしますが、この屋敷のものはみな精鋭ばかりですのでご安心くださいませ」
「そ、そんなテオ……俺も一緒に行った方が良くないか……? ほら、証言とか」
「大丈夫です。その代わりマーサを連れて行きますので。リアン様を煩わせるものを排除するのも従者の仕事ですから」
「そ、そうなの……」
王子を引きずってテオとメイドのマーサが去っていった。
この短時間で、何が起こったんだろう……。
あまりのことに呆気にとられていると、執事のセバスチャンが現れる。
「リアン様、あまり外に居るとお身体に触りますよ。中にお戻りください」
「あ、ああ。テオとマーサは大丈夫だろうか……? 俺も追いかけた方が良いんじゃないか……」
「大丈夫ですよ、リアン様。テオは強いですし、マーサもああみえて強いんです。お二人ともヒスコック家に信頼されているものですから」
「そうか……」
セバスチャンは物腰柔らかな老紳士で、セバスチャンが言うなら不思議と大丈夫だと思えてしまう。
「さあお部屋にお入りくださいませ。ハーブティーを入れましょう。気持ちが落ち着きますよ」
「ああ、ありがとう」
「いいえ、退くことは出来ません」
「ええい! 不敬だ! 誰かこの者を……っ!」
アルフレッド王子が言いかけた言葉に、あれ? となる。
王子はいつも護衛を連れている。
なのに今日はいない。なんで?
「貴方は反逆罪に問われますね。王命をお忘れなったのですか? いえ、忘れてないからこそ護衛も付けずに来たんでしょうが」
「王命……?」
「リアン様には言っておりませんでしたが、この方は今後一切リアン様に関わらないよう王命が下されているのです。それを破ってまでここにいる、どうなるかおわかりになりますよね?」
「ぐっ……!」
そんなことになっているなんて知らなかった。
テオは慣れた手つきで王子を縛る。その間も王子はテオを罵倒していた。
「貴様! こんなことをしてタダで済むと思っているのか!」
「ええ。貴方こそ王に勝手に公爵家との婚約を破談にし、その上公爵家が貴方を今後リアン様に接触しないことを条件に許していただいた身……廃嫡で済めば良いですが、ヒスコック家がそれをお許しになるかどうか……」
王子の顔がどんどんと青ざめていく。
俺が知らない間に父様は色々とやってくれていたみたいだ。
……知らなかった。
「リアン様。申し訳ないですかこの者を王都に返してきます。しばらくの間不在にしますが、この屋敷のものはみな精鋭ばかりですのでご安心くださいませ」
「そ、そんなテオ……俺も一緒に行った方が良くないか……? ほら、証言とか」
「大丈夫です。その代わりマーサを連れて行きますので。リアン様を煩わせるものを排除するのも従者の仕事ですから」
「そ、そうなの……」
王子を引きずってテオとメイドのマーサが去っていった。
この短時間で、何が起こったんだろう……。
あまりのことに呆気にとられていると、執事のセバスチャンが現れる。
「リアン様、あまり外に居るとお身体に触りますよ。中にお戻りください」
「あ、ああ。テオとマーサは大丈夫だろうか……? 俺も追いかけた方が良いんじゃないか……」
「大丈夫ですよ、リアン様。テオは強いですし、マーサもああみえて強いんです。お二人ともヒスコック家に信頼されているものですから」
「そうか……」
セバスチャンは物腰柔らかな老紳士で、セバスチャンが言うなら不思議と大丈夫だと思えてしまう。
「さあお部屋にお入りくださいませ。ハーブティーを入れましょう。気持ちが落ち着きますよ」
「ああ、ありがとう」
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