3 / 12
前編
3
しおりを挟む
数日が経ち、ルーンからのお誘い騒動も落ち着き始めていた。
周りの関心も薄れはじめ、日常に戻り始めていた矢先に、再び、周りの注目を集める出来事が起こった。
食堂でマイクと一緒に昼食を取っていると、カイルの空いていた右隣の席に、ルーンが座ったのだ。
他の生徒の話し声や食器の音も止まり、食堂が静寂に包まれる。
カイルはちらりと横目でルーンを見たが、すぐに視線を前の席のマイクに戻した。
「それで、マイク。次の授業の課題なんだが…」
「…おい。俺が隣に座っているだろう」
僕は右に座ったルーンに顔を向けた。
「何かご用ですか?」
「お前はまた…挨拶もろくに出来ないのか」
「偶然隣に座った知らない人に、わざわざ挨拶しませんよ」
「っ、俺に気づいていただろ」
「いえ、気づいていませんでした。今気づいたので、ご挨拶申し上げます。こんにちは、ご機嫌いかがですか?」
「おい、喧嘩売っているのか?」
「ルーン様が挨拶しろって言ったんでしょ?僕にどうしてほしいんですか?」
「…っ」
目の前の光景を見て、マイクは引きつった表情になっていた。そしてゆっくりと立ち上がり、席を外そうとする。
「マイク、まだ食べ終えてないじゃないか。もう行くのか?僕も行くよ」
「いや…俺はちょっと…席を外すよ」
「どうして?ここで食べなよ」
すると、ルーンがマイクに視線を向けて声を掛ける。
「そうだ。別に席を外す必要なんてない。食事を続けろ」
「はい。食事を続けます」
マイクはルーンに言われると大人しく席に座り直し、黙って食事を続けた。
カイルはため息をついてルーンを見る。
「何か用があるなら、ちゃんと言ってください。なければ失礼してもよろしいですか?」
「互いに顔見知りだろ。偶然席が隣になったんだ。一緒に食事をしてもいいだろう」
「顔見知り程度なのは否定しませんが…」
すると後ろから、笑いながら近づいてくる者がいた。
「いやっ…ルーン、お前…強引すぎる…うぅ…可笑しすぎて、腹が痛い…」
昼食のトレイを何とかこぼさないように持ったまま、その人物は声を掛けて来た。
「こんにちは。この空いている席、座ってもいいかな?俺はジャン」
「こんにちは、構いませんよ。俺はマイクです。こちらはカイル」
「初めまして。カイルです。どうぞ座って下さい」
ありがとうと言って、ジャンが席に着く。
ジャンがすんなりと2人に受け入れられ、ルーンはまた不服そうな顔をしている。それを見て、ジャンは再び笑いを堪えていた。
「ルーンがこんな表情をするなんて…ふふっ…カイル君、ルーンと仲良いの?」
「いえ、数回お会いしたことがあるだけです」
「そうなの? ルーン、数回しか会ってない人に、ダンス会のパートナーとして誘ったのか?」
その瞬間、ルーンの表情が固まった。カイルは気にせず食事を続け、マイクは何故か両手を膝の上に置き、どこか宙を見つめていた。
相変わらず周りが静かに傍観している中、異様な雰囲気がそこには漂っていた。けれど、ジャンはその雰囲気を気にもせず話し続ける。
「カイル君は成績優秀者だろ?ルーンは優秀な者に対して、色々と興味が合ってね。それで君と仲良くなりたいと思ったみたいだよ?
どうだろう?明日も一緒に昼食を取らないかい?俺も君に興味がある」
ルーンは嬉しそうに勢いよくカイルを見て、カイルは目の前に座っているマイクを見て、そしてマイクは何故か目をつぶっている。ジャンは可笑しそうに笑った。
「もちろんマイクも一緒に」
「…僕は構いません」
「…ぜひとも」
一拍おいて、カイルとマイクが答える。すると、突然ルーンがせき込んだ。
「大丈夫ですか?」
僕はルーンの方を向いたが、ルーンは顔を真っ赤にして、咳がなかなか収まらない。
僕はルーンの背中をさすりながら、明日からの昼食の時間がどうなるのかと、小さくため息をついた。
周りの関心も薄れはじめ、日常に戻り始めていた矢先に、再び、周りの注目を集める出来事が起こった。
食堂でマイクと一緒に昼食を取っていると、カイルの空いていた右隣の席に、ルーンが座ったのだ。
他の生徒の話し声や食器の音も止まり、食堂が静寂に包まれる。
カイルはちらりと横目でルーンを見たが、すぐに視線を前の席のマイクに戻した。
「それで、マイク。次の授業の課題なんだが…」
「…おい。俺が隣に座っているだろう」
僕は右に座ったルーンに顔を向けた。
「何かご用ですか?」
「お前はまた…挨拶もろくに出来ないのか」
「偶然隣に座った知らない人に、わざわざ挨拶しませんよ」
「っ、俺に気づいていただろ」
「いえ、気づいていませんでした。今気づいたので、ご挨拶申し上げます。こんにちは、ご機嫌いかがですか?」
「おい、喧嘩売っているのか?」
「ルーン様が挨拶しろって言ったんでしょ?僕にどうしてほしいんですか?」
「…っ」
目の前の光景を見て、マイクは引きつった表情になっていた。そしてゆっくりと立ち上がり、席を外そうとする。
「マイク、まだ食べ終えてないじゃないか。もう行くのか?僕も行くよ」
「いや…俺はちょっと…席を外すよ」
「どうして?ここで食べなよ」
すると、ルーンがマイクに視線を向けて声を掛ける。
「そうだ。別に席を外す必要なんてない。食事を続けろ」
「はい。食事を続けます」
マイクはルーンに言われると大人しく席に座り直し、黙って食事を続けた。
カイルはため息をついてルーンを見る。
「何か用があるなら、ちゃんと言ってください。なければ失礼してもよろしいですか?」
「互いに顔見知りだろ。偶然席が隣になったんだ。一緒に食事をしてもいいだろう」
「顔見知り程度なのは否定しませんが…」
すると後ろから、笑いながら近づいてくる者がいた。
「いやっ…ルーン、お前…強引すぎる…うぅ…可笑しすぎて、腹が痛い…」
昼食のトレイを何とかこぼさないように持ったまま、その人物は声を掛けて来た。
「こんにちは。この空いている席、座ってもいいかな?俺はジャン」
「こんにちは、構いませんよ。俺はマイクです。こちらはカイル」
「初めまして。カイルです。どうぞ座って下さい」
ありがとうと言って、ジャンが席に着く。
ジャンがすんなりと2人に受け入れられ、ルーンはまた不服そうな顔をしている。それを見て、ジャンは再び笑いを堪えていた。
「ルーンがこんな表情をするなんて…ふふっ…カイル君、ルーンと仲良いの?」
「いえ、数回お会いしたことがあるだけです」
「そうなの? ルーン、数回しか会ってない人に、ダンス会のパートナーとして誘ったのか?」
その瞬間、ルーンの表情が固まった。カイルは気にせず食事を続け、マイクは何故か両手を膝の上に置き、どこか宙を見つめていた。
相変わらず周りが静かに傍観している中、異様な雰囲気がそこには漂っていた。けれど、ジャンはその雰囲気を気にもせず話し続ける。
「カイル君は成績優秀者だろ?ルーンは優秀な者に対して、色々と興味が合ってね。それで君と仲良くなりたいと思ったみたいだよ?
どうだろう?明日も一緒に昼食を取らないかい?俺も君に興味がある」
ルーンは嬉しそうに勢いよくカイルを見て、カイルは目の前に座っているマイクを見て、そしてマイクは何故か目をつぶっている。ジャンは可笑しそうに笑った。
「もちろんマイクも一緒に」
「…僕は構いません」
「…ぜひとも」
一拍おいて、カイルとマイクが答える。すると、突然ルーンがせき込んだ。
「大丈夫ですか?」
僕はルーンの方を向いたが、ルーンは顔を真っ赤にして、咳がなかなか収まらない。
僕はルーンの背中をさすりながら、明日からの昼食の時間がどうなるのかと、小さくため息をついた。
599
あなたにおすすめの小説
【BL】無償の愛と愛を知らない僕。
ありま氷炎
BL
何かしないと、人は僕を愛してくれない。
それが嫌で、僕は家を飛び出した。
僕を拾ってくれた人は、何も言わず家に置いてくれた。
両親が迎えにきて、仕方なく家に帰った。
それから十数年後、僕は彼と再会した。
悩める文官のひとりごと
きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。
そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。
エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。
ムーンライト様にも掲載しております。
どこにでもある話と思ったら、まさか?
きりか
BL
ストロベリームーンとニュースで言われた月夜の晩に、リストラ対象になった俺は、アルコールによって現実逃避をし、異世界転生らしきこととなったが、あまりにありきたりな展開に笑いがこみ上げてきたところ、イケメンが2人現れて…。
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
とある文官のひとりごと
きりか
BL
貧乏な弱小子爵家出身のノア・マキシム。
アシュリー王国の花形騎士団の文官として、日々頑張っているが、学生の頃からやたらと絡んでくるイケメン部隊長であるアベル・エメを大の苦手というか、天敵認定をしていた。しかし、ある日、父の借金が判明して…。
基本コメディで、少しだけシリアス?
エチシーンところか、チュッどまりで申し訳ございません(土下座)
ムーンライト様でも公開しております。
悩ましき騎士団長のひとりごと
きりか
BL
アシュリー王国、最強と云われる騎士団長イザーク・ケリーが、文官リュカを伴侶として得て、幸せな日々を過ごしていた。ある日、仕事の為に、騎士団に詰めることとなったリュカ。最愛の傍に居たいがため、団長の仮眠室で、副団長アルマン・マルーンを相手に飲み比べを始め…。
ヤマもタニもない、単に、イザークがやたらとアルマンに絡んで、最後は、リュカに怒られるだけの話しです。
『悩める文官のひとりごと』の攻視点です。
ムーンライト様にも掲載しております。
よろしくお願いします。
君の恋人
risashy
BL
朝賀千尋(あさか ちひろ)は一番の親友である茅野怜(かやの れい)に片思いをしていた。
伝えるつもりもなかった気持ちを思い余って告げてしまった朝賀。
もう終わりだ、友達でさえいられない、と思っていたのに、茅野は「付き合おう」と答えてくれて——。
不器用な二人がすれ違いながら心を通わせていくお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる