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前編
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ルーンとどういう繋がりがあるのか。翌日から、僕は話したことのないクラスメートや、違う学年の人に質問されるようになってしまった。
僕はそのたびに、特に関りはありませんと言っていたが、相手は納得していないようで、それから根ほり葉ほり聞いてくる者もいた。
正直うんざりしていたし、疲れてしまっていた。
その日の授業が全て終わると、僕は逃げる様に学園の片隅にある園庭へと行き、そこで土いじりを始めた。
学園に初めて来た時、学園を探索していたら見つけた場所だった。
様々な花が、季節ごとに沢山植えられていて、その種類と手入れの素晴らしさに驚いていた。
領地にいたころは、花が好きな母と共に、庭の手入れを手伝っていたので、この学園の庭園に興味を持ち、暇を見つけては何度か通うようになっていた。
するとたまに見かける庭師の人と親しくなり、手伝いをしながら色々と話を聞いたり、種を分けてもらっていた。今では、ここに来て勝手に土をいじっていても、何も言われなくなったのだ。
実際土をいじっていると、集中しているのか雑念が消え、あっという間に時間が過ぎてしまうほど楽しい。
そうして今日も、しゃがみ込んで集中していると、僕の隣で一緒に雑草を抜き始める人物がいた。
「どうして…俺の誘いを断ったんだ?」
「? どうしてって…だってあなたに仮のパートナーなんて必要ないでしょう?」
「本命が居なければ必要だろう」
「あなたの仮のパートナーになったら、色々と面倒だと思ったので」
「なっ…面倒だと…?」
「あ、今抜いているそれ、雑草じゃないですよ」
「…っ」
ルーンは間違って抜いてしまった草を握りしめていたが、その手が少し震えていた。僕は構わずに続ける。
「それに、別に親しい仲でもないじゃないですか。昨日ルーン様に誘われたので、今日一日、知らない人にまで色々と質問されて大変でしたよ」
「…っ」
ルーンは勢いよく僕へと体を向けた。
僕もルーンに向かい合うと、ルーンの顔が真っ赤になっていた。
「ここでこうして…何度か…会っていただろう?」
ルーンが感情を抑えた声で話している。僕は呆れて小さくため息をついた。
「何度かって…お見かけしたことはありましたけど、別にここで会話した記憶ないですよ?」
「っ、ここ以外でも、廊下ですれ違ったとき、挨拶していただろう!」
「いや、誰だってルーン様と目が合ったら会釈はしますよ」
「なっ…俺は一日に何度も、お前を見かけていたぞ!?」
「そうですか?私はあまりお見かけした記憶が無いのですが…」
真っ赤で震えていたルーンが、段々と悲しそうな表情に変わっていった。
「お前は…こうして俺と話していることも、特別だと思わないのか?」
「ルーン様と会話する事は特別というのか…めずらしいっていう感覚ですかね?」
そう僕が答えるや否や、ルーンは手に握っていた草を離し、その場から離れて行ってしまった。
僕はため息をついて、ルーンが落としていった草を元に戻そうと、再び作業に集中し始めた。
僕が部屋に戻ると、同室のマイクが今日一日どうだったのか聞いてきた。
昨日の今日で、知らない生徒に話しかけられて大変だったこと、そして先ほど庭園でルーンとの会話を話したら、マイクは言葉を失って僕を見ていた。
「庭園で草むしり…おま…いや…まぁ、うん。もう関わらない方が、お互いのためだな…」
「元々そんなに関りが無いのに、どうもこうも無いよ」
「いや…カイル…あの三大貴族のルーンだぞ?お近づきになりたい奴が、今か今かと隙を狙っているのに、今のカイルは、ルーンと充分関りがあるんだよ。正直、ルーンに認知されている時点で、それはもうすごい事なんだぞ?」
「いくら相手がすごいと言われても、僕にとっては他の関わりの無い生徒の一人だし、顔と名前を知ってるだけだ。正直、庭園で出会うのが特別だとしても、庭師の人との方が僕にとっては親しい存在だよ」
「…それ、本人に言ってないだろうな?」
「別に言ってないけど、どちらと親しいかと聞かれたら、そう答えるよ」
「…」
マイクはじっとカイルを見た。
「まぁ、卒業したら関わる事なんて無いだろうし、カイルの領地は特に辺境の地だからな。二度と会う事はないだろうしな。うん。もう関わらない方がいいよ。俺は卒業しても、カイルに会いに行くからな」
「ありがとう、僕ももちろん会いに行くよ。やっぱりマイクぐらいの仲じゃないと、ダンスパーティーでペアになるほどの友達だとは思わないな」
「…」
マイクは何故か同情したような表情で、どこか宙を見ていた。
僕はそのたびに、特に関りはありませんと言っていたが、相手は納得していないようで、それから根ほり葉ほり聞いてくる者もいた。
正直うんざりしていたし、疲れてしまっていた。
その日の授業が全て終わると、僕は逃げる様に学園の片隅にある園庭へと行き、そこで土いじりを始めた。
学園に初めて来た時、学園を探索していたら見つけた場所だった。
様々な花が、季節ごとに沢山植えられていて、その種類と手入れの素晴らしさに驚いていた。
領地にいたころは、花が好きな母と共に、庭の手入れを手伝っていたので、この学園の庭園に興味を持ち、暇を見つけては何度か通うようになっていた。
するとたまに見かける庭師の人と親しくなり、手伝いをしながら色々と話を聞いたり、種を分けてもらっていた。今では、ここに来て勝手に土をいじっていても、何も言われなくなったのだ。
実際土をいじっていると、集中しているのか雑念が消え、あっという間に時間が過ぎてしまうほど楽しい。
そうして今日も、しゃがみ込んで集中していると、僕の隣で一緒に雑草を抜き始める人物がいた。
「どうして…俺の誘いを断ったんだ?」
「? どうしてって…だってあなたに仮のパートナーなんて必要ないでしょう?」
「本命が居なければ必要だろう」
「あなたの仮のパートナーになったら、色々と面倒だと思ったので」
「なっ…面倒だと…?」
「あ、今抜いているそれ、雑草じゃないですよ」
「…っ」
ルーンは間違って抜いてしまった草を握りしめていたが、その手が少し震えていた。僕は構わずに続ける。
「それに、別に親しい仲でもないじゃないですか。昨日ルーン様に誘われたので、今日一日、知らない人にまで色々と質問されて大変でしたよ」
「…っ」
ルーンは勢いよく僕へと体を向けた。
僕もルーンに向かい合うと、ルーンの顔が真っ赤になっていた。
「ここでこうして…何度か…会っていただろう?」
ルーンが感情を抑えた声で話している。僕は呆れて小さくため息をついた。
「何度かって…お見かけしたことはありましたけど、別にここで会話した記憶ないですよ?」
「っ、ここ以外でも、廊下ですれ違ったとき、挨拶していただろう!」
「いや、誰だってルーン様と目が合ったら会釈はしますよ」
「なっ…俺は一日に何度も、お前を見かけていたぞ!?」
「そうですか?私はあまりお見かけした記憶が無いのですが…」
真っ赤で震えていたルーンが、段々と悲しそうな表情に変わっていった。
「お前は…こうして俺と話していることも、特別だと思わないのか?」
「ルーン様と会話する事は特別というのか…めずらしいっていう感覚ですかね?」
そう僕が答えるや否や、ルーンは手に握っていた草を離し、その場から離れて行ってしまった。
僕はため息をついて、ルーンが落としていった草を元に戻そうと、再び作業に集中し始めた。
僕が部屋に戻ると、同室のマイクが今日一日どうだったのか聞いてきた。
昨日の今日で、知らない生徒に話しかけられて大変だったこと、そして先ほど庭園でルーンとの会話を話したら、マイクは言葉を失って僕を見ていた。
「庭園で草むしり…おま…いや…まぁ、うん。もう関わらない方が、お互いのためだな…」
「元々そんなに関りが無いのに、どうもこうも無いよ」
「いや…カイル…あの三大貴族のルーンだぞ?お近づきになりたい奴が、今か今かと隙を狙っているのに、今のカイルは、ルーンと充分関りがあるんだよ。正直、ルーンに認知されている時点で、それはもうすごい事なんだぞ?」
「いくら相手がすごいと言われても、僕にとっては他の関わりの無い生徒の一人だし、顔と名前を知ってるだけだ。正直、庭園で出会うのが特別だとしても、庭師の人との方が僕にとっては親しい存在だよ」
「…それ、本人に言ってないだろうな?」
「別に言ってないけど、どちらと親しいかと聞かれたら、そう答えるよ」
「…」
マイクはじっとカイルを見た。
「まぁ、卒業したら関わる事なんて無いだろうし、カイルの領地は特に辺境の地だからな。二度と会う事はないだろうしな。うん。もう関わらない方がいいよ。俺は卒業しても、カイルに会いに行くからな」
「ありがとう、僕ももちろん会いに行くよ。やっぱりマイクぐらいの仲じゃないと、ダンスパーティーでペアになるほどの友達だとは思わないな」
「…」
マイクは何故か同情したような表情で、どこか宙を見ていた。
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