学園の俺様と、辺境地の僕

そらうみ

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前編

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 数日が経ち、ルーンからのお誘い騒動も落ち着き始めていた。
 周りの関心も薄れはじめ、日常に戻り始めていた矢先に、再び、周りの注目を集める出来事が起こった。

 食堂でマイクと一緒に昼食を取っていると、カイルの空いていた右隣の席に、ルーンが座ったのだ。
 他の生徒の話し声や食器の音も止まり、食堂が静寂に包まれる。
 カイルはちらりと横目でルーンを見たが、すぐに視線を前の席のマイクに戻した。
「それで、マイク。次の授業の課題なんだが…」
「…おい。俺が隣に座っているだろう」
 僕は右に座ったルーンに顔を向けた。
「何かご用ですか?」
「お前はまた…挨拶もろくに出来ないのか」
「偶然隣に座った知らない人に、わざわざ挨拶しませんよ」
「っ、俺に気づいていただろ」
「いえ、気づいていませんでした。今気づいたので、ご挨拶申し上げます。こんにちは、ご機嫌いかがですか?」
「おい、喧嘩売っているのか?」
「ルーン様が挨拶しろって言ったんでしょ?僕にどうしてほしいんですか?」
「…っ」
 目の前の光景を見て、マイクは引きつった表情になっていた。そしてゆっくりと立ち上がり、席を外そうとする。
「マイク、まだ食べ終えてないじゃないか。もう行くのか?僕も行くよ」
「いや…俺はちょっと…席を外すよ」
「どうして?ここで食べなよ」
 すると、ルーンがマイクに視線を向けて声を掛ける。
「そうだ。別に席を外す必要なんてない。食事を続けろ」
「はい。食事を続けます」
 マイクはルーンに言われると大人しく席に座り直し、黙って食事を続けた。
 カイルはため息をついてルーンを見る。
「何か用があるなら、ちゃんと言ってください。なければ失礼してもよろしいですか?」
「互いに顔見知りだろ。偶然席が隣になったんだ。一緒に食事をしてもいいだろう」
「顔見知り程度なのは否定しませんが…」
 すると後ろから、笑いながら近づいてくる者がいた。
「いやっ…ルーン、お前…強引すぎる…うぅ…可笑しすぎて、腹が痛い…」
 昼食のトレイを何とかこぼさないように持ったまま、その人物は声を掛けて来た。
「こんにちは。この空いている席、座ってもいいかな?俺はジャン」
「こんにちは、構いませんよ。俺はマイクです。こちらはカイル」
「初めまして。カイルです。どうぞ座って下さい」
 ありがとうと言って、ジャンが席に着く。
 ジャンがすんなりと2人に受け入れられ、ルーンはまた不服そうな顔をしている。それを見て、ジャンは再び笑いを堪えていた。
「ルーンがこんな表情をするなんて…ふふっ…カイル君、ルーンと仲良いの?」
「いえ、数回お会いしたことがあるだけです」
「そうなの? ルーン、数回しか会ってない人に、ダンス会のパートナーとして誘ったのか?」
 その瞬間、ルーンの表情が固まった。カイルは気にせず食事を続け、マイクは何故か両手を膝の上に置き、どこか宙を見つめていた。
 相変わらず周りが静かに傍観している中、異様な雰囲気がそこには漂っていた。けれど、ジャンはその雰囲気を気にもせず話し続ける。
「カイル君は成績優秀者だろ?ルーンは優秀な者に対して、色々と興味が合ってね。それで君と仲良くなりたいと思ったみたいだよ?
 どうだろう?明日も一緒に昼食を取らないかい?俺も君に興味がある」
 ルーンは嬉しそうに勢いよくカイルを見て、カイルは目の前に座っているマイクを見て、そしてマイクは何故か目をつぶっている。ジャンは可笑しそうに笑った。
「もちろんマイクも一緒に」
「…僕は構いません」
「…ぜひとも」
 一拍おいて、カイルとマイクが答える。すると、突然ルーンがせき込んだ。
「大丈夫ですか?」
 僕はルーンの方を向いたが、ルーンは顔を真っ赤にして、咳がなかなか収まらない。
 僕はルーンの背中をさすりながら、明日からの昼食の時間がどうなるのかと、小さくため息をついた。
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