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打たねば鳴らぬ-3
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「とはいえ、アイツが会長に選ばれたのはそれだけが理由じゃない」
沈みかけた空気の中、新鮮な風を吹き込むように永瀬ははっきりと口にした。
「役員選挙にしたってそうだし、中等部の時だってそう。たったそれだけの理由で選ばれないし、選ばない」
「……家の力とかじゃなく、ちゃんとした基準があって選ばれてると」
「少なくとも俺は、そう思うかな」
永瀬はにかりと歯を見せて笑う。
「真柴がどう思うかは、これから考えていけばいいんじゃないか?」
ぐるりと大回りして戻ってきたその言葉が、オレの質問に対する答えなのだと理解した。永瀬が集会後に居残ってまで伝えたかったことなのかもしれないとも。
「…………はい」
噛みしめるように頷く。
「ありがとうございます」
ゆるゆると体の力が抜けるのがわかる。自覚はなかったがずっと身構えたままだったらしい。
安堵の息をついていると、小さく笑う息が聞こえた。
「やっぱり、今日話しといてよかったわ」
くつくつ喉を震わせる永瀬は、視線を正面に向けて目を細めている。
「俺も初めて生徒会に選ばれた時は大変だったなあ」
「先輩も?」
「おう。ずっと振り回されっぱなしだった」
ため息混じりの言葉とは裏腹に、その表情はどこか柔らかい。
ちらとこちらを見た永瀬は少し逡巡するように視線をさまよわせてから、ゆっくり口を開いた。
「なんとなくだけど、似てるんだよな」
「似てる?」
「昔を思い出して、つい口出ししたくなる」
迷惑だったらごめんと、バツが悪そうに呟くので、慌てて首と手を振る。
「んなことないっす! すげえ助かりました!」
「本当に?」
「はい! 割と困ってたっつーか、悩んでたんで、話聞けてよかったです。すっきりしました」
目を合わせて訴えかければ、永瀬はふわりと表情を緩ませた。
「あ、そうだ」
さて、と立ち上がりかけた永瀬が、思い出したように声を上げてポケットに手を入れる。すぐに出てきた手の中には、スマホが握られていた。
「連絡先教えてくれよ」
「え、あ、はい」
「本当は昨日聞いときたかったんだけど、忘れてたから」
予想外の言葉に少しばかりもたつきながらスマホを取り出す。
「他のメンバーとは交換してるか?」
「いや、全然」
「強制はしないけど、少なくとも電話番号くらいは交換しておいた方がいいぞ」
「そうっすよね」
ポチポチと操作をしながら会話を交わす。昨日考えたことだが、結局汐見とは交換できていないことを思い出し、改めて心に決める。
「俺らはもうすぐ卒業だけど、なにかあったら遠慮なく連絡くれていいからな」
つつがなく作業を終えた端末を振りながら、軽い調子で永瀬が言う。請われるままに交換したけれど、連絡を受けられるようにという意識が強く、こちらから連絡をすることは正直あまり考えていなかった。
ぱちくりと目を瞬くオレを横目に、永瀬は立ち上がって机と椅子を整えている。
「例えば、皇がいそうな場所とか。それなりに付き合い長いし、よく探しに行ってたから役に立てると思う」
「……じゃあ、なにかあれば」
その返答に小さく笑みをこぼす永瀬の表情からは、どこか過去を懐かしむような柔らかさが見えた。
沈みかけた空気の中、新鮮な風を吹き込むように永瀬ははっきりと口にした。
「役員選挙にしたってそうだし、中等部の時だってそう。たったそれだけの理由で選ばれないし、選ばない」
「……家の力とかじゃなく、ちゃんとした基準があって選ばれてると」
「少なくとも俺は、そう思うかな」
永瀬はにかりと歯を見せて笑う。
「真柴がどう思うかは、これから考えていけばいいんじゃないか?」
ぐるりと大回りして戻ってきたその言葉が、オレの質問に対する答えなのだと理解した。永瀬が集会後に居残ってまで伝えたかったことなのかもしれないとも。
「…………はい」
噛みしめるように頷く。
「ありがとうございます」
ゆるゆると体の力が抜けるのがわかる。自覚はなかったがずっと身構えたままだったらしい。
安堵の息をついていると、小さく笑う息が聞こえた。
「やっぱり、今日話しといてよかったわ」
くつくつ喉を震わせる永瀬は、視線を正面に向けて目を細めている。
「俺も初めて生徒会に選ばれた時は大変だったなあ」
「先輩も?」
「おう。ずっと振り回されっぱなしだった」
ため息混じりの言葉とは裏腹に、その表情はどこか柔らかい。
ちらとこちらを見た永瀬は少し逡巡するように視線をさまよわせてから、ゆっくり口を開いた。
「なんとなくだけど、似てるんだよな」
「似てる?」
「昔を思い出して、つい口出ししたくなる」
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「本当に?」
「はい! 割と困ってたっつーか、悩んでたんで、話聞けてよかったです。すっきりしました」
目を合わせて訴えかければ、永瀬はふわりと表情を緩ませた。
「あ、そうだ」
さて、と立ち上がりかけた永瀬が、思い出したように声を上げてポケットに手を入れる。すぐに出てきた手の中には、スマホが握られていた。
「連絡先教えてくれよ」
「え、あ、はい」
「本当は昨日聞いときたかったんだけど、忘れてたから」
予想外の言葉に少しばかりもたつきながらスマホを取り出す。
「他のメンバーとは交換してるか?」
「いや、全然」
「強制はしないけど、少なくとも電話番号くらいは交換しておいた方がいいぞ」
「そうっすよね」
ポチポチと操作をしながら会話を交わす。昨日考えたことだが、結局汐見とは交換できていないことを思い出し、改めて心に決める。
「俺らはもうすぐ卒業だけど、なにかあったら遠慮なく連絡くれていいからな」
つつがなく作業を終えた端末を振りながら、軽い調子で永瀬が言う。請われるままに交換したけれど、連絡を受けられるようにという意識が強く、こちらから連絡をすることは正直あまり考えていなかった。
ぱちくりと目を瞬くオレを横目に、永瀬は立ち上がって机と椅子を整えている。
「例えば、皇がいそうな場所とか。それなりに付き合い長いし、よく探しに行ってたから役に立てると思う」
「……じゃあ、なにかあれば」
その返答に小さく笑みをこぼす永瀬の表情からは、どこか過去を懐かしむような柔らかさが見えた。
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