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一村雨の雨宿り-3
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違和感の正体が掴めないまま、学園行きのバス停までたどり着いた。どこかで似たような名前を聞いたことがあるのかもしれないが、いまいち思い出せなかった。関係者と会ったことがあるのか、誰かが話していたのを耳にしたのか。若干の気持ち悪さは残るが、ちょっとした手がかりすら浮かばないしおそらくそこまで重要なことではないのだろう。
バスが来るまであと五分。途中のバス停や道路の混雑具合によってはもう少しかかる。手持ち無沙汰にスマホをいじっていると、外泊中のルームメイトから今日の夕方には帰るという連絡がきていた。なにやらお土産があるらしいので、楽しみにしておこう。
「あれ。もしかして真柴理仁さんですか?」
耳馴染みのいい、柔らかな声がかかった。
フルネームで呼ばれたにも関わらず一瞬反応が遅れたのは、まさかこんなところで話しかけられるとは思っていなかったからだ。
「えっと……?」
そこにいたのは、理知的な銀縁眼鏡に柔和な表情を浮かべた男性だった。その中性的な顔立ちになんとなくだが見覚えがあるので、天学の生徒かもしれない。
「突然すみません。水無月累と申します。現生徒会書記、新生徒会役員といえば分かりますか?」
告げられた名前とたおやかに微笑むその顔を見てようやく繋がった。新生徒会役員発表の時は正直気が動転していてあまり記憶がないものの、彼の姿は見たことがある。生徒会の役割かどうかは分からないが、広報的な立ち位置で学校のPRなどをしていたはずだ。
「あー……、どうも。というか、オレのこと分かるんすね」
新生徒会役員の発表は数日前だし、名前を知っているのは理解できる。しかし、顔まで知られているとは思わなかった。
水無月は顎に手を添えてくすりと上品に笑う。
「ええ、まあ。情報には敏感でして」
「新しい生徒会のメンバーだから?」
「はい。外部生から選ばれたと聞いたもので、どんな方なのか興味がわきまして」
相槌を打ちながら、確かにあの選挙は人気投票だったのだと納得してしまった。長い手足に小さい顔、モデル体型というやつだろうか。目線はほとんど変わらないのに随分身長が高く感じる。これで後輩に対しても敬語で丁寧な対応をしているとなると、人気が出るのは当然かもしれない。なぜ自分が選ばれたのかは不思議でならないが。
「一応、やれるだけやるつもりなんで、よろしくお願いします」
「ええ、どうぞよろしくお願いします」
「……あの、ちょっと聞いてもいいですか?」
「はい、勿論」
二期連続で選ばれているということは、生徒会の事情についてそれなりに詳しいはずだ。正直聞きたいことはたくさんあるのだが、と考えつつ口を開く。
「生徒会って、役職があるじゃないすか。会長とか副会長とか。それって、誰かが決めるんですか?」
「そうですねえ……その年によるとは思いますが、今期はおそらく……」
なにやら思案しているのか、どこか遠くの方を見ていた水無月はふと言葉を切って、こちらに視線を向ける。
「集まってからのお楽しみ。ということにしておきましょう」
「はあ」
何か面白いことでも考えているのか、くすくす笑いながらひらりと手を振った。
「私はそろそろ失礼します。ではまた」
バスを待っていたわけではないらしい。なぜわざわざ声をかけたのか不思議に思いつつ、遠ざかっていく後ろ姿を見つめているうちにバスが到着した。学園に用のある利用客しか乗らない車内は相変わらずガラガラだ。適当な席に腰掛ければゆっくりと加速し始める。
いよいよ顔合わせの日は明日にまで迫っていた。他のメンバーは分からないが水無月はいい人そうだ。そういえば、優が応援していた人は当選したのだろうか。市街地から山の中へと変わっていく景色を眺めながら、そんなことをぼんやり考えていた。
バスが来るまであと五分。途中のバス停や道路の混雑具合によってはもう少しかかる。手持ち無沙汰にスマホをいじっていると、外泊中のルームメイトから今日の夕方には帰るという連絡がきていた。なにやらお土産があるらしいので、楽しみにしておこう。
「あれ。もしかして真柴理仁さんですか?」
耳馴染みのいい、柔らかな声がかかった。
フルネームで呼ばれたにも関わらず一瞬反応が遅れたのは、まさかこんなところで話しかけられるとは思っていなかったからだ。
「えっと……?」
そこにいたのは、理知的な銀縁眼鏡に柔和な表情を浮かべた男性だった。その中性的な顔立ちになんとなくだが見覚えがあるので、天学の生徒かもしれない。
「突然すみません。水無月累と申します。現生徒会書記、新生徒会役員といえば分かりますか?」
告げられた名前とたおやかに微笑むその顔を見てようやく繋がった。新生徒会役員発表の時は正直気が動転していてあまり記憶がないものの、彼の姿は見たことがある。生徒会の役割かどうかは分からないが、広報的な立ち位置で学校のPRなどをしていたはずだ。
「あー……、どうも。というか、オレのこと分かるんすね」
新生徒会役員の発表は数日前だし、名前を知っているのは理解できる。しかし、顔まで知られているとは思わなかった。
水無月は顎に手を添えてくすりと上品に笑う。
「ええ、まあ。情報には敏感でして」
「新しい生徒会のメンバーだから?」
「はい。外部生から選ばれたと聞いたもので、どんな方なのか興味がわきまして」
相槌を打ちながら、確かにあの選挙は人気投票だったのだと納得してしまった。長い手足に小さい顔、モデル体型というやつだろうか。目線はほとんど変わらないのに随分身長が高く感じる。これで後輩に対しても敬語で丁寧な対応をしているとなると、人気が出るのは当然かもしれない。なぜ自分が選ばれたのかは不思議でならないが。
「一応、やれるだけやるつもりなんで、よろしくお願いします」
「ええ、どうぞよろしくお願いします」
「……あの、ちょっと聞いてもいいですか?」
「はい、勿論」
二期連続で選ばれているということは、生徒会の事情についてそれなりに詳しいはずだ。正直聞きたいことはたくさんあるのだが、と考えつつ口を開く。
「生徒会って、役職があるじゃないすか。会長とか副会長とか。それって、誰かが決めるんですか?」
「そうですねえ……その年によるとは思いますが、今期はおそらく……」
なにやら思案しているのか、どこか遠くの方を見ていた水無月はふと言葉を切って、こちらに視線を向ける。
「集まってからのお楽しみ。ということにしておきましょう」
「はあ」
何か面白いことでも考えているのか、くすくす笑いながらひらりと手を振った。
「私はそろそろ失礼します。ではまた」
バスを待っていたわけではないらしい。なぜわざわざ声をかけたのか不思議に思いつつ、遠ざかっていく後ろ姿を見つめているうちにバスが到着した。学園に用のある利用客しか乗らない車内は相変わらずガラガラだ。適当な席に腰掛ければゆっくりと加速し始める。
いよいよ顔合わせの日は明日にまで迫っていた。他のメンバーは分からないが水無月はいい人そうだ。そういえば、優が応援していた人は当選したのだろうか。市街地から山の中へと変わっていく景色を眺めながら、そんなことをぼんやり考えていた。
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