どうしてそうなるんだよ!!!

藤沢茉莉

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一村雨の雨宿り-2

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 住宅街を並んで歩きながらぽつぽつと話をする。兄弟でショッピングモールまで買い物に来たこと、後で喫茶店へ寄ろうと話していたこと、美味しそうなパンに気を取られていたら一人になっていたこと。話すうちに緊張や不安が解けてきたのか、強く握りしめていた手の力も徐々に抜けていく。それでも手を離すつもりはないようで、わざわざ離させることでもないかとそのままにさせておく。何かの拍子にまた迷子になられても困るし。
「お兄さんはお散歩ですか?」
「そ。ちょっと気晴らしにな」
「この辺に住んでるんですか?」
「んー、近いっちゃ近い」
 こういう時に世間話としてはどの程度話していいものか、学外の人と話をするのが久しぶりすぎて判断が難しい。見るからに怪しい人物なら別だが、明らかに害のない子供相手だし深く考える必要はないだろう。

「山の方にある学校に行ってるんだよ。天学って分かるか?」
 聞いてみたものの、この辺りには詳しくないようだし地元に住んでるわけではないのかもしれない。学校の名前自体は有名だし、よほどの世間知らずでなければ分かるだろうが、男子の中高がここにあることは知らなくても不思議ではない。
「え、天学生ですか!?」
 と思ったが、知っているらしい。ワントーン上がった声できらきらの目を向けてくる。
「おう」
「高等部ですよね? 何年生ですか?」
 ぐいぐい身を乗り出してくる勢いに押されながら口を開こうとした時、鋭い声と駆けてくる足音が聞こえて視線を向ける。そして、そこに見えた人物を確認して目を瞠った。

「蓮!!」
 険しい表情で走ってくる小柄な少年。その面差しは隣にいる迷子の少年と全く同じものだ。
「蘭!」
 ぱっと顔を綻ばせた隣の少年は握っていたオレの手を離し、こちらへ向かってくる同じ顔の少年の元へ駆け出した。考えるまでもなく、彼が一緒に来ていたという兄だろう。まさか双子とは思わなかったが、無事に見つかってよかった。行動を叱りつつも心配する声と謝罪しつつも嬉しそうな声を聞きながら安堵する。
 しかし、初めて双子を見たが本当にそっくりだ。今は服装と表情の違いで見分けがつくけれど、全く同じ格好で同じ表情をしていたら見分けるのは難しそうだ。
 一歩離れて二人の様子を見守っていると、迷子になっていた弟の方がくるりと振り返った。
「それで、この人が助けてくれたんだ!」
「え」

 急に話を振られるとは思わず碌な返事ができずにいれば、兄がオレをちらりと見て頭を下げる。
「弟がお世話になりました」
「いや、大したことはできなかったし……」
「すごく優しくしてくれたんだよ。お兄さんと合わなかったら、蘭と会えなかったかも」
「蓮、お礼は言ったの?」
「あ、まだ言ってなかった」
 満面の笑顔で頭を下げられて逆に申し訳なく思う。迷子を保護して少し話をしたくらいだが、変な大人に捕まらなかったという点では役立てたのかもしれない。
「合流できてよかったな」
「はい!」
「それじゃ、行こう、蓮」
「うん!」
 にこにこしながら踵を返した少年がくるりと振り返る。
「そうだ。お兄さんの名前聞いてもいいですか?」
「名前?」
「はい! 僕、園部おかべれんです。こっちは双子の兄のらん
「えっと……真柴理仁」
 当然のように言うものだから、流れるように名乗ってしまった。少年……蓮は満足げに笑って歩き出す。蘭も会釈をして後に続いた。最後に見えたその目がこちらを睨んでいるように見えたのは気のせいだろうか。
 少し気になったものの、それよりも彼の口から出てきた名前の方に引っ掛かりを覚える。
「おかべ、れん……らん……」
 聞いたばかりの名前を呟きながら、大通りの方へと足を進めていった。
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