10 / 33
希望のない話し合い
しおりを挟む
しかし物事とは、そう上手く進まぬもので、次の日カドワーズ伯爵家に訪れた来客は、ユニーナの父親男爵一人ではなかった。長女のミズリーと、その婚約者スワルス・ロステル次期侯爵までもが一緒に訪れたのだ。スワルスが一緒に来たことによって、伯爵夫妻は、この話にはもう希望を見いだせないことが瞬時に理解できてしまった。目の前で、血の気の引いた青白い顔のアレイドが、呆然と立ち尽くしている姿を見ていると、親としても、あまりにも気の毒になってしまい、いくら頑張ってもどうにもならないことならば、この後の話に息子は必要ないのではないかと思えた。
客室に三人を案内した後、伯爵は小さな声で言った。
「頭を下げた後、お前は自室に戻りなさい。」
すると、アレイドは、驚きと不安の混じったような目を見開き、震えた声で聞き返した。
「それは、どういう意味ですか?」
「もう、お前がどうこうできる話ではないと言うことだ。」
伯爵が鋭い眼差しを向け、冷たく言い放つと、アレイドはいきなり大きな声で反論した。
「嫌です!!僕も話をさせてください。諦めたくないんです。お願いします!!」
アレイドの大きな声は、当然、ドアの向こうで座っている三人にも聞こえた。
スワルスは、こちらに冷たい視線を向けているが、男爵とミズリーは、お互いの顔を見合わせ困ったように苦笑いしていた。
結局アレイドもその後の話し合いに入ることを許された。が・・・、いくら頭を下げて許しを得ようとしても、ユニーナの気持ちが婚約解消にある限り、バーナード家としてもこれ以上アレイドの気持ちを受け入れることは難しいと言われてしまった。
「お願いします。もう一度だけユニーナに会わせてください。今度こそちゃんと自分の気持ちを伝えます。」
床に頭を擦り付けて何度も頭を下げるアレイドに、男爵もほとほと困り果てていると、それまで感情の読めない目でアレイドを見下ろしていたスワルスが、冷やかな調子で口を開いた。
「君は、私の婚約者であるミズリーが好きなのか?ミズリーを自分のものにするために妹のユニーナと婚約したのか?もし、それが本当の話なんだとしたら、私は愛するミズリーの婚約者として、我が侯爵家の力を使ってでも君とユニーナとの婚約を白紙に戻させてもらう。」
「ち、違います。それは―――」
「そして!!ユニーナには、私の従弟との縁談を進める。」
「え、えん・・・だん?・・・そ、ん・・・・な・・・」
「従弟はリヴェル辺境地で騎士をしている。少し上だが年齢的にも特に問題ないだろう。なにより、お互いこの話には乗り気なようだから、私としては君のような何を考えているのかわからない人間とは、さっさと縁を切ってもらいたいと思っている。」
「ユニー・・・ナも、その縁談を望んでいるんですか?」
力なく床に座り込み、震える声で必死に言葉を吐き出すアレイドに向かって、スワルスは口の端を少し上げ、意地の悪い顔をした。
「ああ、望むも何も、ユニーナは大喜びだったよ。なあ、ミズリー?今すぐにでも辺境地に向かおうとしていたのには、さすがの私も驚いたけれどね。」
「なぜ・・・会ったこともない人との縁談にユニーナは・・・あっ!・・・辺境地って。」
「ははは。君はユニーナの婚約者のくせに彼女のことを、本当に何も知らないんだな!?
それで、好きだの愛してるだの、よく言えたものだな! 婚約して三年か?その間、君は一体何をしていたんだ?
なあ、学園で噂になっている通り、君は、本当はミズリーが好きなんだろう?悪いが、先ほどから君の言っている話の全てに信憑性は見当たらない。そもそも、君がユニーナにしてきたことは、ミズリーを得る為の道具のような扱いと言われても仕方のないことなんじゃないのか?彼女が他の令嬢に嫌がらせを受けていても、頬を殴られ傷を作ったとしても、それを平気な顔で見過ごしてきたことが、彼女に興味がない証拠じゃないか!」
スワルスの棘のような言葉が、アレイドに矢のように降り注ぐ。自分の家族もユニーナの家族も多少なりともアレイドの気持ちに気付いてくれていた。アレイドは、気付かないうちにそれに甘えてしまっていたのだ。アレイドの気持ちなど何も知らないスワルスに、今、こうして容赦なく指摘されたことで、アレイドは自分の甘えを痛いほど痛感させられたのだった。そしてそれは、アレイドの本当の気持ちを知らないユニーナの意見でもあるのだろう。自分のユニーナに対する態度は、いくら言い訳したとしても、決して褒められたものではないことをアレイドは改めて自覚した。
客室に三人を案内した後、伯爵は小さな声で言った。
「頭を下げた後、お前は自室に戻りなさい。」
すると、アレイドは、驚きと不安の混じったような目を見開き、震えた声で聞き返した。
「それは、どういう意味ですか?」
「もう、お前がどうこうできる話ではないと言うことだ。」
伯爵が鋭い眼差しを向け、冷たく言い放つと、アレイドはいきなり大きな声で反論した。
「嫌です!!僕も話をさせてください。諦めたくないんです。お願いします!!」
アレイドの大きな声は、当然、ドアの向こうで座っている三人にも聞こえた。
スワルスは、こちらに冷たい視線を向けているが、男爵とミズリーは、お互いの顔を見合わせ困ったように苦笑いしていた。
結局アレイドもその後の話し合いに入ることを許された。が・・・、いくら頭を下げて許しを得ようとしても、ユニーナの気持ちが婚約解消にある限り、バーナード家としてもこれ以上アレイドの気持ちを受け入れることは難しいと言われてしまった。
「お願いします。もう一度だけユニーナに会わせてください。今度こそちゃんと自分の気持ちを伝えます。」
床に頭を擦り付けて何度も頭を下げるアレイドに、男爵もほとほと困り果てていると、それまで感情の読めない目でアレイドを見下ろしていたスワルスが、冷やかな調子で口を開いた。
「君は、私の婚約者であるミズリーが好きなのか?ミズリーを自分のものにするために妹のユニーナと婚約したのか?もし、それが本当の話なんだとしたら、私は愛するミズリーの婚約者として、我が侯爵家の力を使ってでも君とユニーナとの婚約を白紙に戻させてもらう。」
「ち、違います。それは―――」
「そして!!ユニーナには、私の従弟との縁談を進める。」
「え、えん・・・だん?・・・そ、ん・・・・な・・・」
「従弟はリヴェル辺境地で騎士をしている。少し上だが年齢的にも特に問題ないだろう。なにより、お互いこの話には乗り気なようだから、私としては君のような何を考えているのかわからない人間とは、さっさと縁を切ってもらいたいと思っている。」
「ユニー・・・ナも、その縁談を望んでいるんですか?」
力なく床に座り込み、震える声で必死に言葉を吐き出すアレイドに向かって、スワルスは口の端を少し上げ、意地の悪い顔をした。
「ああ、望むも何も、ユニーナは大喜びだったよ。なあ、ミズリー?今すぐにでも辺境地に向かおうとしていたのには、さすがの私も驚いたけれどね。」
「なぜ・・・会ったこともない人との縁談にユニーナは・・・あっ!・・・辺境地って。」
「ははは。君はユニーナの婚約者のくせに彼女のことを、本当に何も知らないんだな!?
それで、好きだの愛してるだの、よく言えたものだな! 婚約して三年か?その間、君は一体何をしていたんだ?
なあ、学園で噂になっている通り、君は、本当はミズリーが好きなんだろう?悪いが、先ほどから君の言っている話の全てに信憑性は見当たらない。そもそも、君がユニーナにしてきたことは、ミズリーを得る為の道具のような扱いと言われても仕方のないことなんじゃないのか?彼女が他の令嬢に嫌がらせを受けていても、頬を殴られ傷を作ったとしても、それを平気な顔で見過ごしてきたことが、彼女に興味がない証拠じゃないか!」
スワルスの棘のような言葉が、アレイドに矢のように降り注ぐ。自分の家族もユニーナの家族も多少なりともアレイドの気持ちに気付いてくれていた。アレイドは、気付かないうちにそれに甘えてしまっていたのだ。アレイドの気持ちなど何も知らないスワルスに、今、こうして容赦なく指摘されたことで、アレイドは自分の甘えを痛いほど痛感させられたのだった。そしてそれは、アレイドの本当の気持ちを知らないユニーナの意見でもあるのだろう。自分のユニーナに対する態度は、いくら言い訳したとしても、決して褒められたものではないことをアレイドは改めて自覚した。
67
あなたにおすすめの小説
こんな婚約者は貴女にあげる
如月圭
恋愛
アルカは十八才のローゼン伯爵家の長女として、この世に生を受ける。婚約者のステファン様は自分には興味がないらしい。妹のアメリアには、興味があるようだ。双子のはずなのにどうしてこんなに差があるのか、誰か教えて欲しい……。
初めての投稿なので温かい目で見てくださると幸いです。
最近彼氏の様子がおかしい!私を溺愛し大切にしてくれる幼馴染の彼氏が急に冷たくなった衝撃の理由。
佐藤 美奈
恋愛
ソフィア・フランチェスカ男爵令嬢はロナウド・オスバッカス子爵令息に結婚を申し込まれた。
幼馴染で恋人の二人は学園を卒業したら夫婦になる永遠の愛を誓う。超名門校のフォージャー学園に入学し恋愛と楽しい学園生活を送っていたが、学年が上がると愛する彼女の様子がおかしい事に気がつきました。
一緒に下校している時ロナウドにはソフィアが不安そうな顔をしているように見えて、心配そうな視線を向けて話しかけた。
ソフィアは彼を心配させないように無理に笑顔を作って、何でもないと答えますが本当は学園の経営者である理事長の娘アイリーン・クロフォード公爵令嬢に精神的に追い詰められていた。
とある伯爵の憂鬱
如月圭
恋愛
マリアはスチュワート伯爵家の一人娘で、今年、十八才の王立高等学校三年生である。マリアの婚約者は、近衛騎士団の副団長のジル=コーナー伯爵で金髪碧眼の美丈夫で二十五才の大人だった。そんなジルは、国王の第二王女のアイリーン王女殿下に気に入られて、王女の護衛騎士の任務をしてた。そのせいで、婚約者のマリアにそのしわ寄せが来て……。
私が、良いと言ってくれるので結婚します
あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。
しかし、その事を良く思わないクリスが・・。
名も無き伯爵令嬢の幸運
ひとみん
恋愛
私はしがない伯爵令嬢。巷ではやりの物語のように義母と義妹に虐げられている。
この家から逃げる為に、義母の命令通り国境を守る公爵家へと乗り込んだ。王命に物申し、国外追放されることを期待して。
なのに、何故だろう・・・乗り込んだ先の公爵夫人が決めたという私に対する処罰がご褒美としか言いようがなくて・・・
名も無きモブ令嬢が幸せになる話。まじ、名前出てきません・・・・
*「転生魔女は国盗りを望む」にチラッとしか出てこない、名も無きモブ『一人目令嬢』のお話。
34話の本人視点みたいな感じです。
本編を読まなくとも、多分、大丈夫だと思いますが、本編もよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/novel/618422773/930884405
幸せな結婚生活に妻が幼馴染と不倫関係、夫は許すことができるか悩み人生を閉じて妻は後悔と罪の意識に苦しむ
佐藤 美奈
恋愛
王太子ハリー・アレクサンディア・テオドール殿下と公爵令嬢オリビア・フランソワ・シルフォードはお互い惹かれ合うように恋に落ちて結婚した。
夫ハリー殿下と妻オリビア夫人と一人娘のカミ-ユは人生の幸福を満たしている家庭。
ささいな夫婦喧嘩からハリー殿下がただただ愛している妻オリビア夫人が不倫関係を結んでいる男性がいることを察する。
歳の差があり溺愛している年下の妻は最初に相手の名前を問いただしてもはぐらかそうとして教えてくれない。夫は胸に湧き上がるものすごい違和感を感じた。
ある日、子供と遊んでいると想像の域を遥かに超えた出来事を次々に教えられて今までの幸せな家族の日々が崩れていく。
自然な安らぎのある家庭があるのに禁断の恋愛をしているオリビア夫人をハリー殿下は許すことができるのか日々胸を痛めてぼんやり考える。
長い期間積み重ねた愛情を深めた夫婦は元の関係に戻れるのか頭を悩ませる。オリビア夫人は道ならぬ恋の相手と男女の関係にピリオドを打つことができるのか。
隣の芝生は青いのか
夕鈴
恋愛
王子が妻を迎える日、ある貴婦人が花嫁を見て、絶望した。
「どうして、なんのために」
「子供は無知だから気付いていないなんて思い上がりですよ」
絶望する貴婦人に義息子が冷たく囁いた。
「自由な選択の権利を与えたいなら、公爵令嬢として迎えいれなければよかった。妹はずっと正当な待遇を望んでいた。自分の傍で育てたかった?復讐をしたかった?」
「なんで、どうして」
手に入らないものに憧れた貴婦人が仕掛けたパンドラの箱。
パンドラの箱として育てられた公爵令嬢の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる