花言葉は「私のものになって」

岬 空弥

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婚約の理由

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「僕は、ミズリーに恋情は持っていません。ですが・・・ユニーナは今も、僕の気持ちを誤解したままです。ユニーナを誤解させたまま三年も経ってしまいました。僕は、ずっと・・・ユニーナに嫌われています。・・・いつまでも誤解を解くことができない僕は、せめて、これ以上嫌われないように・・・、これ以上嫌われたくなくて・・・。僕は、自分の情けない姿を見せないように必死に虚勢を張ることばかり考えてきました。成績が良ければ見直してもらえるかもしれない。余裕のある振りをすれば大人っぽく見られるかもしれない。自分が・・・、いかに凄いか見せつければ、もしかして、また好きになってもらえるかも・・・なんて・・・。いくら上辺を良く見せたところでユニーナの気持ちは何も変わらないというのに、それどころか、逆に・・・どんどん嫌われてしまうと・・・いうのに・・・。」

堪えきれなくなったアレイドの瞳からは、次々と涙が零れていた。スワルスは、うっとうしいとでもいうような不快な顔でアレイドを見ていたが、疲れたように視線をゆっくり逸らすと、大きく息を吐いた。

「君の両親はもちろんだが、なぜかバーナーズ家までもが実の娘よりも君の意見を尊重しているように見えるんだ。そして彼らは、私がいくら説明を求めても話を濁すんだよ。何も知らされていない私は、当然君の言っていることが理解できない。なあ、君の言動が伴っていない理由をいい加減説明してもらえないだろうか? 内容によっては先ほど言ったように、私の力で強引な方法を取ることになるだろうが、私としても婚約者の妹には幸せになってもらいたいと思っているんだ、最後に君の本当の気持ちを知っておきたいのだが。」

強引な方法という言葉に、ユニーナを本当に失ってしまうかもしれない恐怖がアレイドの中を駆け巡る。ユニーナが自分以外の男の元へ行ってしまうなんて考えただけで頭がおかしくなってしまいそうだ。ましてやリヴェル辺境地などに行ってしまったなら、もう二度とユニーナの姿を見ることすらできないかもしれない。捩れそうな胃の痛みを感じながらも、唯一はっきりしていることは、自分の見栄やプライドに、もはや構っている場合ではないと言う事だけだ。 アレイドは、一呼吸して気持ちを落ち着けると、涙声を抑えるようにゆっくり話し始めた。



 そもそも両家の仲が深いのは、カドワーズ伯爵とバーナーズ男爵が学生時代の親友だったからだ。それは、お互いが結婚した後も続き、家族ぐるみの付き合いを現在でも続けているのだ。今でも年に数回はお互いの家族が揃って、小さな食事会を楽しんでいるのだ。アレイドとミズリー、そしてユニーナ、弟のリョシュー、四人は幼い頃からお互いを知る幼馴染のような関係性だった。
成長と共に、年々美しく可憐に育ってゆくミズリーを、周りの大人達はこぞって褒めそやしていたが、アレイドはいつだって、表情豊かで可愛らしいユニーナが大好きだった。四人で遊んでいても、アレイドは常にユニーナを傍に置きたがったし、何をするんでも、ユニーナを一番に優先させた。そんなアレイドのことをもちろんユニーナも慕っていたので、周囲からも二人は特別仲良く見えていた。
アレイドにとって、ミズリーは美しい姉でしかなかったし、また、ミズリーにとっても、アレイドは可愛らしいもう一人の弟だったのだ。

 アレイドが十歳を超えたあたりから、周りの大人達から婚約話がちらほらでるようになった。今思えば、伯爵家の嫡男に自分の娘を嫁がせたい大人がたくさんいたのだろうと思う。あちこちから婚約話が来ていると父に聞いたとき、アレイドは、ミズリーとユニーナにも婚約話が来ていることを知ったのだ。ミズリーには及ばないがユニーナにも幾つかの話が来ていると聞いて、アレイドはとても焦った。男爵家にとって、爵位の高い家からの申し出を断るのは難しいだろうと思った。アレイドがいくら頑張っても、断れない相手から婚約の話が来てしまったら、ユニーナは自分以外の人間と一緒になってしまう。しかも、そいつのことをユニーナがもし気に入ってしまったら・・・。ユニーナが他の男と手を繋ぎ、楽しそうに笑う姿を想像しただけで、当時のアレイドは激しい嫉妬で自分の顔が歪むのがわかった。アレイドはすぐさまユニーナと婚約したいと両親に告げると、父と一緒に男爵に会いに行ったのだ。家族ぐるみの付き合いを何年も続けていたため、お互いの両親は快くこの話を受け入れてくれたのだが、男爵からは、ミズリーの婚約話がまとまる気配がないので、しばらく待ってほしいと言われた。結局数年経ってもミズリーは誰とも婚約する気になれなかったようで、姉の婚約を先にと考えていた男爵もさすがに諦めるしかなくなり、アレイドとユニーナの婚約を先に進めることにした。
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