【完結】人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい?誰がんな事すっかバーカ!

隣のカキ

文字の大きさ
39 / 87
聖女の暴力編

第38話 聖女の夫婦事情

しおりを挟む
「とりあえず、魔王を抑える仕事ってやつを報告してからだな。」

「言われてみればそうでした。」

「私だって元々聖女様の戦闘力を測る為に来たのでした。」

 実家に寄ったのは依頼のついでだったのよね。ストレス解消にはなったけど、魔王が思ったよりも弱くてすっかり忘れてたわ。

「じゃあそれが終わったら、アリエーンとアリエンナは魔界行きよ。」

「分かりました。」

「俺は?」

「私も行ってみたいです。」

 ギャモーとミレイユさんも行きたいの?

「うーん……あなた達2人は見たとこSランクくらいの強さでしょ? ちょっと危険なのよねぇ……。」

 そんな所には連れて行けないわ。ミレイユさんが死んだら悲しいし、彼氏さんに合わせる顔が無い。

 ギャモーだって死んでしまえば私はこの年で未亡人。それはいやよ。

「でもアリエンナだけに行かせるのはな……。」

「ご先祖様の故郷に興味があります。」

「なら、2人は修行して待ってなさい。強くなったら迎えに来てあげるから。ミザリーを先生役にするのも良いかもね。」

「良いんですか!?」
「良いのか!?

 2人は身を乗り出してアンリさんに詰め寄った。

「凄い食いつきね……。」

 確かに2人の食いつき方はかなりのものだ。アンリさんが驚いている。

「当然だぜ。氷冷のミザリーは今じゃ伝説の冒険者だ。そんな大先輩に教われるってんなら大歓迎だ!」

「私も伝説の冒険者に教えて貰えるなら文句なんてありません! むしろそれを希望します!」

 ギャモーもミレイユさんも楽しそう。

 私は知らなかったけど、伝説の冒険者って凄いわ。どのくらい強いかな?

 魔王よりも強いと嬉しいな。

「分かったわ。ギルドへの報告が終わったらミザリーを紹介してあげる。」

 私も早く会ってみたいな。伯母さんってどんな人なのかしら。

「ミレイユちゃんは世代を重ね過ぎて、悪魔とのハーフの特性は全く無いから強さが頭打ちになる事もないわ。それでいて、悪魔としての強度や回復力がほんのり乗っているから普通の人間よりも有利よ。どんどん鍛えて強くなってちょうだい。」

「はい!」

「ギャモーさんはアリエンナとの契約が有効になってるみたいね。結婚してるのかしら? それなら大分強くなり易いはずよ。」

 契約?

「アリエンナちゃんは分からないって顔ね。簡単に言うと、悪魔と結婚した人間は自動で契約もされるのよ。悪魔との契約は相手の存在を引き上げるのに役立つわ。」

「そうなんですね。」

「悪魔と契約すると力がつきやすいと覚えておけば良いわ。」

「なぁ、俺らは結婚してねぇんだが。」

 ギャモーが横から不思議な事を言ってきた。結婚した事を忘れたのかしら?

「忘れたんですか? フェルミト王国に出発する前に婚姻届けを出したじゃないですか。」

「は? あの時役所に行きたいって言ったのはそれだったのか? 勝手に何してんだ!?」

「勝手にって……プロポーズしてくれましたよね? しかも杖までプレゼントして。」

 忘れたとは言わせないわ。私はあの時に結婚を決心したんだから。

「杖は買ってやったが、プロポーズなんて全然記憶にねぇ……。」

「私を美人だなんだと口説きまくってたじゃないですか。なかった事にするなんて酷いです!」

「確かに美人だとは言ったけどよ……それは口説いてんのとは違うだろ。」

 私の勘違い? 泣きたくなってきた。

 悲しくて魔力が溢れそう……。

「お互いの認識にズレがあるようね。ギャモーさんちょっと。」

 お母さんがギャモーに耳打ちしている。何を話してるの?


(ギャモーさん。悪いんだけど結婚に同意してくれない? 多分そうしないと、近隣の国がアリエンナの八つ当たりで滅びるわよ?)
(流石にそんな事はしねぇと思うぞ?)
(するわよ。ほら……アリエンナの魔力が高まってきてるのを感じない? あれはマズいわ。)
(確かに……でも、そんな簡単に決める事じゃねぇだろ?)
(普通はそうなんだけどね。アリエンナの事嫌い?)
(そりゃあ一緒に冒険者やってんだから好きっちゃ好きだが。)
(なら良いでしょ。ほら、早く同意して。アリエンナが暴走するわよ。結婚したらあのレベルの美人を好きに出来るのよ? どんな変態プレイをしてもお母さん文句言わないから。)
(変態プレイなんかしねぇよ! でも、分かったぜ。)


「あー、アリエンナよぉ。」

 ギャモーが頭をボリボリと掻きながらバツが悪そうに口ごもる。

「……なんですか?」

 涙が出そう……。

「悪かったよ。俺もお前が好きで一緒に冒険してんだ。だから結婚もそこまで嫌ってわけじゃねぇ。ただ……こういう事はもっと時間をかけるべきだと思ってたんだ。」

「じゃあ良いんですか?」

「あぁ……。今度からはもっと話し合おうぜ。」

 良かった……。

「分かりました。」

 私達には話し合いが足りなかったのね……。

「えーと……結婚おめでとう?」

 アンリさんが祝福してくれる。

「ありがとうございます。」

「とりあえず、あんたら全員一回報告に行って来なさい。転移魔法で送ってあげるから。」

 お母さんも転移魔法使えるの?

しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

断罪された大聖女は死に戻り地味に生きていきたい

花音月雫
ファンタジー
お幼頃に大聖女に憧れたアイラ。でも大聖女どころか聖女にもなれずその後の人生も全て上手くいかず気がつくと婚約者の王太子と幼馴染に断罪されていた!天使と交渉し時が戻ったアイラは家族と自分が幸せになる為地味に生きていこうと決心するが......。何故か周りがアイラをほっといてくれない⁉︎そして次から次へと事件に巻き込まれて......。地味に目立たなく生きて行きたいのにどんどん遠ざかる⁉︎執着系溺愛ストーリー。

本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?

今川幸乃
ファンタジー
ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。 バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。 追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。 シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~

夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。 「聖女なんてやってられないわよ!」 勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。 そのまま意識を失う。 意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。 そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。 そしてさらには、チート級の力を手に入れる。 目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。 その言葉に、マリアは大歓喜。 (国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!) そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。 外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。 一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

魔物が棲む森に捨てられた私を拾ったのは、私を捨てた王子がいる国の騎士様だった件について。

imu
ファンタジー
病院の帰り道、歩くのもやっとな状態の私、花宮 凛羽 21歳。 今にも倒れそうな体に鞭を打ち、家まで15分の道を歩いていた。 あぁ、タクシーにすればよかったと、後悔し始めた時。 「—っ⁉︎」 私の体は、眩い光に包まれた。 次に目覚めた時、そこは、 「どこ…、ここ……。」 何故かずぶ濡れな私と、きらびやかな人達がいる世界でした。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

処理中です...