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聖女の暴力編
第83話 聖女の無慈悲
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「どうかしました?」
「そんな男はやめて、俺と結婚するんだ!」
「無理です。いい加減しつこいですよ?」
「そいつは顔だって大した事ないし、たかが冒険者だ。俺の方が森の魔物を狩ってる分稼ぎだって上だぞ?」
堂々と自信あり気に感じの悪い事を言ってくる彼は、どうやら本気で私が靡くと思っているらしい。
やだなぁ。
どうして自信過剰な人って、自己アピールが他者を貶める内容なのかしら。人と比較なんかせずに自分の良い所をさり気なくアピールすれば良いのに。
「ルーシュ君は発言が気持ち悪いので無理です。」
「……。」
「私の次に美人だからリズと仲良くしていたという発言も気に入りません。」
「それは……。」
「あとしつこ過ぎて怖いですし、なんかムカつくので嫌です。」
「アリエンナ、いくらなんでもそりゃ可哀想じゃねぇか?」
「全然可哀想じゃありません。そんな理由で仲良くされているリズの方が余程可哀想です。」
「お前……もしかして本気でリズの事心配してたのか?」
え? 今さら?
「当たり前じゃないですか。」
「本気で心配してる奴の足を引き摺ったり熱湯消毒しようとするお前の発想の方が怖えよ。」
そうかしら?
消毒って、大事だと思うんだけどなぁ……。
「とにかく、馬鹿まる出しな事ばかり言うルーシュ君とは結婚したくありません。明日、世界が滅びるとしても嫌です。死んでも嫌です。生まれ変わっても嫌です。何かもう全体的に嫌です。」
「お、おい……言い過ぎだろ。こいつ泣いてんじゃねぇかよ。」
本当だ。ルーシュ君ったら泣いちゃったわ。
「いきなり泣くのも嫌です。」
「追撃するのはよせって……。」
何故かギャモーが止めに入る。
自分が馬鹿にされているのに情けをかけるなんて凄いわ。ギャモーったら全然気にしていないみたい。
でも、私はとても気にしているので、口を止める事は有り得ない。
「泣けば済むと思っている所も嫌です。」
「す、すまねぇ。もうアリエンナは連れてくから!」
この人、泣いてる顔も微妙に腹立たしいわ。
「ぐす……。」
「泣いてる顔も嫌です。」
ギャモーは強引に私の手を引っ張り、ルーシュ君に謝りながらこの場を後にした。
「どうしたんですか?」
「いくらなんでも言い過ぎだ。」
そうかな? ナンパは嫌なら徹底的に断れってお母さんが言ってたんだけど。
それに、思った事しか言ってないから酷くはないんじゃないかしら?
「嘘はついていませんよ?」
「嘘ついてねぇからって何でも言って良いわけじゃねぇだろ?」
ギャモーはやっぱり優しい。あんなダメな人にもフォローしてあげるなんて、なかなか出来ない事だわ。
「ルーシュ君の発言もかなりダメだったので、おあいこです。」
「まぁ、確かに。そりゃそうなんだが……。」
ギャモーはまだ納得いっていないみたいね。なら仕方ないわ。
「分かりました。あまり酷い事は言わないようにします。」
結婚したんだから、相手の顔を立てる事もしなきゃダメよね。今度からはギャモーが見ていない所で言う事にしよう。
※アリエンナは取り繕う事を覚えた
私達は一通り村内を歩き回った後、実家に帰った。
「二人共お帰りなさい。」
「ただいまー。」
「今帰ったぜ。」
お母さんがニコニコしている。随分機嫌が良さそうだけど、どうしたんだろう?
「お母さん何か良い事あった?」
「ふふっ。実はね……凄く良い事があったのよ。」
お母さんは誰かに話したくて仕方がなかったようで、大喜びで事情を教えてくれた。
なんでも、以前魔神ルシーフとバルバスを討伐した後に古代の魔道具があれば貰っちゃおうという話をしていた事を急に思い出し、急いで取りに行ったそう。
「そういえば、そんな話もしてたっけ……。」
私も忘れてた。
「でね。貰ってきた魔道具がこれなのよ!」
掲げるように取り出された魔道具は……
「何それ?」
トゲトゲが生えている帽子のような見た目で、かなりエキセントリックだ。
私だったら絶対に被りたくない。
「これはね、相手の悪い癖を一つだけ消してしまう魔道具らしいのよ!」
「どういう事?」
「言った通りよ。これを被せた人にやめて欲しい癖を言えば、どんな悪い癖も不思議と無くなるらしいわ。」
へぇ……。
どんな癖も無くなるんだとしたら、古代人は皆品行方正だったのかしら?
「ギャモーは私に直して欲しい癖はありますか?」
「そんなのあるワケねぇだろ。お前を受け入れて結婚したんだからよ。」
凄い。
即答されるとは思ってもみなかった。
いくら欠点の無い私でも、一つくらいは直して欲しい所があるんだと思ってたわ。
「……。」
「どうした?」
恥ずかしい。
今は顔を見られたくない。
「あら、アリエンナったら照れちゃって。」
「言わないで。」
このままだとお母さんにからかわれてしまう。
一旦違う事を考えよう。
「せっかくだし、この魔道具を試してみても良い?」
「露骨に話題を逸らしてきたわね……。まぁ、良いわよ。」
「丁度人間関係で悩みがあって、使ってみたい人がいるの。」
なんとか話題を逸らせたわ。
「誰に使うの? 近くの人?」
「行けば分かるよ。」
私はギャモーとお母さんを連れ、家を出発した。
行先は近所だ。
「アリエンナが人間関係で悩むなんて意外だな。」
「そうよね。」
「二人とも、私をなんだと思ってるんです? 私にだって悩みくらいありますよ。」
全く、失礼しちゃうわ。
「そんな男はやめて、俺と結婚するんだ!」
「無理です。いい加減しつこいですよ?」
「そいつは顔だって大した事ないし、たかが冒険者だ。俺の方が森の魔物を狩ってる分稼ぎだって上だぞ?」
堂々と自信あり気に感じの悪い事を言ってくる彼は、どうやら本気で私が靡くと思っているらしい。
やだなぁ。
どうして自信過剰な人って、自己アピールが他者を貶める内容なのかしら。人と比較なんかせずに自分の良い所をさり気なくアピールすれば良いのに。
「ルーシュ君は発言が気持ち悪いので無理です。」
「……。」
「私の次に美人だからリズと仲良くしていたという発言も気に入りません。」
「それは……。」
「あとしつこ過ぎて怖いですし、なんかムカつくので嫌です。」
「アリエンナ、いくらなんでもそりゃ可哀想じゃねぇか?」
「全然可哀想じゃありません。そんな理由で仲良くされているリズの方が余程可哀想です。」
「お前……もしかして本気でリズの事心配してたのか?」
え? 今さら?
「当たり前じゃないですか。」
「本気で心配してる奴の足を引き摺ったり熱湯消毒しようとするお前の発想の方が怖えよ。」
そうかしら?
消毒って、大事だと思うんだけどなぁ……。
「とにかく、馬鹿まる出しな事ばかり言うルーシュ君とは結婚したくありません。明日、世界が滅びるとしても嫌です。死んでも嫌です。生まれ変わっても嫌です。何かもう全体的に嫌です。」
「お、おい……言い過ぎだろ。こいつ泣いてんじゃねぇかよ。」
本当だ。ルーシュ君ったら泣いちゃったわ。
「いきなり泣くのも嫌です。」
「追撃するのはよせって……。」
何故かギャモーが止めに入る。
自分が馬鹿にされているのに情けをかけるなんて凄いわ。ギャモーったら全然気にしていないみたい。
でも、私はとても気にしているので、口を止める事は有り得ない。
「泣けば済むと思っている所も嫌です。」
「す、すまねぇ。もうアリエンナは連れてくから!」
この人、泣いてる顔も微妙に腹立たしいわ。
「ぐす……。」
「泣いてる顔も嫌です。」
ギャモーは強引に私の手を引っ張り、ルーシュ君に謝りながらこの場を後にした。
「どうしたんですか?」
「いくらなんでも言い過ぎだ。」
そうかな? ナンパは嫌なら徹底的に断れってお母さんが言ってたんだけど。
それに、思った事しか言ってないから酷くはないんじゃないかしら?
「嘘はついていませんよ?」
「嘘ついてねぇからって何でも言って良いわけじゃねぇだろ?」
ギャモーはやっぱり優しい。あんなダメな人にもフォローしてあげるなんて、なかなか出来ない事だわ。
「ルーシュ君の発言もかなりダメだったので、おあいこです。」
「まぁ、確かに。そりゃそうなんだが……。」
ギャモーはまだ納得いっていないみたいね。なら仕方ないわ。
「分かりました。あまり酷い事は言わないようにします。」
結婚したんだから、相手の顔を立てる事もしなきゃダメよね。今度からはギャモーが見ていない所で言う事にしよう。
※アリエンナは取り繕う事を覚えた
私達は一通り村内を歩き回った後、実家に帰った。
「二人共お帰りなさい。」
「ただいまー。」
「今帰ったぜ。」
お母さんがニコニコしている。随分機嫌が良さそうだけど、どうしたんだろう?
「お母さん何か良い事あった?」
「ふふっ。実はね……凄く良い事があったのよ。」
お母さんは誰かに話したくて仕方がなかったようで、大喜びで事情を教えてくれた。
なんでも、以前魔神ルシーフとバルバスを討伐した後に古代の魔道具があれば貰っちゃおうという話をしていた事を急に思い出し、急いで取りに行ったそう。
「そういえば、そんな話もしてたっけ……。」
私も忘れてた。
「でね。貰ってきた魔道具がこれなのよ!」
掲げるように取り出された魔道具は……
「何それ?」
トゲトゲが生えている帽子のような見た目で、かなりエキセントリックだ。
私だったら絶対に被りたくない。
「これはね、相手の悪い癖を一つだけ消してしまう魔道具らしいのよ!」
「どういう事?」
「言った通りよ。これを被せた人にやめて欲しい癖を言えば、どんな悪い癖も不思議と無くなるらしいわ。」
へぇ……。
どんな癖も無くなるんだとしたら、古代人は皆品行方正だったのかしら?
「ギャモーは私に直して欲しい癖はありますか?」
「そんなのあるワケねぇだろ。お前を受け入れて結婚したんだからよ。」
凄い。
即答されるとは思ってもみなかった。
いくら欠点の無い私でも、一つくらいは直して欲しい所があるんだと思ってたわ。
「……。」
「どうした?」
恥ずかしい。
今は顔を見られたくない。
「あら、アリエンナったら照れちゃって。」
「言わないで。」
このままだとお母さんにからかわれてしまう。
一旦違う事を考えよう。
「せっかくだし、この魔道具を試してみても良い?」
「露骨に話題を逸らしてきたわね……。まぁ、良いわよ。」
「丁度人間関係で悩みがあって、使ってみたい人がいるの。」
なんとか話題を逸らせたわ。
「誰に使うの? 近くの人?」
「行けば分かるよ。」
私はギャモーとお母さんを連れ、家を出発した。
行先は近所だ。
「アリエンナが人間関係で悩むなんて意外だな。」
「そうよね。」
「二人とも、私をなんだと思ってるんです? 私にだって悩みくらいありますよ。」
全く、失礼しちゃうわ。
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