【完結】人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい?誰がんな事すっかバーカ!

隣のカキ

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聖女の暴力編

第84話 聖女の無慈悲2

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「ここって……。」

 お母さんは何かを理解したように呟く。

「一体誰の家なんだ?」

 その様子を見て疑問を覚えたのか、不思議そうに尋ねるギャモー。

「ルーシュ君の家です。」

「あいつに使うのか?」

「はい。」

「何の癖を直す気なんだ?」

「まぁ、何だって良いじゃないですか。それではお邪魔しまーす。」

 私は元気よく挨拶してルーシュ君の家に入った。

 中にはルーシュ君が居て、驚いた顔で私を見ている。

「アリエンナ!? もしかして、俺と一緒になってくれる決心がついたのか!」

 キラキラした顔で私を見ている彼は、本当に私が頷くと思っているようだ。

 結婚披露宴からの流れを考えれば分かると思うんだけど、絶対に私がルーシュ君に靡く事などあり得ない。

 この人、頭の中に何が入ってるんだろう?

 どうしてそんな結論に至ったのか本当に聞いてみた……いや、やっぱり聞きたくない。

「全然違います。今日はルーシュ君の悪い癖を直してあげようと思って来ました。」

「俺に悪い癖? そんなもの無いさ。」

 堂々と有り得ない事を言うルーシュ君。

 欠点の無い私でさえギャモーに……きっと一つくらいは直して欲しい癖があると思われてるだろうと考えていたのに、欠点しかないルーシュ君が言い放つ妄言はいっそ滑稽だった。

「とにかく、これを被ってみて下さい。」

 トゲトゲした帽子をルーシュ君に手渡すと、彼はとても嬉しそうな顔で更に意味不明な事を言いだした。

「これが婚約指輪の代わりなんだね? 相変わらずアリエンナは変わっているけど、俺は受け入れるさ。」

「……。」
「……。」

 開いた口が塞がらないとは正にこの事。ルーシュ君のあまりの前向きな発言に対し、思わずお母さんと目を見合わせてしまった。

 と言うか、そんな変な物を婚約指輪の代わりにするはずがない。

 多分、彼は少し……それなりに……いや、盛大に馬鹿なんでしょう。

 嬉しそうな顔でトゲトゲ帽子を被った彼はその表情も相まって、大変馬鹿らしい見た目になってしまった。

「えっと、ルーシュ君の女癖の悪さを直して下さい。」

 すると突然、バチバチと帽子から火花が飛び散って辺りを明るく照らし出し、ルーシュ君が苦しみ始めた。

「あばばばばば!」

 これが魔道具の効果なのかしら?

 変な声を出しながらルーシュ君が立ったまま痙攣している。

 もう少し静かに発動して欲しい。

「あばばばばば!」

「……。」

「あばばばばば!」

「……。」
「おい、黙ってないで助けてやった方が良いんじゃねぇのか?」

「えっと、こういう物なのかと思ってました。」

 後、単純にこの人を助ける気が起きないというのもある。

「変ね。聞いた話によると、この魔道具は起動してすぐに癖を直してくれるはずなんだけど……。」

 お母さんが訳知り顔で呟く。

 こんなに時間がかかるなんて、余程癖の悪い人なんでしょうね。

 一体どれだけ女に執着しているんだろう?

 きっとルーシュ君は筋金入りの女癖の悪さを持つとんでもない奴なんだわ。

「……。」

 私が考え事をしていると、プシューっと音を立ててトゲトゲ帽子が光らなくなった。

 そしてルーシュ君は意識こそあるが、やけに静かだ。

 不気味だわ。

「ルーシュ君? 大丈夫?」

 お母さんが無事かどうか確認しているが、彼はお母さんを一瞥するだけで大した反応を見せない。

「変ね? 昨日久しぶりに会った時だって凄くハイテンションで、相変わらず女神ですねって挨拶してきたのに。」

 その挨拶の方がよっぽど変だと思う。

「久しぶりって、母ちゃんはこの村に住んでるんじゃねぇのか?」

「住んではいるけど、あまり村にいないのよ。」

 お母さんは村に住んでこそいるが、今までも冒険者として転移魔法で各地へ出掛けていたそうで、私が13歳を過ぎた頃からは食事の時と夜寝る時以外は村にいなかったそうだ。

「何で娘のお前が知らねぇんだ?」

 ギャモーの疑問は尤もだけど、私にだって言い分がある。

「ごめんなさい。お母さんはいつも遊びに出掛けているのかと思ってました。」

「酷い誤解だわ……。」

 お母さんがげんなりした顔で肩を落としている。

「それよりも、コイツ大丈夫なのか? さっきから黙ってるけどよぉ。」

 そうだった。

「ルーシュ君、大丈夫ですか?」

「……。」

 私が問いかけても、ちらりとこちらを見るだけで殆ど反応を示さない。さっきまで生き生きとした様子で意味不明な事ばかり言っていたのに。

「一応は女癖? 直ってるっちゃあ直ってるのか?」

「でも、これじゃあ会話すら成り立ちませんよ。」

 うーん。もしかすると魔道具が壊れてたのかしら?

「あぁ……成る程。」

 お母さんは気付いた事があるようで、手をポンと叩いて一人で納得していた。

「多分だけどね、ルーシュ君は生きる上で女が殆ど全ての原動力なのよ。」

「はい?」

「魔道具は『女癖の悪さ』という言葉を『女への執着』と捉えたのね。つまり女への執着が消え去ったルーシュ君は、殆ど何もやる気が起きない状態なのよ。」

 この人の頭の中には何が入ってるんだろうと疑問を覚えいていたけど、図らずも魔道具が証明してしまったわね。

 ……殆ど女の事しか頭に無かったなんて。

「もう元気ハツラツなルーシュ君を見る事は叶わないのね。お母さん悲しいわ。」

 お母さんは憂いを帯びた目でルーシュ君を見つめている。

 まぁ、別に見たいとは思わないけども。
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