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もらい事故で婚約破棄されました
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突然の中傷を受けたシャルロットは、あまりの出来事に足を止め、言葉をなくしていた。
そんな彼女に代わり、いつもは冷静なエレナが怒りだす。
「何て言うことを! わたくしを貶めるだけでなく、シャルロット様に対してそんな暴言を吐くなんて……。今すぐ彼女に謝ってください!」
「そうよ! シャルロット様に失礼ですわ!」
シャルロットの隣に立つアニエスも、エレナと共にフィリップに抗議をしてくれる。
会場の雰囲気も、運悪く巻き込まれたシャルロットに対して同情的なムードだが、なんだかそれはそれで間の悪い自分が情けなく、申し訳ない気分になってしまう。
まあ、仮に居合わせなかったとしても十分ひどい出来事なのだが。
嘘でしょう?
なんなのよ、この地獄のような状況は。
ちょっとフィリップ、私があなたに何をしたっていうのよ!
しかし、悪いことは続くもので、開き直ったフィリップがさらに追い打ちをかけてきた。
なんと、親友のユリウスにもシャルロットとの婚約破棄を勧め始めたのである。
「なあ、どうせならユリウスもあの芋女と婚約を破棄しちゃえば? 可愛い令嬢なんて腐るほどいるんだし」
はあぁ?
親が決めた婚約相手を、『あ、やっぱり夕飯はカレーじゃなくてラーメンにしようかな』みたいなノリで軽々しく変更するんじゃないわよ。
他の女の子にも失礼だし、どういう神経をしているわけ?
開いた口がふさがらないシャルロットだったが、ユリウスの返答は想像の更に上を行っていた。
「なるほど、さすがフィリップだね。じゃあシャルロット、悪いけれど僕たちも破棄ってことでいいかな? 君のことは嫌いではないけれど、僕はもっと可愛くてガードが緩い娘が好きなんだよね」
「わかる! 身持ちが硬い女って可愛げがないよな」
……なんですと?
一瞬止まったシャルロットの思考が、急速に動き出す。
もらい事故で婚約破棄キターーーー!!
え、本当に?
こんな馬鹿げた話ってある?
フィリップがユリウスに同意し、二人は肩を組んではしゃいでいるが、トンデモ発言に周囲が引いていることには気付いていないらしい。
こ、こいつらってゲスの極みじゃないの。
どうして私もエレナ様も、こんな奴らの婚約者を長年やってきたのかしら。
シャルロットが怒りでわなわなと震え出し——たように周囲には見えていたが、実際腹を立てたのは僅かな間のことで、彼女は徐々にこみ上げてくる笑いと戦っていた。
「なによこの展開……あまりにもひどすぎて……ぷっ、清々しいほどのクズさ加減に笑えてきたじゃないの……ぷぷっ……え、私ってばこんなにずっと我慢してきたのに……もらい事故なんかで……ぷはっ……婚約破棄って……ウケるー」
何やら震えながら一人でブツブツと呟いていたシャルロットは、とうとう抑えきれないとばかりに声を上げて楽しそうに笑い始めた。
「ふふっ、ふふふふふ。あははははは!」
この状況下で笑い出したシャルロットに、ユリウスだけでなく夜会の参加者たちがビックリしたような目で見ているが、そんなことはどうでも良かった。
「シャルロット様?」
「どうなさいました?」
エレナとアニエスだけが不安そうに寄り添ってくれる中、シャルロットは記憶を思い出してからずっと溜め込んできた貴族社会に対する鬱憤が、一気に噴き出すのを感じていた。
あー、馬鹿馬鹿しい。
これだから社交界って合わないのよね。
頭の悪い男に振り回されて、こちらに非がなくたって私もエレナ様も今後は傷物令嬢扱い。
家族には申し訳ないけれど、もう大人しい令嬢なんてやってられないわ。
シャルロットはゆっくりと眼鏡を外すと、三つ編みにしていたリボンを解く。
目立たぬよう、ずっと瓶底眼鏡とダサい三つ編み姿で過ごしてきたが、本来の彼女はなかなかの美少女なのである。
まつげパッチリのエメラルドの瞳と、波打つ珊瑚色の髪を見た人々から感嘆の声が漏れた。
特にユリウスは驚いたようで、口が開いてしまっている。
「さてと、エレナ様」
シャルロットはまずエレナに話しかけた。
「あの下劣な男と婚約を続けるおつもりはありますか?」
「下劣だと?」とフィリップが突っかかってくるが、まるっと無視をする。
すぐに反応するあたり、下劣だという自覚がありそうなのが笑えるところだ。
エレナは僅かに思案するように首を傾げた。
「そうですね。正直愛情なんてありませんけれど、家に迷惑はかけられませんわ。わたくしがいつまでも屋敷にいたら、お兄様が結婚された時に困るでしょうし……」
「では、フィリップ様と結婚したいかしたくないかの二択だったら?」
「もちろん結婚したくないです!」
「ふふっ、了解ですわ」
エレナの食い気味の回答に、良く出来ましたとばかりにシャルロットがにっこりと微笑んだ。
さて、こちらのターンといきますか。
そんな彼女に代わり、いつもは冷静なエレナが怒りだす。
「何て言うことを! わたくしを貶めるだけでなく、シャルロット様に対してそんな暴言を吐くなんて……。今すぐ彼女に謝ってください!」
「そうよ! シャルロット様に失礼ですわ!」
シャルロットの隣に立つアニエスも、エレナと共にフィリップに抗議をしてくれる。
会場の雰囲気も、運悪く巻き込まれたシャルロットに対して同情的なムードだが、なんだかそれはそれで間の悪い自分が情けなく、申し訳ない気分になってしまう。
まあ、仮に居合わせなかったとしても十分ひどい出来事なのだが。
嘘でしょう?
なんなのよ、この地獄のような状況は。
ちょっとフィリップ、私があなたに何をしたっていうのよ!
しかし、悪いことは続くもので、開き直ったフィリップがさらに追い打ちをかけてきた。
なんと、親友のユリウスにもシャルロットとの婚約破棄を勧め始めたのである。
「なあ、どうせならユリウスもあの芋女と婚約を破棄しちゃえば? 可愛い令嬢なんて腐るほどいるんだし」
はあぁ?
親が決めた婚約相手を、『あ、やっぱり夕飯はカレーじゃなくてラーメンにしようかな』みたいなノリで軽々しく変更するんじゃないわよ。
他の女の子にも失礼だし、どういう神経をしているわけ?
開いた口がふさがらないシャルロットだったが、ユリウスの返答は想像の更に上を行っていた。
「なるほど、さすがフィリップだね。じゃあシャルロット、悪いけれど僕たちも破棄ってことでいいかな? 君のことは嫌いではないけれど、僕はもっと可愛くてガードが緩い娘が好きなんだよね」
「わかる! 身持ちが硬い女って可愛げがないよな」
……なんですと?
一瞬止まったシャルロットの思考が、急速に動き出す。
もらい事故で婚約破棄キターーーー!!
え、本当に?
こんな馬鹿げた話ってある?
フィリップがユリウスに同意し、二人は肩を組んではしゃいでいるが、トンデモ発言に周囲が引いていることには気付いていないらしい。
こ、こいつらってゲスの極みじゃないの。
どうして私もエレナ様も、こんな奴らの婚約者を長年やってきたのかしら。
シャルロットが怒りでわなわなと震え出し——たように周囲には見えていたが、実際腹を立てたのは僅かな間のことで、彼女は徐々にこみ上げてくる笑いと戦っていた。
「なによこの展開……あまりにもひどすぎて……ぷっ、清々しいほどのクズさ加減に笑えてきたじゃないの……ぷぷっ……え、私ってばこんなにずっと我慢してきたのに……もらい事故なんかで……ぷはっ……婚約破棄って……ウケるー」
何やら震えながら一人でブツブツと呟いていたシャルロットは、とうとう抑えきれないとばかりに声を上げて楽しそうに笑い始めた。
「ふふっ、ふふふふふ。あははははは!」
この状況下で笑い出したシャルロットに、ユリウスだけでなく夜会の参加者たちがビックリしたような目で見ているが、そんなことはどうでも良かった。
「シャルロット様?」
「どうなさいました?」
エレナとアニエスだけが不安そうに寄り添ってくれる中、シャルロットは記憶を思い出してからずっと溜め込んできた貴族社会に対する鬱憤が、一気に噴き出すのを感じていた。
あー、馬鹿馬鹿しい。
これだから社交界って合わないのよね。
頭の悪い男に振り回されて、こちらに非がなくたって私もエレナ様も今後は傷物令嬢扱い。
家族には申し訳ないけれど、もう大人しい令嬢なんてやってられないわ。
シャルロットはゆっくりと眼鏡を外すと、三つ編みにしていたリボンを解く。
目立たぬよう、ずっと瓶底眼鏡とダサい三つ編み姿で過ごしてきたが、本来の彼女はなかなかの美少女なのである。
まつげパッチリのエメラルドの瞳と、波打つ珊瑚色の髪を見た人々から感嘆の声が漏れた。
特にユリウスは驚いたようで、口が開いてしまっている。
「さてと、エレナ様」
シャルロットはまずエレナに話しかけた。
「あの下劣な男と婚約を続けるおつもりはありますか?」
「下劣だと?」とフィリップが突っかかってくるが、まるっと無視をする。
すぐに反応するあたり、下劣だという自覚がありそうなのが笑えるところだ。
エレナは僅かに思案するように首を傾げた。
「そうですね。正直愛情なんてありませんけれど、家に迷惑はかけられませんわ。わたくしがいつまでも屋敷にいたら、お兄様が結婚された時に困るでしょうし……」
「では、フィリップ様と結婚したいかしたくないかの二択だったら?」
「もちろん結婚したくないです!」
「ふふっ、了解ですわ」
エレナの食い気味の回答に、良く出来ましたとばかりにシャルロットがにっこりと微笑んだ。
さて、こちらのターンといきますか。
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