【完結】転生したら脳筋一家の令嬢でしたが、インテリ公爵令息と結ばれたので万事OKです。

櫻野くるみ

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フレッシュでスペシャルな出来事

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「じゃあまたな」

ヒューゴは片手を上げて挨拶をすると、馬車に揺られて帰っていった。
さっきまであんなに笑い転げていたくせに、もうキリッと爽やかなヒューゴに戻っている。
なんか狡い……

「お嬢、ヒューゴ様は何をあんなに笑ってらっしゃったのですか?もしかしてお嬢の新しい変顔を披露したんですか?私にも見せて下さいよー」

侍女のサリーの言葉に思わず吹き出した。
なんだ、変顔って!!
ヒューゴの前でやるはずがないし、そもそもどんな発想だ?とか思ったけど、うちの家族は日常的に変顔をしてたんだった。
兄が一番得意で、遠征から帰る度に「これどうだ?行きに暇で思い付いたヤツ」とか言って、披露してくる。
元はイケメンなのに本当に残念な兄だな……
しかも「行き」って……
戦いに赴く緊張感ってものはないのか?ないんだろうなー。
せめて「帰り」にしろよ。

「それにしても、ヒューゴ様ってばあんなにガルシア家がお好きなんですねぇ。いやー、私は昔から見所がある青年だと思ってたんです!!さすがお目が高い!!」

サリー、私達の話を聞いてたな?
そういえばお茶のお代わり以降はずっと壁際にいたような……

めっちゃ上から目線で言ってるけど、相手は公爵令息だぞ?
サリーだってまだ二十歳そこそこなのに。
しかも雇われている身とはいえ、サリーもガルシアが好き過ぎやしないか?ありがたいけど。

「お嬢!お嬢も結婚するなら絶対ああいう方がいいですって。ヒューゴ様のところにお嫁に行くなら、私付いていってあげてもいいです」

「そ、そう?ありがとう……」

もう突っ込みどころ満載で、何を言ったらいいのかわからない。
『うちの侍女最強だな』とか思っていたら……

この後、サリーがヒューゴの噂話を広めたせいで、『あいつはなかなかわかってるヤツだ』という空気が使用人達の間ですっかり出来上がってしまっていた。
いやいや、公爵家の嫡男に対してみんな不遜じゃね!?
執事長のトーマスなんて、「コックスの跡取りと認めましょう」とか偉そうに言ってたけど、うちにそんな権利ないからね!?
とっくにヒューゴは跡取りに決まってるし!!

やっぱり「脳筋」は最強なのかもしれない。


◆◆◆


騎士団が出兵して3日後。
今日はサリーを連れて、街まで買い物に来ていた。
特に目当てのものはないが、町の人々に戦況が悪くないことをアピールする為である。

というか、このアピールが必要なのか段々疑問に思えてきたな。
うち、負けたことないから、誰も心配なんかしてなくない?

でも一応明るい色のワンピース姿で楽しそうに振る舞ってみせる。
実際、ウィンドウショッピングは楽しくてテンションが上がっていた。

「あれ?ルーじゃないか。偶然だな」

「ヒュー!!」

石畳の道を歩いていたら、ヒューゴが正面から歩いてきた。
長身にロングジャケットがさまになっていて、周囲の視線を集めている。

にしても、3日連続会うってすごくない?
夜会で会うまでは暫く会ってなかったのに。
なんかもう、私がゲームのヒロインかっていうくらいヒューゴに急接近してる気が……

「買い物か?」

「うん。まあ、欲しいものは特にはないんだけどね。ヒューは?」

「俺はちょっと人に会ってたところだ」

なるほど、お城や屋敷では会いにくい相手ってところかな?
ヒューゴは普段は宰相をしている公爵の補佐として、城勤めをしているのだ。
裏の顔を教えてもらってから、ヒューゴがより身近に感じられる。

「行き先が決まってないなら、一緒に店に入らないか?ルーの好きそうなパフェがあるらしい」

「行きたい!!」

速攻、食い気味で返事をしていた。
だってヒューゴとお茶だよ!?
それってもうデートじゃーん!!

私はルンルンでヒューゴについて行った。
サリーが『お嬢、やりましたね!!』みたいなキラキラした目で見てくるのが少しウザい。


中心部の喧騒から少し外れた、大きくて閑静な一軒家の前でヒューゴは足を止めた。
お洒落なオーベルジュみたいな建物で、白い壁に蔦が絡まり、奥には庭園が見えている。

ヒューゴが迷いなく入っていくので、ちょこちょこ後を追っていくと、給仕用の制服を着た男性が迎えてくれた。

「個室は空いているかな?」

「はい。どうぞこちらへ」

個室?
なんかリッチじゃない?
あ、私達って貴族だった。

入り口近くの広い空間は喫茶店になっていて、奥に個室があるらしい。
廊下を歩くヒューゴは少しあたりを警戒してるように見える。

案内された部屋は8畳くらいで、テーブルと2人がけのソファーが2つ設置されていた。
緑が美しい庭園が窓から望めて、ワクワクする。

「悪いんだが、席を外すから注文しておいてもらえるか?俺はコーヒーで。オススメはフレッシュイチゴのスペシャルパフェらしい」

そう言うと、ヒューゴは個室から出て行ってしまった。
うーん、コレはアレだな。
なんか隠密ってる最中に違いない。

よし!放っておこう!!

「すみませーん、コーヒーと、フレッシュイチゴのスペシャルパフェ1つずつお願いしまーす」

私は勝手に楽しむことにして、注文を済ませると庭を眺めていたのだが、ヒューゴはすぐに戻ってきた。

「隠密行動はもういいの?」

私がからかうように訊くと、ヒューゴは眉を下げた。

「バレてたのか。最近のルーは察しが良すぎて困るな。悪い、ダシに使って」

「何も悪くないよ。むしろラッキーだよ、ヒューとデートができて」

てへっとはにかみながら冗談のつもりで言ったら、ヒューゴが衝撃発言をした。

「ははっ、デートか。そうだな、じゃあ次はもっとちゃんとエスコートするから期待してて」

え?
次のデートがあるの!?

ビックリして、フレッシュでスペシャルなイチゴのパフェの味はよくわからなかった。









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