【完結】転生したら脳筋一家の令嬢でしたが、インテリ公爵令息と結ばれたので万事OKです。

櫻野くるみ

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作戦会議という名のイチャイチャ

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ヒューゴの肩にもたれかかって座りながら、私はしばし物思いに耽っていた。
片手はヒューゴの手と繋がれたままで、人生初の幸せを噛み締めている最中だ。

なんだか怒涛の展開で恋人が出来てしまった……
前世では彼氏すらできなかったというのに。
しかも、これが恋人繋ぎっていうやつでは?
うきゃー、手の密着度が凄くて手が窒息してしまう!

思えば前世の母が、「結婚なんてタイミングよ。タイミングさえ合えばあとはバタバタっと勢いでいっちゃうものだから」とか言っていたが、本当にそうなのかもしれない。
このまま結婚まで……って、ちょっと待てよ。
なんだか不穏な影が頭の隅っこにチラついたような。

ヒューゴとの結婚自体は、「はい、喜んで!」って感じで、願ったり叶ったりだ。
真面目だし、将来性があるし、浮気もしない……多分。
攻略対象になるくらいイケメンだし、細マッチョだし、インテリ男子だし、なんか甘いし、ちょっとエロいし、最高か!!
いや、最高なのはいいのだ。
問題はそこじゃなくて……

「ルー?どうした?今からやっぱり嫌だとか言われると、少し堪えるが……」

「言わないよ!言う訳ないじゃん!!ヒューはどこを切っても最高だから!!そうじゃなくて、問題はうちの家族のほうで……」

ついヒューゴを金太郎飴みたいに言ってしまったが、不安要素はうちの父と兄にある。
でもヒューゴの金太郎飴……いや、ヒューゴ飴、ちょっと欲しいな。
ってそうじゃない。

「将軍とテオドールに勝たないと結婚を許して貰えないからか?確かに二人を倒すのは至難の技だな。心意気を見せろということだろうから、勝てずともある程度まで持ちこたえれば許して貰える気はするが、腕とあばら数本の骨折は覚悟しないといけないな」

ひょえぇぇぇぇぇーーー
こんな私ごときの為に、ヒューゴがボロボロになるなんて耐えられませぬーー!!
その美しい顔に傷が付くくらいなら、私があの脳筋どもを!!

「ヒューにそんなことするなら、お父さんとお兄ちゃんの遠征直前に食事に下剤入れてやるわ」

「やるなよ?騎士団の士気に関わるからな?」

ギョッとした目で見られてしまった。

チッ、あの二人ならチョロいから絶対気付かれずに薬を盛れるのに……
って、あれ?

「ね、ヒュー。コックスの力があれば、いくらでも手を回したり、勝てる方法があるんじゃない?」

諜報に長けたコックス家だ。
いくらでも脳筋の二人をギャフンと言わせる手段を持っているはず……

「いや、正々堂々と戦って勝たないと意味がない。将軍も、俺が娘を預ける価値がある男かを見定めているんだ。それだけルーを想っているということだし、俺もルーを愛しているからこそ正面から受け止めるつもりだ」

結ばれた手に力が籠められた。
ヒューゴの本気が伝わってくる。

「ヒューの気持ちは嬉しいけど、傷ついて欲しくないの。私も一緒に作戦を考えるから、あんまり無茶はしないで?」

「ああ。本当は勝てる算段がついてからプロポーズしたかったんだが、なんだかどさくさ紛れになってカッコ悪いな」

「うっ……、それは私のせいだから……。なんかごめん」

「ははっ、勝負に勝てたら改めてプロポーズするよ。ロマンチックがいいんだもんな?」

「きゃーっ、さっきのは忘れてー!!」

ヒューゴの笑い声に、私は唇を尖らせながら彼の脇腹に肘鉄を喰らわせた。

「ウグッ……」

あれ?
冗談のつもりが、思いっきり入ってしまったらしい。

「ちょっ、ヒュー、大丈夫!?ごめん、そんな強くやったつもりじゃなくて…」

チュッ

俯くヒューゴを覗き込もうとした私の頬に、軽いリップ音と共にヒューゴの唇が掠めていった。

……
今のは、ほっぺにチューですか?

イタズラが成功したとばかりに晴れやかな笑顔のヒューゴに、私は真っ赤であろう顔を隠すことも出来ずに怒ってみせた。

「ヒュー!肘鉄じゃ足りないみたいだから、今度はデコピンね!!ほら、大人しくして!!」

私の腕をガードしつつ、ヒューゴは子供の頃のように笑っている。
ヒューゴのこんな無防備な顔を見られるのは自分だけだと思うと、胸がキュンとなった。

結局、『打倒!父・兄!!』の第一回作戦会議は、はたから見ればただのバカップルのイチャイチャで終わってしまった。
幸せだからいいかと思っていたけれど。

デートから屋敷に戻ったら、執事長のトーマスが玄関で待っていた。
え?なんで!?

「お嬢!首尾はいかがでしたか?」

「は?首尾って…なんの?」

「でーすーかーらー!!」

トーマスがイライラしてるけど意味がわからない。

「ヒューゴ様はいつ決闘を申し込まれると仰っていましたか?決闘はするのですよね!?」

怖い、怖い…圧が怖いっつーの!!

「いつかわからないけど、挑む気みたい。私は危ないからやめて欲しいけど…って、聞いてる!?」

トーマスは明らかに途中から聞いていない様子で、笛を吹き始めた。

ピーーッ

「プランA!!」

トーマスが叫ぶと、どこからかワラワラと使用人が現れ、「ラジャー!」と敬礼して消えていく。

「ちょっと、プランAって何?みんな何をするつもり!?」

強い口調でトーマスに問いかければ、しれっと答えが返ってきた。

「ヒューゴ様に決闘の意思があると判明しましたので、直ちに決闘場の準備を開始します」

はぁぁ!?
なんでそんな大事に?

「お嬢、諦めて下さい。ガルシアの娘の宿命ってやつです」

サリー、神妙な顔をしてるつもりらしいけど、口元が笑ってるからね?

マズイ、次回はもっと真面目に作戦会議に挑まねば!!












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