13 / 20
「推し」から「恋人」へ
しおりを挟む
恥ずかしいことを暴露させられて、もう息も絶え絶えの私……
今現在はヒューゴと隣り合わせで、図書館備え付けのテーブルセットの椅子に座っている。
近距離で向かい合うよりかはダメージは少ないが、肩が触れ合うほどくっ付いて座っている為、すでに体力も気力も瀕死状態の私にはこれでも十分きつい……
そして、私と対照的にヒューゴはすこぶる機嫌が良さそうだ。
なにゆえ?
鼻歌でも歌い出しそうなヒューゴに、なんだか段々腹が立ってきた。
のこのこデートに付いてきた私も悪いけど、なんで私ばかりが意味深に揶揄われて、恥ずかしい思いをさせられなきゃいけない訳?
閉じ込められて、前世のことや細マッチョ好きを白状させられて、これって理不尽じゃね?
そうだよ!一方的に攻撃されたままなんて、ガルシアの娘としてあるまじき姿!!
ここは戦闘一族の端くれとして、一矢報いねば気が済まぬ……
攻守交代じゃー!!
「ちょっとヒュー!!」
心の中でホラ貝が鳴り響き、「出陣じゃー!」とばかりに勢いこんでヒューゴに攻め込んだ。
…つもりだった。
「ん?どうした?ルー」
あまぁーーーい!!
ヒューゴの声も瞳も、何もかもが甘過ぎる!
え?どうしちゃったの!?
ダダ漏れの色気に酔いそうなんですけど……
「えーと、どうしたと言われましても、ヒューのほうこそ………えーい!もう!!ヒュー、あなた一体どういうつもり!?何を企んでるの?油断してた私が悪いから、煮て食おうが焼いて食おうがそっちの勝手だけどさー、攻めてくるならせめて目的をハッキリ…」
「え?食べていいの?じゃあドロドロに溶かして、グスグズにしてから食べようかな」
「ちがーう!!なんか卑猥に聞こえたんだけど、私の心が澱んでるせい?って、そうじゃなくて、ヒュー、さっきから揶揄うにしては度が過ぎてるよ。一体どうしちゃったの?もう訳がわからないんだけど!!」
私はもうパニックだ。
ヒューゴってこんなキャラだっけ?
しかしヒューゴは依然として冷静だ。
「ねえルー、俺がこの前ガルシア家に行った時のことを覚えてる?」
「え?それはもちろん覚えてるよ。まだそんな日も経ってないし。お父さんとお兄ちゃんの悪ノリにヒューが付き合ってくれた時ね」
そうだった、アレも冗談だと確認しとかなきゃ。
タスクが多いのにパニクってる場合ではない。
ビークール、私!!
「悪ノリに付き合ったつもりはない。俺はずっと本気だ。真面目にルーと結婚したいと思っている。ルーは嫌なのか?」
ほうほう、ヒューゴが本気で結婚を……
………………
……え?結婚!?
ヒューゴが私と結婚したいって言った!?
「う、嘘!!そんなの嘘だー!!だって、ヒュー、私のことなんて興味なかったじゃん。なんで急にそんなこと言うの?あ、家の為?」
推しにプロポーズをされてしまった。
でも私に好かれる要素があったとは思えない。
政略結婚のつもりなのだろうが、私は気持ちが伴わない結婚なんてしたくない……
悔しさに歯を食いしばって耐えていたら、ヒューゴが腕を伸ばしてテーブルに突っ伏した。
「嘘だろ?え?俺の気持ち全然通じてなかった?全部独りよがりだったのか!?」
ヒューゴが何か言っている。
腕で顔が見えないと思っていたら、片目でチラッとこちらを見た。
何、その角度もカッコいいとか狡い……
「ルーの察しが良くなったと思って油断してた…。前世の分も長く生きてる癖に鈍感すぎないか?まあ、ウブで益々可愛いが……」
ん?最後は聞き取れなかったけど、悪口言われてない?
散々気持ちを弄んだ挙げ句に悪口とは、私も怒るよ?
「ヒュー!!いくら政略結婚だからって、もう少しロマンチックに出来ない?」
ヒューゴがガバッと体勢を戻した。
「誰が政略だ!ルーが好きだから将軍にお願いしたに決まってるだろ!」
「だから、私のこと好きなんて嘘としか思えないって言ってるの!」
ヒートアップした私は、ドン!とテーブルを叩いてしまった。
「嘘じゃない!!確かに俺はずっと幼馴染みとして可愛がってきた。でも夜会で再会して以降、知的なことを言いながら態度は可愛いままのルーにやられっぱなしで、どうやって早く手に入れようかそればかり考えてきた。気のない女性をデートになど誘わないし、これでも態度で示してきたつもりだ!!」
こんな必死なヒューゴは見たことがなかった。
しかも、愛の告白にしか聞こえない。
おや?
もしかして『幼馴染み特権』で私に甘かったんじゃなくて、私が愛されてたってことなのでは?
うぇぇぇぇー!!
「そ、そんなの気付かなかったよ。私、脳筋じゃないところを見せたくて必死で」
「俺はルーとの会話が誰と話すより楽しいと気付いたんだ。ルーの口から生き生きと語られる新しい言葉や価値観に心を奪われた。ルーが『脳筋』だろうと構わないし、むしろ『脳筋』という言葉に愛着すら湧いてきている」
やめてーー!
ゲームのヒューゴ様に脳筋は似合わないから!!
テオドールだけでお腹いっぱいだから!!
…ヒロインがカイルルートに進んだなら、私もヒューゴと結ばれてもいいのかな?
もう『推し』っていう言葉で誤魔化さずに、本当に好きになっても許される?
「そっか。私の勘違いだったんだね。嘘だって決めつけてごめん」
「いや、俺もちゃんとルーに気持ちを伝えてから将軍に言えば良かった。外堀を埋めるようなことして悪かった」
「ううん。私、本当は嬉しかったの。でも期待して冗談だったら辛いから、信じちゃダメだって思って…。私もヒューが好き!ただの幼馴染みじゃなくて、ヒューに愛される唯一の女性になりたい!!」
ヒューゴをしっかり見つめた後、思い切って胸に飛び込んでみた。
この触れられる「推し」が、自分の愛する「恋人」になるのだと私自身に教え込むように……
座ったままだったから、体がちょっと捩れてるけど。
しっかり受け止めてくれたヒューゴが強く抱きしめ返してくれて、私は「異世界転生最高!」と胸の中で叫んでいた。
今現在はヒューゴと隣り合わせで、図書館備え付けのテーブルセットの椅子に座っている。
近距離で向かい合うよりかはダメージは少ないが、肩が触れ合うほどくっ付いて座っている為、すでに体力も気力も瀕死状態の私にはこれでも十分きつい……
そして、私と対照的にヒューゴはすこぶる機嫌が良さそうだ。
なにゆえ?
鼻歌でも歌い出しそうなヒューゴに、なんだか段々腹が立ってきた。
のこのこデートに付いてきた私も悪いけど、なんで私ばかりが意味深に揶揄われて、恥ずかしい思いをさせられなきゃいけない訳?
閉じ込められて、前世のことや細マッチョ好きを白状させられて、これって理不尽じゃね?
そうだよ!一方的に攻撃されたままなんて、ガルシアの娘としてあるまじき姿!!
ここは戦闘一族の端くれとして、一矢報いねば気が済まぬ……
攻守交代じゃー!!
「ちょっとヒュー!!」
心の中でホラ貝が鳴り響き、「出陣じゃー!」とばかりに勢いこんでヒューゴに攻め込んだ。
…つもりだった。
「ん?どうした?ルー」
あまぁーーーい!!
ヒューゴの声も瞳も、何もかもが甘過ぎる!
え?どうしちゃったの!?
ダダ漏れの色気に酔いそうなんですけど……
「えーと、どうしたと言われましても、ヒューのほうこそ………えーい!もう!!ヒュー、あなた一体どういうつもり!?何を企んでるの?油断してた私が悪いから、煮て食おうが焼いて食おうがそっちの勝手だけどさー、攻めてくるならせめて目的をハッキリ…」
「え?食べていいの?じゃあドロドロに溶かして、グスグズにしてから食べようかな」
「ちがーう!!なんか卑猥に聞こえたんだけど、私の心が澱んでるせい?って、そうじゃなくて、ヒュー、さっきから揶揄うにしては度が過ぎてるよ。一体どうしちゃったの?もう訳がわからないんだけど!!」
私はもうパニックだ。
ヒューゴってこんなキャラだっけ?
しかしヒューゴは依然として冷静だ。
「ねえルー、俺がこの前ガルシア家に行った時のことを覚えてる?」
「え?それはもちろん覚えてるよ。まだそんな日も経ってないし。お父さんとお兄ちゃんの悪ノリにヒューが付き合ってくれた時ね」
そうだった、アレも冗談だと確認しとかなきゃ。
タスクが多いのにパニクってる場合ではない。
ビークール、私!!
「悪ノリに付き合ったつもりはない。俺はずっと本気だ。真面目にルーと結婚したいと思っている。ルーは嫌なのか?」
ほうほう、ヒューゴが本気で結婚を……
………………
……え?結婚!?
ヒューゴが私と結婚したいって言った!?
「う、嘘!!そんなの嘘だー!!だって、ヒュー、私のことなんて興味なかったじゃん。なんで急にそんなこと言うの?あ、家の為?」
推しにプロポーズをされてしまった。
でも私に好かれる要素があったとは思えない。
政略結婚のつもりなのだろうが、私は気持ちが伴わない結婚なんてしたくない……
悔しさに歯を食いしばって耐えていたら、ヒューゴが腕を伸ばしてテーブルに突っ伏した。
「嘘だろ?え?俺の気持ち全然通じてなかった?全部独りよがりだったのか!?」
ヒューゴが何か言っている。
腕で顔が見えないと思っていたら、片目でチラッとこちらを見た。
何、その角度もカッコいいとか狡い……
「ルーの察しが良くなったと思って油断してた…。前世の分も長く生きてる癖に鈍感すぎないか?まあ、ウブで益々可愛いが……」
ん?最後は聞き取れなかったけど、悪口言われてない?
散々気持ちを弄んだ挙げ句に悪口とは、私も怒るよ?
「ヒュー!!いくら政略結婚だからって、もう少しロマンチックに出来ない?」
ヒューゴがガバッと体勢を戻した。
「誰が政略だ!ルーが好きだから将軍にお願いしたに決まってるだろ!」
「だから、私のこと好きなんて嘘としか思えないって言ってるの!」
ヒートアップした私は、ドン!とテーブルを叩いてしまった。
「嘘じゃない!!確かに俺はずっと幼馴染みとして可愛がってきた。でも夜会で再会して以降、知的なことを言いながら態度は可愛いままのルーにやられっぱなしで、どうやって早く手に入れようかそればかり考えてきた。気のない女性をデートになど誘わないし、これでも態度で示してきたつもりだ!!」
こんな必死なヒューゴは見たことがなかった。
しかも、愛の告白にしか聞こえない。
おや?
もしかして『幼馴染み特権』で私に甘かったんじゃなくて、私が愛されてたってことなのでは?
うぇぇぇぇー!!
「そ、そんなの気付かなかったよ。私、脳筋じゃないところを見せたくて必死で」
「俺はルーとの会話が誰と話すより楽しいと気付いたんだ。ルーの口から生き生きと語られる新しい言葉や価値観に心を奪われた。ルーが『脳筋』だろうと構わないし、むしろ『脳筋』という言葉に愛着すら湧いてきている」
やめてーー!
ゲームのヒューゴ様に脳筋は似合わないから!!
テオドールだけでお腹いっぱいだから!!
…ヒロインがカイルルートに進んだなら、私もヒューゴと結ばれてもいいのかな?
もう『推し』っていう言葉で誤魔化さずに、本当に好きになっても許される?
「そっか。私の勘違いだったんだね。嘘だって決めつけてごめん」
「いや、俺もちゃんとルーに気持ちを伝えてから将軍に言えば良かった。外堀を埋めるようなことして悪かった」
「ううん。私、本当は嬉しかったの。でも期待して冗談だったら辛いから、信じちゃダメだって思って…。私もヒューが好き!ただの幼馴染みじゃなくて、ヒューに愛される唯一の女性になりたい!!」
ヒューゴをしっかり見つめた後、思い切って胸に飛び込んでみた。
この触れられる「推し」が、自分の愛する「恋人」になるのだと私自身に教え込むように……
座ったままだったから、体がちょっと捩れてるけど。
しっかり受け止めてくれたヒューゴが強く抱きしめ返してくれて、私は「異世界転生最高!」と胸の中で叫んでいた。
210
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。
倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。
でも、ヒロイン(転生者)がひどい!
彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉
シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり!
私は私の望むままに生きます!!
本編+番外編3作で、40000文字くらいです。
⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。
【完結】夜会で借り物競争をしたら、イケメン王子に借りられました。
櫻野くるみ
恋愛
公爵令嬢のセラフィーナには生まれつき前世の記憶があったが、覚えているのはくだらないことばかり。
そのどうでもいい知識が一番重宝されるのが、余興好きの国王が主催する夜会だった。
毎年余興の企画を頼まれるセラフィーナが今回提案したのは、なんと「借り物競争」。
もちろん生まれて初めての借り物競争に参加をする貴族たちだったが、夜会は大いに盛り上がり……。
気付けばセラフィーナはイケメン王太子、アレクシスに借りられて、共にゴールにたどり着いていた。
果たしてアレクシスの引いたカードに書かれていた内容とは?
意味もなく異世界転生したセラフィーナが、特に使命や運命に翻弄されることもなく、王太子と結ばれるお話。
とにかくツッコミどころ満載のゆるい、ハッピーエンドの短編なので、気軽に読んでいただければ嬉しいです。
完結しました。
小説家になろう様にも投稿しています。
小説家になろう様への投稿時から、タイトルを『借り物(人)競争』からただの『借り物競争』へ変更いたしました。
【完結】攻略を諦めたら騎士様に溺愛されました。悪役でも幸せになれますか?
うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
メイリーンは、大好きな乙女ゲームに転生をした。しかも、ヒロインだ。これは、推しの王子様との恋愛も夢じゃない! そう意気込んで学園に入学してみれば、王子様は悪役令嬢のローズリンゼットに夢中。しかも、悪役令嬢はおかめのお面をつけている。
これは、巷で流行りの悪役令嬢が主人公、ヒロインが悪役展開なのでは?
命一番なので、攻略を諦めたら騎士様の溺愛が待っていた。
【完結】貧乏子爵令嬢は、王子のフェロモンに靡かない。
櫻野くるみ
恋愛
王太子フェルゼンは悩んでいた。
生まれつきのフェロモンと美しい容姿のせいで、みんな失神してしまうのだ。
このままでは結婚相手など見つかるはずもないと落ち込み、なかば諦めかけていたところ、自分のフェロモンが全く効かない令嬢に出会う。
運命の相手だと執着する王子と、社交界に興味の無い、フェロモンに鈍感な貧乏子爵令嬢の恋のお話です。
ゆるい話ですので、軽い気持ちでお読み下さいませ。
【完結】断りに行ったら、お見合い相手がドストライクだったので、やっぱり結婚します!
櫻野くるみ
恋愛
ソフィーは結婚しないと決めていた。
女だからって、家を守るとか冗談じゃないわ。
私は自立して、商会を立ち上げるんだから!!
しかし断りきれずに、仕方なく行ったお見合いで、好みど真ん中の男性が現れ・・・?
勢いで、「私と結婚して下さい!」と、逆プロポーズをしてしまったが、どうやらお相手も結婚しない主義らしい。
ソフィーも、この人と結婚はしたいけど、外で仕事をする夢も捨てきれない。
果たして悩める乙女は、いいとこ取りの人生を送ることは出来るのか。
完結しました。
【完結】氷の王太子に嫁いだら、毎晩甘やかされすぎて困っています
22時完結
恋愛
王国一の冷血漢と噂される王太子レオナード殿下。
誰に対しても冷たく、感情を見せることがないことから、「氷の王太子」と恐れられている。
そんな彼との政略結婚が決まったのは、公爵家の地味な令嬢リリア。
(殿下は私に興味なんてないはず……)
結婚前はそう思っていたのに――
「リリア、寒くないか?」
「……え?」
「もっとこっちに寄れ。俺の腕の中なら、温かいだろう?」
冷酷なはずの殿下が、新婚初夜から優しすぎる!?
それどころか、毎晩のように甘やかされ、気づけば離してもらえなくなっていた。
「お前の笑顔は俺だけのものだ。他の男に見せるな」
「こんなに可愛いお前を、冷たく扱うわけがないだろう?」
(ちょ、待ってください! 殿下、本当に氷のように冷たい人なんですよね!?)
結婚してみたら、噂とは真逆で、私にだけ甘すぎる旦那様だったようです――!?
悪役令嬢に転生したので、推しキャラの婚約者の立場を思う存分楽しみます
下菊みこと
恋愛
タイトルまんま。
悪役令嬢に転生した女の子が推しキャラに猛烈にアタックするけど聖女候補であるヒロインが出てきて余計なことをしてくれるお話。
悪役令嬢は諦めも早かった。
ちらっとヒロインへのざまぁがありますが、そんなにそこに触れない。
ご都合主義のハッピーエンド。
小説家になろう様でも投稿しています。
うっかり結婚を承諾したら……。
翠月るるな
恋愛
「結婚しようよ」
なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。
相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。
白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。
実際は思った感じではなくて──?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる