【完結】転生したら脳筋一家の令嬢でしたが、インテリ公爵令息と結ばれたので万事OKです。

櫻野くるみ

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インテリ公爵令息との結婚

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本日は晴天なり。

準備期間の半年なんぞはあっという間に過ぎ去り、結婚式当日を迎えてしまった。早っ!!

始めは招待客など細かく打ち合わせていたのだが、どんどん規模が大きくなり、他国の要人が加わるわ、領地の騎士達まで参加したがるわで、早々に考えるのをやめた。

もはや「来たい人は誰でもウェルカム!!」状態で、来るもの拒まず精神でいくことにしたのである。
考えて見れば、警護や隠密行動はお手のものの両家。
きっとうまくやるに違いない。
問題は私のメンタルである。

もう諦めてたけどさ、なんじゃこの派手さは!
パレードってナニ!?
私は皇室でも、オリンピックメダリストでもないんですけどー!!

根が日本の一般市民の私は、まな板の上の鯉の気分で全てがされるがままである。
今日は王都の大聖堂で式を挙げ、馬車に乗ってパレードをし、城の広間で披露宴を行う予定だ。

「お嬢!綺麗ですよ!!ドレスの裾を踏んで転んだら笑ってあげます」

おい、不吉なことを言うな!
今まさにやりそうだなーって自分で思ってたところに!!

侍女のサリーは相変わらずで、結婚後はコックス家に来てくれるらしい。
絶対コックスで浮くと思うけど。


扉が開かれ、大聖堂に作られたバージンロードの先にヒューゴが立っていた。
白を基調としたタキシードを着ているヒューゴは、ヴェール越しでも神々しいくらいに輝いている。

うわっ、麗しさに目が眩みそうなんですけど!
やっぱ品のある顔だし、きちんとした格好がサマになるんだよね。
ウェストコートってなんであんなにそそられるんだろ。
細マッチョにウェストコートって、エロくて最高!!

くだらないことを考えていたおかげで、緊張することも転ぶこともなくバージンロードを進み、無事ヒューゴの前までやって来た。

「ルー、とても綺麗だ……」

感嘆したようなヒューゴの声が聞こえ、満足してもらえたことに安堵する。

「ヒューも最高にカッコいいよ」

コソッと囁くと、クスっと笑ったのが繋いだ腕から伝わった。


式は順調に進んだ。
途中までは……

誓いのキスの場面で、ヴェールを挙げられた瞬間、ふと参列者の中に見知った顔を発見してしまったのである。
 
あ!あれって、『イケ夢』の攻略対象の王太子?
しかも、お隣も対象の隣国の王子じゃん!
うわ、顔見たら思い出した!!
一気に2人も見ちゃった!!

最近はすっかり忘れていたが、ゲームの関係者が突然2人も視界に入り、私は式の最中なのにそちらに意識を奪われてしまっていた。

「ルー?何を見て、何を考えているのかな?」

ヤバイ!!

目の前に意識を戻したら、笑顔で黒いオーラを発するヒューゴがいた。

「え?なんでもないヨ?」

語尾が怪しくなりながらも、なんとか笑顔で答えたが……

「せっかく会わせないようにしてきたのに。まだ俺以外にも興味があるとはね。お仕置きだな」

私の頭の後ろにヒューゴの手のひらが置かれ、動揺している内に唇が奪われていた。

むぐっ!! 

ん……

え、長くね?
普通はチュッで終わるはずじゃ?
なんでこんな長く…うわ、舌まで入ってきた!!

「ちょっ、ヒュー…待っ……ん」

参列者からどよめきと悲鳴が上がっている。
ヒューゴは普段クールだと思われている為、当然の反応だ。

大勢の前で深いキスを延々とされ、涙目で抵抗するが、ヒューゴは止めてくれない。
胸をポカポカ弱々しく叩いていたら、聞き慣れた大きな声が響いた。

「ヒューゴ!俺の娘に何しやがる!!」

「そうだ!可愛いルーにひどいぞ!表に出ろ!!」

父と兄が剣を持って怒っていた。
騎士達まで二人の周りを固めている。
結婚式なのになんだか物騒なことになってしまった。

ようやく口付けを解いたヒューゴは、不敵な笑みで父を見返している。

これ、まずくない?
なんかコックスの隠密が影で動き始めた気が…
このままじゃ、両家の争い勃発!?

私がハラハラしていると。

「ルー、この場を納めるにはどうしたらいいと思う?」

ヒューゴが自分の唇をトントンと指し示しながら言った。

え、私からキスしろっていうこと!?
そんなこと出来ないよ!!
さっきのがファーストキスだったのに、2回目で私からってハードル高くね?

しっかし、女は度胸!
ここはヒューゴの唇をパクッといただいてしまいましょう。

チュッ

大胆にいくつもりが、結局は唇が触れ合うくらいの軽いキスになってしまった。
やっぱり恋愛経験が皆無だった私には大人のキスは難しい。

上目遣いで恥ずかしさに悶えながらヒューゴを見ると、蕩けそうな顔で私を見ていた。

「ルーからのキス、嬉しいよ。全然足りないけど」

再びヒューゴが私に覆い被さり、キスを始めた。

また!?
今はキスしてる場合じゃないんじゃ?
両家の様子は……

杞憂だった。

「いいぞー!もっとやれー!!」

「お嬢!お幸せにー!!」

大聖堂が歓声で沸いていた。
父と兄も感慨深そうに頷いて拍手をしている。

なんなんだ、この茶番は!!

そして私は暫くキスから逃れられないのだった。


夜、私達の屋敷へと帰ってきた。
ちなみに新しく建てた2人の新居は、私が設計したものだ。
前世で空間デザインを勉強していたことを話したら、ヒューゴが「じゃあ好きにしていいよ」と言ってくれたのである!
ヒューゴ、神!!

つい狭小住宅の発想で、中二階や動線へのこだわり、収納の確保に気を取られていたら、貴族にあるまじきコンパクトな屋敷になってしまった。
もちろん客室や図書室、広間もあるのだが、使用頻度の高い部屋をギュッとまとめてみたら、驚くほどヒューゴに好評だった。
移動時間の短縮になるのはもちろん、私を身近に感じられるかららしい。
しかも中二階方式は視界が良く、警護がしやすかったり、収納のつもりのスペースに隠密が隠れられるという長所があるらしい。

「ルイーザちゃん、素晴らしいわ!!うちも建て直しましょうよ」

ヒューゴママも気に入り、冗談で回転する扉とか、視覚を惑わせる部屋、抜け道、落とし穴などからくり屋敷のことを話してみたら、本当に忍者屋敷を建てることになってしまった。
まさか転生して忍者屋敷の設計をすることになるとは、人生ってわからないものだ。


「ルー、疲れた?」

お風呂を済ませ、寝室に入るとヒューゴが気遣ってくれる。
でもなんだか様子がおかしい。

「ヒューこそ疲れてるんじゃないの?それとも怒ってる?」

私が尋ねると、ヒューゴは私をサッと横抱きにしてベッドへと連れて行った。
突然のお姫様抱っこと、これから先の展開に胸を高鳴らせていた私だったが……

「お仕置きがまだ終わってなかったからな。ルーがもう二度と俺以外の攻略対象者を見ないように、俺の愛を注がないと」

ひえーーっ!
なんでヒューゴがヤンデレ気味に!?
ゲームではヤンデレはカイルだけで、ヒューゴ様は普通に溺愛キャラだったのに!!

私の疑問が顔に出ていたのか、ヒューゴがフッと笑った。
少し濡れたままの髪がセクシーに見える。

「前のルーなら心配なかったが、今のルーは魅力的過ぎて不安になる。諦めて愛されてくれ」

私のせい?
私が頑張ってインテリ目指した結果がコレ!?

結局、愛が重くなったヒューゴに抱き潰されてしまったのだった。
でも細マッチョは最高だった……


10年後。

私とヒューゴはおしどり夫婦として有名だ。
子供は9歳の長男、8歳の長女、3歳の次男の3人で、子煩悩なヒューゴは子供を溺愛している。
もちろん私のことも。

「おーい、遊びに来たぞー!!」

兄のテオドールはお菓子を持って度々やってくる。
最近は戦略を一緒に立てるようになったのだ。
相変わらず独身だが。

「テオおじさんありがとう!カステラおばさんのクッキーだ!!」

喜ぶ長男に、トコトコやって来た赤茶色の髪をした次男が、両手に持てるだけのチョコチップクッキーを掴み、逃げた。

「あ、またチョコチップだけ持って!」

咎めながらも、ダークブルーの髪をした長男と長女は弟を笑っている。
ヒューゴとテオドールも、「ルーの小さい時と同じだな」と大笑いだ。

ガルシアの血を色濃く受け継ぐ次男は、もしかして騎士になるかもしれない。

「いつまでもそうやって笑うんだから!!」

怒ったふりをしながらも、私は幸せを噛み締めている。
いつまでもこの平和が続きますように、心の中で祈っていた。







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