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さよならをいう前に
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『大きな犠牲を伴う理想は、叶えるに値しない。
どれだけ尊く確かな理想でも、身を捧げなければならないと思わせるものは避けるべきである。
できるだけ背負わない。背負いざるを得なくとも、その責任から少しずつ距離を置くこと。
自分の勇気をその方向へ向けるだけの力が、必要なのだ』
嫌になるほど物書きを続けて、ようやく一つの結論へ着きました。
きっと、誰にでも実行できる結論ではありません。押し潰される者もいるのでしょう。
それでも、人間が本当に断定すべきなのは責任を持つことではなく、責任から距離を置くことなのでしょう。
少なくとも、その必要性に対して頷くのを恐れないことです。
私はここで、もっと自分自身のことを気にかけてやらねばなりません。
自分の理性や感情でもなく、また頭でも体でもなく、自分という存在を見つめ直すのです。
できるだけ見落としがないように、静かに観察することです。
何でも納得しきらない人間でした。頭の中で次から次へと問いが浮かび、明確な答えを求める人間でした。
神経質で、扱いにくく、手間のかかる人間だと思います。でも、そんな形容詞はどれも表面的なものです。
自分を犠牲にしてでも見つけたいことがあり、その先の世界に魅了されてしまった。私はそんな人間なのです。
何でも知った気になりたくありませんでした。知りたいことが山ほどあり、その意欲に終止符を打つのが嫌だったのです。
問い続けることに自分の役目を感じていたからです。それを純粋な好奇心などと言って自分の本能に還元したくはありません。
私はまた疲れやすい、疲れを感じやすい人間でした。
心の隅で、疲れを見逃したくないという思いが常にありました。自己犠牲によって疲れを無視してしまうこともままありましたが、それでも疲れを隠しきらない人間でした。
嘘をつくのが嫌で、捨てても良いものを捨てきれず、一人で葛藤することが多い人間でした。
意思はあるが、現実に打ちのめされる。その状況に対して感情的になり、衝動に走る。そんな人間です。
本当に価値があると思うものについては、言いません。
口にするのが怖いからではありません。その存在や性質がそのままでいられるように守りたいからです。野ざらしにしたくないからです。
周りは過剰防衛で警戒心が強いと言うかもしれません。それでも、自分の存在に対して必要以上の加工は求めません。
自分の手の上に乗っかった原石をそのまま転がしているのが楽しいからです。その手触りだけが私を私たらしめるからです。
やはり、一人の人間について表しきるのは難しいことです。
表現が難しいというのは、自分が難しいと言い続ける姿勢でいたいからでしょう。その考え方が今の私には心地が良いです。
慎重でいたいです。物事を静かに観察し、良さと悪さを見極め、本質を見つめ続けていたいです。
自分が安心するために。その世界に確かな居場所を見出だすために。
私という存在は、今の私の言葉を信頼してくれるでしょうか。私の肩に寄り添ってくれるでしょうか。
物を書いたという実感があります。自分はこうしていたい、これを大事にしていたいというものに、輪郭を与えられたような気がします。
責任を背負っているのではありません。自分が感じていたものに存在を与えただけです。
自分で自分を書いているのだなという実感があります。それ以外の感情は、きっと紛い物で毒です。
もう何も言いたくありません。付け足したくありません。
自分が自分であるために、これ以上の負荷を背負わせないために、自分という存在を見失わないために、あらゆる要求を拒絶しようと思います。
物書きという果てのない世界に対して、添えておきます。感謝と軽蔑と哀愁を込めて、表します。
もっと言いたいことはあったのかもしれません。終わらせるのは早計かもしれません。それでも、今までのように思い悩んで破滅するよりもずっと大事なことです。
さよならをいう前に言うことは、きっと多いよりも少ない方が良いのです。
全てを大事にしまい込もうとしたその世界に、さようなら。溢れ出してしまったその世界と、それを受け止めようとしたその世界に、さようなら。
目の前には、あなたが本当に感じていたいと思う世界が広がっている。その中で、その世界で自分を広げてみてください。
それが、あなたが私に言いたかった、今までずっと胸の奥にしまい込んでいたメッセージです。
それが、あなたが本当に大切にしようとしているものです。大切にしていたいと強く感じ、自分の目で確かな存在だと認められるものです。
どれだけ尊く確かな理想でも、身を捧げなければならないと思わせるものは避けるべきである。
できるだけ背負わない。背負いざるを得なくとも、その責任から少しずつ距離を置くこと。
自分の勇気をその方向へ向けるだけの力が、必要なのだ』
嫌になるほど物書きを続けて、ようやく一つの結論へ着きました。
きっと、誰にでも実行できる結論ではありません。押し潰される者もいるのでしょう。
それでも、人間が本当に断定すべきなのは責任を持つことではなく、責任から距離を置くことなのでしょう。
少なくとも、その必要性に対して頷くのを恐れないことです。
私はここで、もっと自分自身のことを気にかけてやらねばなりません。
自分の理性や感情でもなく、また頭でも体でもなく、自分という存在を見つめ直すのです。
できるだけ見落としがないように、静かに観察することです。
何でも納得しきらない人間でした。頭の中で次から次へと問いが浮かび、明確な答えを求める人間でした。
神経質で、扱いにくく、手間のかかる人間だと思います。でも、そんな形容詞はどれも表面的なものです。
自分を犠牲にしてでも見つけたいことがあり、その先の世界に魅了されてしまった。私はそんな人間なのです。
何でも知った気になりたくありませんでした。知りたいことが山ほどあり、その意欲に終止符を打つのが嫌だったのです。
問い続けることに自分の役目を感じていたからです。それを純粋な好奇心などと言って自分の本能に還元したくはありません。
私はまた疲れやすい、疲れを感じやすい人間でした。
心の隅で、疲れを見逃したくないという思いが常にありました。自己犠牲によって疲れを無視してしまうこともままありましたが、それでも疲れを隠しきらない人間でした。
嘘をつくのが嫌で、捨てても良いものを捨てきれず、一人で葛藤することが多い人間でした。
意思はあるが、現実に打ちのめされる。その状況に対して感情的になり、衝動に走る。そんな人間です。
本当に価値があると思うものについては、言いません。
口にするのが怖いからではありません。その存在や性質がそのままでいられるように守りたいからです。野ざらしにしたくないからです。
周りは過剰防衛で警戒心が強いと言うかもしれません。それでも、自分の存在に対して必要以上の加工は求めません。
自分の手の上に乗っかった原石をそのまま転がしているのが楽しいからです。その手触りだけが私を私たらしめるからです。
やはり、一人の人間について表しきるのは難しいことです。
表現が難しいというのは、自分が難しいと言い続ける姿勢でいたいからでしょう。その考え方が今の私には心地が良いです。
慎重でいたいです。物事を静かに観察し、良さと悪さを見極め、本質を見つめ続けていたいです。
自分が安心するために。その世界に確かな居場所を見出だすために。
私という存在は、今の私の言葉を信頼してくれるでしょうか。私の肩に寄り添ってくれるでしょうか。
物を書いたという実感があります。自分はこうしていたい、これを大事にしていたいというものに、輪郭を与えられたような気がします。
責任を背負っているのではありません。自分が感じていたものに存在を与えただけです。
自分で自分を書いているのだなという実感があります。それ以外の感情は、きっと紛い物で毒です。
もう何も言いたくありません。付け足したくありません。
自分が自分であるために、これ以上の負荷を背負わせないために、自分という存在を見失わないために、あらゆる要求を拒絶しようと思います。
物書きという果てのない世界に対して、添えておきます。感謝と軽蔑と哀愁を込めて、表します。
もっと言いたいことはあったのかもしれません。終わらせるのは早計かもしれません。それでも、今までのように思い悩んで破滅するよりもずっと大事なことです。
さよならをいう前に言うことは、きっと多いよりも少ない方が良いのです。
全てを大事にしまい込もうとしたその世界に、さようなら。溢れ出してしまったその世界と、それを受け止めようとしたその世界に、さようなら。
目の前には、あなたが本当に感じていたいと思う世界が広がっている。その中で、その世界で自分を広げてみてください。
それが、あなたが私に言いたかった、今までずっと胸の奥にしまい込んでいたメッセージです。
それが、あなたが本当に大切にしようとしているものです。大切にしていたいと強く感じ、自分の目で確かな存在だと認められるものです。
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