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第一章 死神は愛の包囲網から逃げられない
1.熱い視線と、ちょっと危ない距離
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深夜のコンビナート地区。
オレンジ色の炎が夜空を舐め、黒煙が渦を巻いている。
「ハハハ! 燃えろ、燃え尽きるがいい!この破壊の炎こそ、我ら『デッド・エンド』からの贈り物だ!」
コンテナの山の上に立ち、俺……シャドウは高らかに笑った。
マントを大きく広げ、これでもかというほど悪役っぽいポーズを決め。我ながら完璧だ。
……よし。
これで周囲の避難は完了。
爆破したのは、老朽化して解体予定だった倉庫だけ。被害ゼロ。むしろ行政的にはプラスだ。
胸が高鳴る。恐怖じゃない。
早く帰りたいという、切実な理由で。
潜入捜査官としてこの悪の組織に入り込んで三年。胃薬と一緒に生きながら、「冷酷な死神」というポジションを必死で守ってきた。
今日の任務は、ヒーローを引きつけること。その間に、別の班が動く。つまり俺は、ここで派手にやり合ってるフリをすればいい。
「……そろそろ来るはずだ。正義の味方が」
魔剣の柄に手をかけた、その瞬間。夜空を切り裂いて一筋の眩い光が舞い降りた。
「そこまでだ、シャドウさん!」
耳に突き刺さる、やけに爽やかな声。
正義のヒーロー、ルミエールこと天道光希(てんどう・こうき)。
彼はコンテナからコンテナへ軽やかに跳び、俺の前に着地する。 白銀のスーツが炎を映し、無駄に神々しい。
来た! 待ってたよルミエール!
さあ、適当に数回切り結んで、俺に逃げ口上を言わせてくれ。
「ふん。また貴様か。しつこい光の犬め。今夜こそ、その眩しいツラを絶望で――」
言い切る前に……ルミエールが一気に距離を詰めてきた。速い。でも殺気が、ない。ガキンッ、と硬い音が響く。剣と剣がぶつかり、火花が散った。
俺たちは、ほとんど密着する距離で睨み合う。いいぞ。このまま……そう思った、次の瞬間。ルミエールが、ふっと俺の首元に顔を寄せてきた。
「シャドウさん。今日のマント、素材変えました?」
「……は?」
「前より毛足が長い。しっとりしてる。 裏地のサテンも高級品ですね。さっきすれ違ったとき、少し触れましたけど……」
耳元で、囁く。
「撫で心地、最高でした」
甘くて、熱い吐息。その一言で、俺の頭の中の作戦図が全部吹き飛んだ。
「貴様……戦えぇえええええ!」
「あ、怒った顔もいい」
ルミエールは本気で嬉しそうに微笑む。
「今日のリップ、色味を抑えてますよね?炎に映えるように計算したんですか?」
剣を合わせたまま、目だけが俺をなぞる。
「さすが僕のシャドウさん。美意識、高すぎる……!」
その瞳は、燃え盛る炎よりも熱くて、そして逃げ場のない粘着質な光を宿していた。
待って……今、『僕の』って言わなかったか?ていうか、戦闘中におれのチェックするな!三年分の潜入キャリアが、音を立てて崩れそうなんだが!?
剣を交えたまま、俺は心底思った。
この任務。悪の組織よりも、この男の方がよっぽど危険だ。
オレンジ色の炎が夜空を舐め、黒煙が渦を巻いている。
「ハハハ! 燃えろ、燃え尽きるがいい!この破壊の炎こそ、我ら『デッド・エンド』からの贈り物だ!」
コンテナの山の上に立ち、俺……シャドウは高らかに笑った。
マントを大きく広げ、これでもかというほど悪役っぽいポーズを決め。我ながら完璧だ。
……よし。
これで周囲の避難は完了。
爆破したのは、老朽化して解体予定だった倉庫だけ。被害ゼロ。むしろ行政的にはプラスだ。
胸が高鳴る。恐怖じゃない。
早く帰りたいという、切実な理由で。
潜入捜査官としてこの悪の組織に入り込んで三年。胃薬と一緒に生きながら、「冷酷な死神」というポジションを必死で守ってきた。
今日の任務は、ヒーローを引きつけること。その間に、別の班が動く。つまり俺は、ここで派手にやり合ってるフリをすればいい。
「……そろそろ来るはずだ。正義の味方が」
魔剣の柄に手をかけた、その瞬間。夜空を切り裂いて一筋の眩い光が舞い降りた。
「そこまでだ、シャドウさん!」
耳に突き刺さる、やけに爽やかな声。
正義のヒーロー、ルミエールこと天道光希(てんどう・こうき)。
彼はコンテナからコンテナへ軽やかに跳び、俺の前に着地する。 白銀のスーツが炎を映し、無駄に神々しい。
来た! 待ってたよルミエール!
さあ、適当に数回切り結んで、俺に逃げ口上を言わせてくれ。
「ふん。また貴様か。しつこい光の犬め。今夜こそ、その眩しいツラを絶望で――」
言い切る前に……ルミエールが一気に距離を詰めてきた。速い。でも殺気が、ない。ガキンッ、と硬い音が響く。剣と剣がぶつかり、火花が散った。
俺たちは、ほとんど密着する距離で睨み合う。いいぞ。このまま……そう思った、次の瞬間。ルミエールが、ふっと俺の首元に顔を寄せてきた。
「シャドウさん。今日のマント、素材変えました?」
「……は?」
「前より毛足が長い。しっとりしてる。 裏地のサテンも高級品ですね。さっきすれ違ったとき、少し触れましたけど……」
耳元で、囁く。
「撫で心地、最高でした」
甘くて、熱い吐息。その一言で、俺の頭の中の作戦図が全部吹き飛んだ。
「貴様……戦えぇえええええ!」
「あ、怒った顔もいい」
ルミエールは本気で嬉しそうに微笑む。
「今日のリップ、色味を抑えてますよね?炎に映えるように計算したんですか?」
剣を合わせたまま、目だけが俺をなぞる。
「さすが僕のシャドウさん。美意識、高すぎる……!」
その瞳は、燃え盛る炎よりも熱くて、そして逃げ場のない粘着質な光を宿していた。
待って……今、『僕の』って言わなかったか?ていうか、戦闘中におれのチェックするな!三年分の潜入キャリアが、音を立てて崩れそうなんだが!?
剣を交えたまま、俺は心底思った。
この任務。悪の組織よりも、この男の方がよっぽど危険だ。
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