『悪の幹部ですが、正義のヒーローの愛が重すぎて殉職しそうです』

るみ乃。

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第一章 死神は愛の包囲網から逃げられない

2.愛という名の、精神攻撃

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 剣と剣が噛み合い、火花が夜を裂く。
 遠目には、正義と悪が命を懸けて激突しているように見えるはずだ。

 実際は、全然違う。

「離れろ、この変態ヒーロー……っ!」

 俺は魔剣に力を込め、低く唸った。
 だがルミエールは余裕の表情でそれを受け流し、
 次の瞬間、俺の手首に指をかけてきた。

「変態は心外ですね。ただの観察力ですよ」

 軽い。剣を合わせているはずなのに、
 動きはまるでダンスだ。
 主導権を奪うように、
 彼は自然に距離を詰めてくる。

 俺は舌打ちし、
 マントを翻して離れようとしたけど……
 無駄だった。

「逃がしません」

 囁く声と同時に、懐へ滑り込まれる。

「今日の香り……ベルガモットですね。
 冷静なシャドウさんらしい。でも……」

 鼻先が、首元に近づく。

「動いた後の体温と混ざると、すごく色っぽい」

 最悪だ……

 潜入捜査官として、
 想定訓練は一通り受けてきた。
 拷問、脅迫、洗脳。でも……
「敵ヒーローに耳元で匂いを評価される」
 ケースは想定外。

「おい! 世界を救うのが貴様の役目だろ!」

 必死に悪役らしい台詞を吐き、剣を振り下ろす。
 殺気を込めた一撃―の、はずだった。

 だがルミエールは紙一重でかわし、
 空いた俺の左手を取った。
 指と指が、絡む。

「世界より、あなたです」

 熱が伝わる。
 グローブ越しでも分かるほど、異様に熱い。

「僕が守りたいのは、
 “シャドウ”という存在だけ」

 顔が近い。バイザーの奥から、
 粘つくような視線を感じる。

「動悸、速いですね」
「……僕に、ときめいてます?」
「ばか、殺意だ!!」

 俺は無理やり手を振り払い、
 コンテナの影へ跳んだ。
 心臓がうるさい。理性が削られる。

 落ち着け……俺は冷酷な悪の幹部、
 少し甘い匂いがするだけの、悪の死神だ

 誰のせいでそんな設定ついたと思ってる。

 俺は奥歯を噛み、
 予備の爆薬リモコンを握りしめた。
 指が震える。
 これは、愛という名の、精神攻撃だ。
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