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気になる人とお食事
しおりを挟む金曜日の夜。
今日は健司さんと食事の日。
大人っぽいシックなワンピースを着て、私は待ち合わせのレストランで待っていた。
仕事も予定通り終わったし、いい感じだ。
今日はどんな話をしようかな。
健司さんは映画を見るのが趣味だって言ってたから、おススメの映画を聞いたりとか、今やってる映画の話しとかも出来たらいいな。
そんなことを楽しみに、健司さんが予約してくれたレストラン【シャルドネ】の前で待っていた。
窓ガラス越しに店内を見る。
カジュアルなイタリアン料理のお店で、店内はにぎわっている。
仕事終わりだからお腹すいちゃった。
健司さんが来るのを待っていると急に冷え込んできた。
「寒……っ」
早く入りたいな。
でもお店の前で待ち合わせって約束だったし……。
健司さんは待っていても来ない。
さらに15分ほど待ってみるけれど……。
「来ないな」
待ち合わせ時間を20分過ぎている。
それでも健司さんは姿を現さなかった。
仕事押してるのかな。
でも連絡入ってないや……。
スマホにはなんの連絡もない。
急いで向かっているのかもしれない。
私はもうしばらく待ってみることにした。
しかし。
待ち合わせから40分。
健司さんが来ることはなかった。
メールをしてみても既読にすらならない。
何かあったのかな……。
事故とかにあってなければいいけど……。
お店の人には申し訳ないのでレストランの予約はキャンセルしてもらうことに。
もう少しだけ、待ってみよう。
どうしてなんの連絡も付かないんだろう。
その時、一瞬過去のことが頭をよぎった。
『来なかったな……石井くん』
いつもそうなんだ。
上手くいってると思っていたら、パッタリと連絡がとれなくなることがある。
大学生の時だって、いい感じになった人と食事に行く約束をした時、当日に連絡がつかなくなったことが何度もあった。
今回もまた……?
でも今回は結衣ちゃんの友達だ。
とても誠実で真面目な人だって聞いてるから、何か連絡がとれないトラブルがあったんだと信じたい。
それからさらに1時間半。
私は待ち続けたけれど、けっきょく健司さんが現れることはなかった。
「来なかった……」
もう、帰ろう。
寒い中待っていたためか、手が冷え切ってしまっていた。
何も食べていないから、お腹もすいたまま。
家に帰ったら、自分で用意しないと……。
そう思ったけれど、頭がまわらなかった。
どうして来てくれなかったんだろう。
もし嫌になったのであれば、一言でもいいから連絡をくれたらいいのに。
そんな連絡をするのも面倒なくらい、どうでも良かったのかな。
「はぁ……帰ろう」
けっきょく私は何も買うことなく自宅に帰宅した。
食欲もすっかり消え失せてしまって、無性に疲れた。
少し休んでから、コンビニでもいって適当に買ってこよう。
暖房をつけて、ソファに横になっていると玄関からガチャっという音が聞こえてきた。
えっ、ウソ!隼人、帰って来た!?
今日は自分が遅くなるから隼人の予定を聞いていなかった。
私は慌てて玄関に向かう。
すると、隼人は驚いた顔を見せた。
「どうして美羽が家にいるの?」
そうなるよね……。
「実は……」
私は簡単に健司さんが来なかったことを隼人に説明した。
「そうだったんだ。外寒かっただろう?」
「うん……」
本当に寒かった。
何回も健司さんかもしれないと期待して、うつむいていた顔をあげた。
けっきょく来ないなら、早く帰れば良かったのにな……。
「ってことで、ご飯がないからちょっと買ってこようかと思ってて!」
「それなら必要ないよ」
隼人は両手いっぱいに紙袋を下げていた。
「どうしたの、その大荷物」
隼人は中に入ると、リビングのテーブルに紙袋の中に入っているものを並べた。
「これって……ロコンドの!」
「そう」
テーブルに並べられたのは、私が大好きなロコンドのお惣菜。
えびのキッシュにブロッコリーのたまごサラダ、それから手羽先とか……とにかく全部美味しそうなものばかりだった。
「こんなにたくさん……」
「ふらっと寄ったら新しい商品がたくさん出ててつい買っちゃったんだ。これ一人じゃ食べきれないから、一緒に食べよう」
「隼人……!」
さっきまで落ち込んでたのに、隼人が帰ってきてくれて気持ちも少し戻ってきた。
「いただきます」
それから私たちはリビングに座ってすぐにご飯を食べることにした。
「んん~美味しい……っ。本当に幸せな気持ち」
頬が落ちそうなくらい美味しいごはん。
「美羽が喜んでくれて良かったよ」
「喜ばないわけないよ~」
隼人が帰ってきてくれて良かった。
一人だったら、かなり引きずっていただろう。
「健司さん、今日の朝までは楽しみにしてるって言ってたのに。けっきょく連絡もつながらなかった……私、何か気に障ることしちゃったのかなぁ」
「そんな不誠実な人のことを考えても仕方ないよ。美羽にはもっといい人がいると思うよ」
「そうかなぁ……でも私、モテないし……」
「そんなことないよ」
いつも隼人はそう言ってくれるけど、きっと幼馴染として気を遣っていってくれてるんだろうなぁ。
はぁーあ。
モテたら、こうやって相手に困ることもなかったかもしれない。
突然連絡を無視されることも、待ち合わせに来ないこともないよね。
すると隼人が優しい口調で伝えてくれた。
「じゃあ今日は美羽のためにお風呂入れてあげるから入っておいで」
「こんな美味しいごはんまで買ってくれて、お風呂まで入れてくれるの?」
「だって、寒かったでしょ?」
うう、隼人は仏みたいな人だなぁ。
「本当、隼人みたいな人が彼氏だったらいいのに。そしたら待ち合わせだって遅れてきたりしないし、優しいしさ……」
「俺みたいな、ね?」
隼人はからかうようにふっと笑った。
それから隼人は言ったとおり、食事を終えると私のために温かいお湯をお風呂にはってくれた。
入浴剤まで入ってる……。
「あー……幸せ」
彼氏はいないし、出来そうな気配もないけど家に帰ってくると幸せだなって思える。
今のままなら、もう無理に彼氏探さなくていいやって思っちゃう。
独身だって全然楽しいし、今日みたいに悲しむことだってないし……。
そんな考えが頭をよぎったけれど、ぶんぶんと頭をふった。
今が楽しいと思えるのは隼人がいるからだ。
隼人だっていずれいい人が出来たら……。
『美羽、来週には彼女と同棲したいから出てってくれる?』
なんて言われる日が来るかもしれない。
もしそうなったら、隼人とこんな風に会うことも食事したりすることもなくなるだろうな……。
「美羽、お風呂あがったの?」
「うん」
脱衣所を出ると、ドライヤーを持った隼人が出迎えてくれた。
「また髪濡れたままだ。おいで、俺が乾かしてあげるから」
そろそろ自立しないとって思っているのに……。
甘やかされると、人は抗えないものだ。
「なんか……もう戻れなそう」
ドライヤーで優しく髪を乾かしてくれる隼人。
このまま身を委ねて眠ってしまいたい。
「時々ね、考えるんだ。もし彼氏が出来たとして、一緒に暮らせるのかなって。こんなことやってもらってるのを見られたら、ダメ人間だって思われちゃうよね」
隼人はサラサラと髪を撫でながら言う。
「人間みんなダメなところがある生き物だから、そんな深く考えることはないよ。それに、こうやって甘やかしてくれる人を探せばいいよ」
「そうだけどさぁ~!」
隼人みたいな人めったにいないだろう。
なんでもやってくれて、優しくて、文句も言わなくて完璧な人。
「本当、上手くいかなかったら隼人のせいだからね」
なんてすごい責任転換。
しかし隼人は柔らかな声で言った。
「その時は責任取るよ」
「あっ、言ったな~!」
幼なじみだからって心配してくれてるのかな?
隼人も大概だよね。
小さな頃からずっと優しくて、私のこと守ってくれる。
それが使命みたいに思っているところもあるのかもしれない。
隼人のためにも私も早く自立しないとね。
すると隼人は後ろで何かをボソっとつぶやいた。
「~だよ」
「ん?なんか言った?」
「ううん、何も」
ドライヤーの電源を切る隼人。
「嫌なことがあったらいつでも頼ってくれていいからね」
「ありがとう」
最初はショックだったけど、彼のお陰で気持ちも少し軽くなった。
きっとこんな日もある。
嫌なことはあったけど、美味しいごはんも食べてお風呂に入って幸せな気持ちだ。
相手はまた振り出しに戻っちゃったけど……また次の人を探せばいいよね。
一生懸命探していれば、いつか私をいいって言ってくれる人が見つかるかもしれないから。
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