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邪魔なものは美羽の人生から排除する【隼人side】
しおりを挟む“隼人みたいな人が彼氏だったらいいのに”
美羽はそう言った。
みたいな人か。
そんな人間存在するわけない。
俺のように、美羽のことが大好きで、俺のように美羽に執着していて、俺ほど美羽を大事に思っている。
そんな人間“みたい”な人がいるわけないんだ。
これほど美羽を愛していて、手に入れたいと思っている人間は、
みたいなんかじゃなく、紛れもなく俺だ──。
この日。
家に帰ると、いるはずのない美羽が自宅にいた。
俺は驚いた顔をして「どうして美羽が家にいるの?」なんて白々しく聞いたけど理由は知ってる。
『健司さんと今日、食事に行く約束してたのに……来なかった』
知ってるさ。
だって来させないようにさせたのは俺だ。
健司さんと言われる人の電話番号を調べ上げて、俺が今朝電話してやった。
『もしもし、どちら様ですか?』
『葉山美羽の彼氏の森山隼人と申します』
『えっ、えっ!』
相手はかなり動揺していた。
『今日美羽と食事に行く予定ですよね?』
『なんで、それを……』
『単刀直入にお伝えします。彼女は俺のなんで来ないでください』
『ちょっ、ちょっと待ってよ。美羽ちゃんは付き合ってる相手いないって』
『あ、すみません。美羽ちゃんって呼ぶのもやめてください。それから連絡先、消してください。じゃないとどうなるか分かりますよね?』
『お前何言ってんだよ。美羽ちゃんはこの間も楽しそうに……』
『分かっていただけないなら、あなたの隠していること会社にお伝えしましょうか?ほら……あの件。バレたらかなりマズいですよね?全部知ってるんですよ』
俺がそこまで言うと、男は黙った。
『あなたの今のキャリア潰したくないでしょう?営業でいい成績出してるみたいですし……』
ごくりと息をのむ音が聞こえて完全に沈黙になる。
これはハッタリなんかじゃない。
人間バレて欲しくない秘密のひとつやふたつはあるもの。
俺はその情報を人のツテを使って調べることが出来るのだ。
『あっ、それから……もう二度と美羽の前に現れないでくださいね』
低い声でそう脅すと、電話を一方的に切った。
ここまですれば、ほとんどの人間は待ち合わせ場所にやって来ない。
でも例外もいるから、俺は仕事を終えると足早に約束の場所に見張りにいっていた。
待ち合わせのレストランの前に美羽は立って待っていた。
大人っぽいコートを羽織って、首には赤いマフラーで寒そうに身体を小さく揺らしている。
ああ、かわいいな。
どうしてこんなにも可愛いんだろう。
今日はあの男のために、いつもより大人っぽい恰好をしてきたんだ。
普段しないネックレスまで付けている。
このまま帰らせるなんてもったいないな。
いっそのことこのまま連れ去って、どこかへ連れていってしまいたいくらいだ。
寒いのか、鼻の頭が赤くなってしまっていた。
かわいそうに。
その男は来ないのに。
来ると信じて必死に待ってる。
かわいそうでかわいい美羽。
すぐに俺が駆け付けて抱きしめてあげたい。
それから1時間半、様子を伺っていたが、男が来ることはなかった。
当然だ。
守りたいものは誰にだってある。
あの男は探偵の調査によると、過去に強姦まがいのことをして、金でもみ消しているらしい。
俺はこうやって、美羽に近づく男たちをことごとく近寄らせないようにしてきた。
全ては彼女を俺のものにするために。
美羽、こんな汚い男のために待つ必要はないよ。
俺がもっといいレストランを予約し、もっといい暮らしや思いをさせてあげるから。
それから数分して、美羽はしぶしぶレストランを後にした。
何度も受付の人とかけあっていて可哀想だった。
本当は今すぐに迎えにいってあげたいくらいだ。
その気持ちをぐっと抑えて、俺は美羽が立ち去ったのを確認するとすぐに美羽の大好きなレストランに立ち寄った。
美羽が大好きなロコンドという名前のお店。
いつも大きな口を開けて、幸せそうに食べる美羽が見られる。
かわいそうなことしちゃったから、今日はめいいっぱい美羽を甘やかしてあげたい。
美羽の好きなえびがたっぷりのったキッシュとブロッコリーの卵サラダ。
それから彼女が喜びそうなものをいくつか選んでテイクアウトをした。
家に帰ると、案の定彼女は落ち込んでいた。
でも俺は知らないフリをしないといけない。
『そうだったんだ。外寒かっただろう?』
『うん……』
寒そうな顔をして待っていたのを知ってるよ。
今日はお風呂を入れてあげよう。
美羽の身体が冷え切らないように。
そして美羽の前にロコンドのお惣菜を並べた。
ちゃんと二人がお腹いっぱい食べられるように計算して買ってあるものだ。
『ふらっと寄ったら新しい商品がたくさん出ててつい買っちゃったんだ。これ一人じゃ食べきれないから、一緒に食べよう』
でもそれは秘密。
目の前に並ぶお惣菜に美羽はぱあっと顔を明るくさせた。
『私、ロコンドのご飯大好きなの』
『美羽には、これ。えびのキッシュだろ?』
『ありがとう……っ、本当隼人は分かってくれるよね。本当は今日落ち込んでたんだけど、一気に元気になっちゃった!』
分かってる、なんて当然だ。
美羽のことならなんでも把握してる。
ひとつたりとも見逃すことはない。
そろそろ美羽だって、気づけばいい。
俺と一緒にいることが一番幸せなんだと──。
キッシュを食べながら、美羽は今日あったことを俺に話した。
『健司さん、今日の朝までは楽しみにしてるって言ってたのに。けっきょく連絡もつながらなかった……私、何か気に障ることしちゃったのかなぁ』
『そんないい加減な人のことを考えても仕方ないよ。美羽にはもっといい人がいると思うよ』
『そうかなぁ……でも私、モテないし……』
『そんなことないよ』
実際に美羽はモテる。
くっきりとした二重に、小さな顔。清潔感もあり、素直でよく笑う。
モテないわけがない。
俺が幼い頃から何度も美羽に近づく男を追い払ってからというものの、気づけば男が自分から離れていくので、モテないと勘違いしているらしい。
そんな鈍感なところも美羽らしいよ。
美羽はまだ俺の愛の深さに気づいていない。
気づいたら、どう思われるだろう。
引かれるだろうか?
逃げていくだろうか?
……でも、関係ない。
だって逃がしはしないから。
今までずっと彼女が俺の手中に落ちるようにレールを引いてきたんだ。
どこを歩いたってたどり着くのは俺の前。
後はもう待つだけだ。
30歳の美羽の誕生日。
俺らはきっと結ばれているだろう。
幸せで笑顔の絶えない家庭を作る覚悟は出来ている。
それに指輪の準備も。
俺は自分の部屋に戻ると引き出しをあけた。
美羽に似合うと思って買った3カラットのダイヤモンドの指輪。
キラキラ光っていて、でも繊細で……美羽にピッタリの指輪を見つけてから、俺はすぐに購入した。
はやく、この指輪を渡したい。
美羽に付けてもらいたい。
夕飯を食べ終え満足した俺たちは、一緒にテレビを見てからお風呂に入ることにした。
美羽を先にお風呂に入れて、後から俺が入る。
そして、俺がドライヤーを持ってソファーに行くといつものルーティーンが始まった。
『ああ~気持ちい……』
俺は美羽の髪をさらりと撫でながら髪を乾かしてあげていた。
一度、美羽が保育園のイベントが立て続けにあって疲れ切っていた時に、俺がドライヤーで乾かしてあげていたら、すごく気持ちよさそうにしていたから、時間が合う日は毎日俺が美羽の髪を乾かしてあげている。
「なんか……もう戻れなそう」
美羽はドライヤーの風にあたりながらそんなことを言う。
いいよ、それで。
戻れなくなればいい。
戻れなくなって、俺がいないと人生生きていけないんだって思えばいいのに。
「本当、上手くいかなかったら隼人のせいだからね」
這い上がれなくなるように、心地のいい空間を作って……すべてを先回りして美羽に手を貸す。
自分では何もできなくなるくらいになって、ずっと俺の側にいればいいんだ。
俺なら全部してあげられる。
「その時は責任取るよ」
「あっ、言ったな~!」
言ったよ。
もう何回だって言ってる。
美羽のことよく知るには前から美羽を知ってる人がいいって。
美羽のこと分かってあげられるのは俺だけだって。
俺しかいないってことに早く気づいてほしい。
「はやく俺の元に堕ちないかな」
ボソっとつぶやくと、美羽は言う。
「なんか言った?」
「ううん、何も」
俺はそう言ってカチっとドライヤーの電源を切った。
そっと美羽の長い髪に口づけをする。
ああ、はやく俺のものになって──。
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