32 / 241

32話 汚らわしい平民混じり

しおりを挟む
 私が王都に到着して、一週間以上が経過した。
 王立学園の入学式に向けて、いろいろと準備や手続きを進めてきた。
 そして、とうとう今日が入学式の日だ。

(いよいよね……。予知夢で見たバッドエンドまで、後四年……。何事もなければいいけど)

 私はそんなことを考えながら、王立学園の門を潜る。
 まずは、寮へと向かって荷物を置きに行くことにした。

「……」

 私は、周囲の視線に晒されている。
 それもそのはず。
 なぜなら、この国の王子であるエドワード殿下と一緒に歩いているからだ。
 エドワード殿下とは、あのゴブリンキングとの戦い以降、よく一緒にいるようになった。
 といっても、別に付き合っているわけではない。
 あくまでも、彼の心意気を買って覇気のコツを伝授しているだけだ。

「あのぉ」

「なんだ? 俺の愛しいイザベラ」

 エドワード殿下は、なぜか上機嫌だ。
 鼻歌交じりでスキップをしそうな勢いである。

「殿下と一緒にいると、目立って仕方がないのですけど……。どうにかなりませんか?」

「何を言っているんだ。俺と一緒じゃ嫌だというのか?」

「そういうわけではありませんが……。ただ、周りの視線が痛くて……」

「はははっ、気にすることはない。むしろ見せつけてやればいいじゃないか」

 エドワード殿下は、とても楽しげに言う。

「はあ、まあいいです。……あれ?」

 何やら、騒いでいる人達がいる。

「あんたみたいなのがいると、この学園の格が落ちるのよ!」

「汚らわしい平民混じりが!」

「身の程を知りなさいよ!」

 取り巻き達に囲まれているのは、一人の少女。
 亜麻色の髪の少女で、そばかすがある。
 着ている制服から、同じ新入生だということはわかる。

「で、でもぉ……。わたしもパパとママのために頑張らないとだしぃ……」

「生意気なこと言ってんじゃないわよ! 平民風情が!」

「さっさとここから出て行きなさいよ! ここは貴族だけが通う場所なのよ!」

 どうやら、貴族の女生徒達に絡まれているようだ。
 と言っても、この王立学園に通う生徒は全員が貴族のはずだけれど。

「ひいっ!? ご、ごめんなさぁい~!!」

 少女は、涙目になりながら逃げていった。

「ふんっ、根性なしが」

「これだから平民は嫌いなのよ」

「身のほど知らずめ」

 少女を取り囲んでいた女生徒達が、吐き捨てるように言った。
 弱い者いじめかな?
 この学園に平民は通えないはず。
 それでも、貴族の末端に近い者は蔑まれてもおかしくはない。
 『ドララ』でも、主人公のアリシアさんは悪役令嬢のイザベラに嫌がらせを受けていたからね。

「ねえ、あなた達」

 私は、思わず声をかけてしまう。

「あら、誰でしょう?」

「こんな人、社交界にいたかしら?」

「私達のことを知っていて話しかけているの?」

 女生徒が、私を取り囲むように近づいてくる。

「えっと、私はアディントン侯爵家のイザベラです。以後、お見知りおきくださいませ」

 私はスカートの裾を摘んで、カーテシーを行う。

「アディントン侯爵家のイザベラ様!? 失礼しました! まさか、侯爵家の方だとは思いませんでしたので……」

「いえ、いいんですよ。それにしても、先程のやり取りを見ていましたけど、いくらなんでもやりすぎではないですか? 彼女だって、頑張って入学試験を突破したはずなのですから」

 王立学園への入学にあたっては、事前に厳しい審査がある。
 家格、学力、魔法技量、身体能力、礼儀作法などを総合的に判断して入学するかどうかが決まるのだ。

「ですが、彼女……アリシア・ウォーカー殿は、貴族としての礼儀がなっていないのですわ!」

「その通りです! あれでは、王立学園の格が落ちてしまいます!」

「せっかく、わたしくも必死になって入学致しましたのに……。これでは……」

 女生徒達がそう言う。
 彼女達には、彼女達なりの言い分があったようだね。

「アリシア・ウォーカーさん?」

「ええ! ウォーカー男爵が使用人に生ませた子供だとか……」

「本来は由緒正しき王立学園に入学する資格などないはずですが、どうやったのか入学を許可されたみたいで……」

 さっきの子がアリシアさんだったのか。
 男爵家は、貴族の中では家格がやや下ではあるけれど、蔑まれるほど低いわけではない。
 それでも彼女が疎まれている理由は、正妻や側室の娘ではなく、使用人が生んだ子供だからだろう。
 本来ではまず入学が許されないのだが、彼女の場合は魔法の才能が見込まれてギリギリ入学が許可されたという設定だったはず。

「あなた達の言い分はわかりました。ですが、貴族家の子女として、やはりあのような立ち振舞いはよくありませんわ。彼女はこれから、ここで学ばなければならないことがあるのですから」

「それは……そうかもしれませんが……」

「平民混じりの成り上がりに……」

「……でも、仕方がありませんね。イザベラ様がそう仰るのであれば……」

 女生徒達は、渋々といった様子で去っていった。

「ふう、なんとかなったかな」

 『ドララ』でも、ヒロインのアリシアは苛められていた。
 それを救ったのが、エドワード殿下やカイン達、攻略対象の面々だったりする。
 そもそも苛められていなければ、エドワード殿下達と接近することもなくなるかもしれない。
 ふふふ、我ながら完璧な計画だね。

「イザベラはさすがだな。貴族の礼儀に疎い者への教育係を買って出るなんて」

「へ?」

「いやだから、イザベラがアリシア・ウォーカーに礼儀作法を教えてやるのだろう? あの会話の流れからして」

「えーと……」

「俺も彼女には興味があったんだ。希少な光魔法の使い手らしい。くれぐれもよろしく頼むぞ」

「はい……」

 断れない。
 エドワード殿下の頼み事だし。
 なんでこうなった?
 思わぬ展開に、私は頭を抱えるのだった。
しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜

矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】 公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。 この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。 小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。 だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。 どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。 それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――? *異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。 *「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。 ※他サイト様にも掲載中です

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

断罪の準備は完璧です!国外追放が楽しみすぎてボロが出る

黒猫かの
恋愛
「ミモリ・フォン・ラングレイ! 貴様との婚約を破棄し、国外追放に処す!」 パルマ王国の卒業パーティー。第一王子アリオスから突きつけられた非情な断罪に、公爵令嬢ミモリは……内心でガッツポーズを決めていた。 (ついにきたわ! これで堅苦しい王妃教育も、無能な婚約者の世話も、全部おさらばですわ!)

異世界転生した私は甘味のものがないことを知り前世の記憶をフル活用したら、甘味長者になっていた~悪役令嬢なんて知りません(嘘)~

詩河とんぼ
恋愛
とあるゲームの病弱悪役令嬢に異世界転生した甘味大好きな私。しかし、転生した世界には甘味のものないことを知る―――ないなら、作ろう!と考え、この世界の人に食べてもらうと大好評で――気づけば甘味長者になっていた!?  小説家になろう様でも投稿させていただいております 8月29日 HOT女性向けランキングで10位、恋愛で49位、全体で74位 8月30日 HOT女性向けランキングで6位、恋愛で24位、全体で26位 8月31日 HOT女性向けランキングで4位、恋愛で20位、全体で23位 に……凄すぎてびっくりしてます!ありがとうございますm(_ _)m

処理中です...