唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~

専攻有理

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第1章 異世界での目覚め

6 椿井、異世界に立つ

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「登場人物が俺しかいない異世界モノなんて面白いだろうか?」
 少なくとも俺は面白くない。と、自分が目覚めた部屋をあらかた調べ終わった後に椿つばは呟いた。
 椿井は一人見知らぬ部屋で目覚めてから状況を整理したり色々と考えた。
 その結果。
 自分は車にねられ、死んだ可能性が極めて高い。
 31歳のおじさんの体が、何故か高校生の頃の体に戻っている。
 外には不思議な森が広がっており、ここが現代の日本だとは考えにくい。
 といった情報を入手、把握したがスムーズにいったのはそこまでで、部屋の中を調べたりしても新しい発見はなく、それ以上の情報を手に入れることはできなかった。
 なので。
「この場所にいてもこれ以上得られるものはなさそうだ。……行くか、外に」 
 椿井は新たな情報を得るために外に出る決意を固めた。
 外へと繋がる扉は先ほど一度開けており、施錠されていないことは確認済み。見えない障壁とかそういった異世界で人を軟禁するときに使われそうな魔法なども無いようだったので椿井は再び引き戸を開け、和室から飛び出し。
「よっと」
 あっさりと、異世界と思われる大地に立った。
「……」
 そして凄く久しぶりのように感じる太陽の光を全身に浴びながら、椿井は今まで自分がいた白色の建造物に目を向け。 
「……やっぱり神社に似てるよな」
 と感想を口にした。
 その椿井の感想通り、この建造物や周辺の雰囲気は神社の境内けいだいによく似ていた。
 だが。
「でも、何かが違うんだよな」
 変な違和感がある。と、椿井は首を傾げた。
「境内の透明な砂利や、光ってる石畳も変だけど、なんというか、もっと根本的な何かが普通の神社と違う気がする」
 神社仏閣に関する知識があれば、この違和感の正体がわかるのだろうか。と、建造物を眺めてしばらく考え込んでいた椿井だったが。
「……ダメだな。やっぱり今の俺の知識と持ってる情報量じゃ答えが出てきそうにない。一時期神社でバイトもしてたのにわからないのは情けないけど、この事は後でまた考えよう」
 他にも問題は山積みなんだから。と、テストで答えのわからない問題をいったん飛ばして次の問題に行くような感覚でその思考を切り上げた椿井は、他の建造物に向かって早足で歩き出した。
 境内には自分がいた建造物とよく似た作りをした建造物が幾つか存在しており、そのどれかには人がいるのではないかと椿井は考えたのだ。
 そして椿井は自分がいた建造物のすぐ隣にあった建物の前に立ち。
「すみませーん。誰かいらっしゃいませんかー」
 と大きな声で何度か呼びかけてみたが返事はなく、その結果に椿井は眉をひそめ、少しだけ逡巡しゅんじゅんした後。
「……申し訳ないが、非常事態なんだ」
 不躾だが許して欲しい。と、椿井は謝罪の言葉を口にしてから目の前の引き戸に手を掛け、力を込めた。
 だが。
「……鍵が掛かってる」
 椿井がいくら力を込めて扉を開けようとしても、その扉が開くことはなかった。
「……他の建物に行ってみるか」
 自分が不法侵入に失敗したことに少しほっとしつつ、椿井はその建造物から離れ、他の建造物へと足を向けた。
 そして、それから数分後。敷地内にある全ての建造物を確認した椿井は境内の中心に立ち、難しい表情を浮かべた。
「……ダメだったな。俺が出てきた建物以外は全部鍵が掛かって入れないようになってるし、人の気配も無い。扉を壊す……のは本当に最後の手段にしよう。今は……」
 この境内にある建造物の殆どはしっかり施錠がされており、人を見つけるどころか新しい情報を何も手に入れることができなかった椿井はその視線を境内の外へと向けた。
 境内の外はすぐ森になっており、近くには杉やブナのような見覚えのある木々が生い茂っていたが、その奥には天まで続くような巨木があったり、見たこともない植物が比喩ではなく本当にうごめいていた。
「……」
 そんな実に異世界らしい森に目を向けた椿井は。
「……毒蛇や感染症を媒介する虫とかがいませんように」
 と、厄介な生物が生息していないことを神様に祈ってから、石畳の上をまっすぐ歩き、境内の外、深い森へと足を進めた。
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