唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~

専攻有理

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第1章 異世界での目覚め

8 出会いと初めてのたたかい Ⅱ

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『薬草を採りに行って欲しい』
 少女は昔からの知り合いにそう頼まれた。
 ある出来事が原因で薬学の道に進みはしなかったものの、薬草に関する知識を持っていた少女はその頼み事をこころよく引き受けた。
 誰かに助けを求められるなんていつ以来だろう。しかも、小さい頃はとても仲良くしていた友達に。と、善良なる少女は久しぶりに人に頼られたことがとても嬉しく、すぐに薬草を採りに向かった。
 その薬草、植物の群生地は凶暴な獣やモンスターが入ることはないといわれている神聖な森の中だった。そのため彼女は護身用の道具も持たず、危険な地域に行くときはいつも一緒に行動している大切な友人に声を掛けることもなく、一人、森へと入った。
「っ……はっ、はぁ……っ……」
 その結果が、現在の状況である。
 少女は今、青色のゴブリン、アンデッドゴブリンと呼ばれるモンスターに囲まれていた。
 少女が今いる神聖な森に本来ならこういった凶悪なモンスターが入ることはなかった。この森の守護獣が森に近づくモンスターを全て倒していたから。
 だが、現に森の中にはモンスターがいた。それは何故か。
 守護獣の不在等、知らぬ間に森の状況が変わってしまったのか。
 もしくは────
 少女をがモンスターを森へ、少女が穫りに来た薬草の群生地に誘導した。
 少女を、亡き者にするために。
 繰り返すが、彼女は善良である。しかし、彼女自身は悪くなくても、彼女はそういった悪意を受けてしまう可能性がある難しい立場にあった。
「……」
 少女の頭の中で、もしかして、と悪い妄想が膨らむ。薬草を採りに行って欲しいと言ってきた古い友人が誰かに頼まれて自分を罠にはめたのではないか、と。 
「────!」
 違う! そんなことは絶対にない! と、すぐに少女は心の中で自分の抱いた悪い妄想を否定したが、一瞬、本当に一瞬だけでもそんなことを考えてしまったことを少女は後悔し、目を強く瞑り。
 取り返しの付かない、隙を作ってしまった。 
「────きゃっ……!」
 少女が目を開けた時に見た光景は、どこからか飛び出してきたサーチバグ虫モンスターが自分の持っていた杖を奪い遠くへ飛び去っていく姿だった。
「────ぁ」
 その瞬間、少女は全てが終わったと察した。
 軽装の今の自分が持つ武器は杖だけであり、それが無くなってしまったら自分の身を守ることは不可能だと少女は理解していた。
 僅かな猶予、少しの時間があれば、モンスターに対抗するための武器を新たに作り出すことも少女にはできたが……。
 その余裕を与えてくれるほど敵は甘くなかった。
 少女の手から杖が無くなった瞬間にアンデッドゴブリンを指揮するゴブリンの下卑た鳴き声が響き渡った。
 勝利を確信したかのようなその大きな鳴き声に数体のアンデッドゴブリンが反応し、猟犬のような俊敏な動きで少女へと襲いかかった。
「……!」
 少女はそのゴブリンの動きを見て、腕で頭を庇った。
 だが、少女の細い腕でアンデッドゴブリンが振り下ろす棍棒を防げるわけがなく、1打目で腕が砕かれ、2打目で頭蓋が粉砕されるのは明らかだった。
「……っ!」
 明確な死がすぐそこまで迫っていた。
 だから少女は。
 
「助けて、お父さん……!」
 
 誰よりも大好きで信頼している人のことを思い、叫んだ。
 けれども、その人は絶対にこの場所には来られない。少女の父は既にこの世からいなくなってしまった人間なのだから。
 故に少女は誰からも助けられることはなく、最期の時を迎える。

 ────筈だった。
  
「────え?」
 少女が薄らと開けていた瞳に入り込んできたのは、白い光だった。
 そして、その白い光が閃いた直後に少女に一番近づいていたアンデッドゴブリンが持っていた棍棒がドスンと音を立てて地面に落ちた。
 否、棍棒だけではなかった。その棍棒を握っていたアンデッドゴブリンの腕も地面に落ちており、自分の腕が無くなるという異常事態に気づいたアンデッドゴブリンが動きを止め、少女に迫っていた他のアンデッドゴブリン達もつられるように動きを止めた。
 その瞬間。
「うおおおおおおお……!」
 何者かが叫び声を上げながら片腕を失ったアンデッドゴブリンをボールのように蹴り上げ、遠くへと蹴飛ばした。
 そして、その人物は少女に背を向けたまま、手に持つ武器を構え直した。他のアンデッドゴブリンから少女を守るように。
「……」
 そんな突如現れた人物、おとぎ話に出てくる勇者のように自分を助けてくれた青年の後ろ姿を見ながら少女は。
「あ、あなたは……?」
 混乱する頭で彼に名を尋ね。
 
「────椿井」

 その名を聞いた。
 。その彼の名を、この出会いを、少女は死ぬその時まで忘れることはないだろう。
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