嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま

文字の大きさ
5 / 20

お仕置き

しおりを挟む
 その四人組を見て、体中の血液が沸騰したかのように熱くなったが、こんなところで揉めるわけにもいかない。俺は心を鎮めるために、息を深く吸って吐いた。

 俺が突っ立って視線を送っていると、向こうも俺に気が付いたのか、こちらを見て何やらコソコソ話をしている。そして彼女たちは近づいてきて、赤髪リーダー格が俺の前に立った。

「オジサン、生きていたのね」

「ああ、おかげさんで」

 俺がにやりと笑ってみせると、彼女は一瞬、顔を引きつらせた。

「それで、ギルドには報告したの?」

「いや、してない。証拠が何もないからなぁ」

 俺が首を横に振ると、赤髪リーダー格は髪を払って嘲笑う。

「ふっ、でしょうね。報告したところで、オジサンに襲われたから返り討ちにした。そう言えばいいだけだし」

「それはさすがに無理があるだろ。俺の金も持ち物も全部盗っていったくせに。調べたらすぐに分かるさ」

 赤髪リーダー格は、余裕の笑みから一転して険しい目つきになるが、俺は構わず続けた。

「証拠がないってのは、俺の体の方だよ。強力な魔法を喰らって瀕死になったって訴えても、傷の一つもなく完治しているからな。あり金全部持っていかれたら、瀕死の重傷を完治できる高額な治癒魔法なんて受けられないし」

 俺の言葉に紫髪が首を傾げている。ああ、アイツは俺にストーンブラストを撃ち込んだやつだな。

「あの魔法を至近距離で受けて、生きているだけでも驚きなのに、もう動けるなんて……。ヒールポーションも盗ったし、どうやったの?」

「ひ・み・つ」

 以前赤髪リーダー格がしたようにおどけて見せると、彼女の切れ長の目がキッと鋭くなった。おぉ、怖い怖い。俺は赤髪リーダー格に向き直る。

「それよりも、俺から盗んだ金を返してくれないか? そうすれば許してやるし、ギルドにも内緒にしておいてやるよ」

「ええ、分かったわ。でも今は持っていないから、明日私たちの家まで取りに来てくれる? これ、住所よ」

 赤髪リーダー格は素敵に微笑むと、紙切れを俺に差し出した。

「いいだろう」

 俺が頷いて、その紙切れを受け取ると、彼女たちは去っていった。四人組の姿が見えなくなると、体に巻き付いているベネットの念話が聞こえてきた。

「アイツら、ウィルを殺す気」

「んなこたぁ分かってるよ。前は油断してたし、一人だったからやられたけど、今はお前がいるだろ? 頼りにしてるぜ、相棒」

「任せて! ベネット、頑張る!」

 気合の入ったベネットの返事を聞いて、俺はほくそ笑むのだった。



 * * *



 翌日、紙切れに書かれた住所へ行くと、そこは貧民街にあるぼろい建物の一つだった。

 あの身なりがいい美少女ちゃんたちが、こんなところに住んでるわけないよなぁ……。殺る気満々じゃねぇか、まいったね。

 その建物の中に入っていくと、あの美少女四人組がいたので、俺は片手をあげて声を掛けた。

「ちわー、集金に来ましたー」

 赤髪リーダー格は、煩わしそうに長い髪を手で払うと、俺に視線を向けた。

「怖気づいてここまで来ないと思っていたのに、よく来たわね?」

「こんなんでビビってたら、冒険者なんてやってられるか」

「まぁ、いいわ。あなたはここで殺す」

 赤髪リーダー格が冷たい声を出すと、ぞろぞろと武装した男たちが奥から出てきた。

 お、アイツは強姦殺人で指名手配中のボウジャック。あっちは強盗殺人のジャーアク。他にもいっぱい賞金首の奴がいるな。俺を殺すために、わざわざ雇ったのか。ご苦労なこった。

 得物を構えて、俺を取り囲む五人の男たち。少し離れたところで、笑みを浮かべる美少女四人組。

「なぁベネット。こいつらまとめて行動不能にできないか?」

「お安い、御用」

 俺の体に巻き付いていたベネットは、元のキノコの姿に戻って胞子をばらまいた。

 すると、この場にいる俺以外の大半がバタバタと倒れていき、身動きが取れなくなった。

 胞子が効かないやつには、先端を刃にした菌糸を伸ばして、脚の腱を切り動けなくした。とんでもない早技だ。

「ベネット、あの四人以外は全部喰ってもいいぞ」

 ベネットからさらに菌糸が伸び、次々と男たちに絡みつく。彼らは繭状に包まれて少しの間藻掻いていたが、すぐに動かなくなった。

 菌糸が解かれた後には、装備品と衣服を残して消滅していた。

 ベネットを見ると、高さ1mほどの大きさになっていた。いっぱい食べて、大きくなったのね……。

 残された美少女たちは、恐怖で顔が引きつっている。赤髪リーダー格は、震える手でベネットを指差した。

「その、キノコ型モンスター、まさか……」

「ああ、ブラッディマッシュだ。丸っこくて、意外とかわいらしい見た目をしてるだろ?」

 俺がドヤ顔で笑って見せると、赤髪サイドテールが青ざめた顔で口を開く。

「厄災級モンスターがなんでこんなところに……? まさかテイムしたとでも言うの!?」

「俺、テイマーじゃないからテイムとかはできないんだけどね。なんか懐かれたんだ、いいだろ?」

 俺がニタリと笑うと、四人組は歯を食いしばって俺を睨んでいる。

「さて、どうしようかな?」

 俺はさらに悪人っぽく笑って、大きくなった相棒の傘の上に手を乗せる。ベネットが菌糸を伸ばして触手のように揺らすと、彼女たちは「ヒィッ!」と悲鳴を上げた。

「この通り、謝るから許して! お金もきちんと返すから!」
「ごめんなさい! 私たち脅されて仕方なくあなたを襲ったの!」
「お願いだから殺さないでぇ!」
「助けてくださいぃー」

 彼女達は涙ながらに訴えてる。かわいい子っていいよなぁ、こんな姿を見せられると、つい許したくなってしまう。でも、強盗殺人未遂なんだからしっかりお仕置きしないとね。楽しんでなんかいないからな!

「おじさんさぁ、あの魔法喰らった時、すごく痛かったんだよね」

 俺が紫髪の前に立って見下すと、彼女は顔を上げて目を吊り上げる。

「怪我ならもう治っているじゃない!」

「あれれー? そんなこと言っちゃうわけ? おじさん、ちょっと腹立つなぁ」

 紫髪は口を閉じて俯く。彼女たちは視線こそ落としているが、悔しそうに唇を噛み締めて、抵抗の意思が見て取れる。おそらくこいつらは、反省なんてする気もないし、金を返す気もないだろう。

 とはいえ、無抵抗の女を暴行したり、殺したりなんてのはしたくない。

「いいよ。許してやるよ。でも次は無いからな。俺の気が変わらないうちに失せろ。金も全額きちんと返せよ?」

 四人組はベネットの胞子の影響でふらつきながらも、そそくさと去っていった。

 ため息を吐いて、転がっている木箱に腰かけると、ベネットの念話が聞こえてきた。

「アイツら、まだウィルを殺す気だよ。殺しておけば良かったのに」

「だろうな。次にあいつらが俺を殺しに来たら、喰っていいからな。ってか、お前、なんか話し方が流暢になってないか?」

「たくさんの人間を喰って吸収したから、多くの人間の知識を得たし、僕の言語理解能力も向上したみたい」

「そっかー、体も大きくなったしなぁ。そのサイズだと菌糸の状態で、俺に巻き付いても誤魔化せないぞ」

「それなら心配ないよ。人間に擬態出来るようになったから」

 ベネットはそう言うと、ずんぐりとしたキノコスタイルがみるみる細くなって、天使かと思えるほどの美しい少年に変身した。

「この姿なら人間に見えるでしょ?」

「人相の悪い奴ばっかり吸収したのに、美形になるのは解せんな」

「吸収した人間の平均値で顔を作ったら、こうなったんだよ。それと、新人冒険者を名乗るために若い容姿にしたんだ。どうかな?」

 ベネットは念話じゃなくて、口を動かして話した。

 あー、美醜に関して、どっかでそんな話を聞いたことあるな。究極の美形ってのは最も平均的な顔だとかなんとか。まぁどうでもいいか。これならモンスターに見えないし、堂々と街も歩ける。

「その設定でいいぞ。だが素っ裸で街を歩くわけにもいかん、そこらへんに散らばってる適当な服を着てくれ」

 しかし、ギルドへの報告はどうするか。賞金首の重罪人を五人殺したから賞金が貰えるだろうが、血を一滴も残さず殺したとなれば、どうやったのかしつこく追及されるだろう。そうなればベネットの存在に気付かれるかもしれない。

 少しだけ考えたが、ギルドに報告しないと決めて、この場所から離れた。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

追放された俺の木工スキルが実は最強だった件 ~森で拾ったエルフ姉妹のために、今日も快適な家具を作ります~

☆ほしい
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺は、異世界の伯爵家の三男・ルークとして生を受けた。 しかし、五歳で授かったスキルは「創造(木工)」。戦闘にも魔法にも役立たない外れスキルだと蔑まれ、俺はあっさりと家を追い出されてしまう。 前世でDIYが趣味だった俺にとっては、むしろ願ってもない展開だ。 貴族のしがらみから解放され、自由な職人ライフを送ろうと決意した矢先、大森林の中で衰弱しきった幼いエルフの姉妹を発見し、保護することに。 言葉もおぼつかない二人、リリアとルナのために、俺はスキルを駆使して一夜で快適なログハウスを建て、温かいベッドと楽しいおもちゃを作り与える。 これは、不遇スキルとされた木工技術で最強の職人になった俺が、可愛すぎる義理の娘たちとのんびり暮らす、ほのぼの異世界ライフ。

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

実家にガチャが来たそしてダンジョンが出来た ~スキルを沢山獲得してこの世界で最強になるようです~

仮実谷 望
ファンタジー
とあるサイトを眺めていると隠しリンクを踏んでしまう。主人公はそのサイトでガチャを廻してしまうとサイトからガチャが家に来た。突然の不可思議現象に戸惑うがすぐに納得する。そしてガチャから引いたダンジョンの芽がダンジョンになりダンジョンに入ることになる。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

処理中です...