嘘はいっていない

コーヤダーイ

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32北のギルド

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 サキがムスタの番認定を受け甘やかされた翌日に、マティアスが一人でやって来た。サキは恥ずかしながらもムスタと心を通わせましたと報告をし、ムスタは堂々とサキはわしの番じゃと宣言をしてサキを赤面させた。
 無表情でそれを聞いたマティアスはそうかと呟き片頬を上げると、サキを頼みますとムスタに頭を下げた。

「あの父さん、驚かないの?」
「あぁ、ラミから聞いて知っていた」
「うわあ……ラミ母さん……わかっちゃうの」
「お前がようやく幸せになった、と言っていた」
「うん……ありがとう」

 いつものようにサキの頭を撫でようとして一瞬躊躇したマティアスだったが、サキが嬉しそうに頭を擦り付けてくるので結局普段通り撫でてやる。ムスタはいつものように飄々としているしサキも幸せそうである、どうやらすべてが変わってしまったわけでもなさそうだ。
 今までの繋がりが無くなるのではなく、繋がりが新たに増えてまた絆が深まっていくのだろう。家族とはこういうものだったのかと、マティアスは改めて知る家族の奥深さに胸の奥が温かくなった。

「そういえばサキ、ギルド長のエフから依頼を受けているだろう」
「……ああーっ!忘れてたあ」
「ふむ、通常北へと行くのには半月ほど掛かるから急ぎではないそうだが、このまますぐに持っていくか」
「僕一人じゃ不安かも、父さんも手伝ってくれる?」
「あぁもちろん一緒に行こう」

 じゃあすぐにでも、と言いかけてサキがはっとムスタに気づく。氷城の古い魔法があるからムスタは一緒に行けないのではないだろうか。ムスタの表情は変わっていないが、尻尾はぺちりと床をはたいていた。ちらりとマティアスを見れば横に首を振られる。

「昨日氷城は破壊してきたが、魔力の残存があるからまだ無理だろう」
「……ですって、ムスタ師匠。ごめんなさい」
「仕方あるまい。気を付けて行くのだぞ、サキ」
「はい」

 ムスタに梯子の上まで見送られてサキとマティアスは地下を後にした。祠の外に出れば陽の光が眩しい、サキが目を細めると同じように目を細めてサキを見ているマティアスがいた。

「ずっと地下にいたから眩しい」

 と手を出せば、あぁと言って自分に結界魔法を張ったマティアスがその手を取った。マティアスと二人ならば何の準備も必要ない、そのまま花畑へと転移し花畑から北の氷城へと飛ぶ。



 元氷城のあったどこまでも平らな氷の大地を見てサキは何度か瞬きを繰り返した、破壊したといっていた氷城はともかくとして、城を囲んでいた深い氷谷は一体どこへいったのか。
 転移場所を間違えたはずはないのだが、とマティアスを見れば跡形もなく消し去ったと言った。

「狼人タルブたちの新しい国へも渡りをつけてある、ギルドもそこに移動しているから飛ぶぞ」

 手を繋いで一気に転移すれば、川にほど近い集落のような場所に出た。獣人たちは力が強いので大きな石を一人で運び積んで土台にし、一階は石造りで二階は木造の住宅を皆で協力して建てているところであった。
 道はまだなく、剥き出しの土に道を区切るように等間隔に長い棒が打ち込んである。まともに住めそうな家はまだそれほど多くはない。
 サキは土に触れて地面が冷たく固いことに驚いた、もうすぐ冬がくるのに間に合うのか。前世と違い断熱材などないから石と木の簡素な造りの家で、雪が積もって皆は大丈夫なのだろうか。

 しばらくきょろきょろとしていれば、狼人タルブが気づいてこちらへとやって来た。

「よぉマティアス、毎日すまないな。普通毎日なんて来れないから便利だな、はっはっ」
「あぁ、今日はギルドに用があって来た」
「そっか。おっサキ、その匂い……おめっとさん」
「うわあ……獣人にはわかっちゃうの……ありがと、ございます」
「はっはっ、これでもう獣人ならもうサキに手出しはしないな」

 鼻をすんと鳴らして狼人タルブが豪快に笑った。サキも頬の赤くなるのを両手で隠しながらもにこにこと微笑んだ、獣人ならばすぐわかるほどムスタとサキの匂いが混ざっているのならば嬉しい。
 少し離れたところで作業の手を止めてサキの方をちらちら見ていた獣人たちが、うぅ可愛いけどあの匂いは怖いと耳を垂れ尻尾を下げていた。

「タルブさん、雪が降るまでに皆さん住むところは間に合いそうなんですか?」
「うんー、まぁ間に合わなきゃ出来てる住居で間に合わせるし、一応少し山の上にデカい洞窟があるからな。何とかなるさ」
「そうなんですか、この辺り雪が積もるんですよね?」
「積もるぞー、それで畑と道の境に長い棒挿してあんだよ」
「ああ、なるほど。じゃあ道の雪かきとか大変ですね」

 南の育ちのくせによく知ってんなぁ、と狼人タルブが笑いながら雪かきの大変さを語った。それに相槌を打ちながらサキは雪かきの道具や雪を溶かすための装置ができないか、あとでマティアスと相談してみようと頭の中に書き留める。

「ではギルドへ行ってくる」
「おぅ、またな」
「はいタルブさん、また」

 狼人タルブの話を途中で切り上げてマティアスがサキを促した、相変わらず我が道をゆく父親の姿にしかし狼人タルブは気を悪くした風もなく片手を上げている。サキも片手を上げて小さく振るとマティアスと共に歩きだした。サキの背中を見つめて、手ぇ振ってた、可愛かった、俺目が合ったかも、と騒ぐ獣人たちにお前らさっさと作業しないと雪降るぞと狼人タルブが声を掛けた。

 

 北の国のギルドは移動してきたばかりということで、手作り感溢れる石と木の家のような造りであった。マティアスとサキが中に入ると、獣人が一人いて荷物をあちこちに振り分けていた。

「こんにちはー」

 サキが声を掛けるとパッと振り向いた獣人が、鼻をすんと鳴らしてにこりと笑った。

「どうも、こんにちは。ギルドへようこそ」
「僕はヴァスコーネス王国のギルドから依頼で来ました」
「そうでしたか、遠いところをありがとうございます」

 ギルド長エフから預かってきた手紙や小荷物を渡せば、依頼は終了である。あ、とサキは思い出して一通の手紙を差し出した。

「これはギルド長のエフさんから、こちらのギルドへのお手紙になります」
「ありがとうございます、確認いたします」

その場で開封して目を通したギルドの獣人が手紙を読み終えたのだろう、にこりと笑うとサキへと一礼した。

「あなたがサキさんなのですね。私はこちらのギルド長イチと言います、どうぞよろしく」
「あ、はい。サキと言います」

(何が書いてあったんだろう)

「冒険者のためにたくさんの魔導具を改良してくださった功労者であると、書いてあります。こちらへはなかなかいらっしゃらないでしょうが、困ったことがあればいつでも力になります」
「ありがとうございます。その時にはよろしくお願いします」
「マティアス殿もありがとうございます、またよろしくお願いいたします」
「うむ、預かるものがあればこちらで預かろう」

 北の国のギルドからもいくつか預かりものをし、サキとマティアスはギルドを後にした。狼人タルブに挨拶をしてから帰ろうと歩きながら、サキは先ほど思いついたいくつかの考えをマティアスに話した。

「タルブさんに、長距離で伝魔通信のできる魔導具を渡せると良いと思うんだけど」
「ふむ、長距離か……今のままでは無理だが、少し考えてみるか」
「ここまでの途中に、いくつか中継地を作って魔法陣を埋め込んで置いたらどうかな」
「……あの祠のようなものか」
「うん」

 マティアスが考え始めたのなら、すぐに何とかなりそうな気がする。サキは狼人タルブへまた来ると手を振って挨拶をすると、結界を張ったマティアスを連れて花畑へと飛び館へと戻った。



 マティアスを別れたサキは一人でギルドへと向かい、ギルド長エフへと話を通し荷物を渡せば依頼は完了である。

「向こうで白熊族は大丈夫だった?」
「はい、まあ色々ありましたが」

 族長の亡くなったことと、氷城を離れ白熊族が狼人タルブたちの新しい土地へと移住した話を伝える。魔族の残していた魔法陣の話は伏せ、ムスタがヴァスコーネス王国に戻ってきたとだけ話す。

「なるほど、それで君が番ったわけだ」
「……っ!?」
「ふふ、匂いでわかるよ。言ってなかったっけ、私半獣人だから」
「そ、そうでしたかあ」

 ギルド長エフは半獣人であった、獣人の身体的特徴である耳も尻尾もないが嗅覚と聴覚には優れているそうだ。便利ですねと言えば君の魔法の方が便利でしょうと笑われた。

「残念だけど、でもまぁあの方が幸せなら良かった。ただ今後星の森が出てくるかもしれない、気を付けてね」
「はい」

 そうだ、ムスタはただの獣人ではない、想いが通じたとてふわふわとしていてはいけない。サキを番と言ってくれたムスタの品位を落とす人間になっては駄目だとサキは改めて気持ちを引き締めた。
 ではまたと挨拶を交わしてギルドから出たサキは、はてギルド長エフの言っていた残念とは何のことかと首を傾げた。

 久しぶりに歩こうと城下街を歩き、いくつか買い物を済ませる。今日は白マントを着ていないけれど相変わらず町の皆が声を掛けてくれる、それにいちいち笑顔で手を振って答えながらサキは館へと戻った。
 サキのいなくなった城下街の石畳では男女入り混じったサキの見守り隊たちが、今日のサキは一段と美しかったと密やかに見守り報告を交わしていた。
 
 偶然ギルドに居合わせていた見守り隊の一員から、サキが黒豹の獣人と番ったらしいと報告を受け一同は騒然とする。しかし黒豹の獣人といえば確か星の森の、と一人が思いだしそれならばサキには相応しい納得しようと見守り隊は全員で拳に力を込めると無言で天へと突き上げた。



 館へ戻ったサキは食べ物を詰めた籠を持って、祠まで転移で飛ぶと地下へと降りて行った。

「ムスタ師匠戻りました、サキです」
「戻ったか、大丈夫であったかの」
「はい、ギルドへ行っただけですから」

 梯子を下りて籠をテントに置けば、ムスタが近づいてきてサキに尻尾を絡めた。両手を開いて待たれたので素直に胸に飛び込んで抱きつく。

「タルブさんにもギルド長のエフさんにも、匂いでわかるって言われました」

 胸に抱かれながら告げればムスタはくっくっと可笑しそうに笑った。

「そうであろう、サキはわしの番とわかるようにしてあるからの」

 ムスタが嬉しそうにサキの顎を持ち上げて、鼻を擦り合わせる。軽くちゅっと唇を合わせるとまだ慣れないサキの頬が赤らんだ。そんな様子も愛おしく感じながらムスタはそうだと口を開く。

「サキ、番となった今わしのことを師匠と呼ぶのもおかしかろう」
「えっ……あの……」
「ムス、と呼んでみてはどうかの」
「む、む、ムス……」
「言えたな」

 甘く微笑んだムスタがもう一度鼻を擦り合わせてサキの唇にキスを落とす。

「サキ、もう一度」
「……ムス………」
「もう一度」
「ムス……」
「サキ、愛している」

 唇の角度を変えてムスタがついばむような優しいキスを繰り返す。抱き締められたまま次第に深くなるキスに、サキの息が追い付かなくなるとふっと笑ってムスタが言う。

「サキ、鼻できちんと息をするのだぞ」
「……ん……はい、ムス……」
「………っ、可愛いことを」

 慣れないながらも懸命なサキに一気に煽られたムスタが、抱き寄せていたサキの尻を抱えてそのまま抱き上げてしまう。テントに入るとサキを絨毯へと寝かせて丸二日以上経ったが、まだ身体は辛いかと聞いた。
 サキが首を横に振ればムスタは気遣うようにサキの両頬を両手で包みこんだ。

「サキを愛している、サキが己の命より大事じゃ」
「ん……ムス、僕もムスのこと愛しています」

 だから、とサキもムスタの両頬を両手で包むと頭を持ち上げて軽く唇を合わせる。

「もっとムスの匂い、つけて」
「サキっ!!」

 驚くほどの力で抱擁され、サキは一瞬気が飛んだ。唾液を飲み込めないほど激しいキスを落とされながら、性急にシャツを捲られる。胸を弄られズボンと下着を一緒に膝のところまで降ろされると、洋服ごと掴んでサキの足が持ち上げられる。
 ムスタの唾液を付けた指が後孔に添えられやわやわと解される、ムスタを受け入れるのは二回目だが後孔はムスタを覚えているかのようにくぷりと潤滑液を零した。

「サキはこのように濡れるのだな……」

 指にまとわりついた潤滑液を掬ってサキに見せたムスタがそれを舐めとって見せれば、サキが頬を紅潮させ首を振った。

「……やっ……」

 洋服ごと膝の辺りを固定されたサキは、腿にきゅっと力を入れた。ムスタの手がその腿をなぞり、指がまた後孔へと侵入する。つぷり、と二本の指を呑み込んだサキは腰を持ち上げられた不安定な体勢のまま腰を揺らす。やがて三本の指で中を掻き回されて腰を揺らすサキは、あえなく白濁を飛ばした。

 息が整わぬうちに抜かれた指に後孔がひくりと口を閉じてまた開けた。ムスタが後孔の呼吸に合わせるようにゆっくりと挿入し、時間を掛けて根元まで納めた。

「……苦しくはないかの」
「ん、だいじょぶ……も、動いてへーき、だから」
「……そのようにいつも可愛らしいことを言う」

 ぐん、とサキの中で大きさを増したムスタが眉間に皺を寄せて、サキの中をどんと突いた。そのひと突きでサキの背が反り、痺れが身体中を走り抜けた。

「あっあぁっ、だめかもっ……」
「どうした?」
「き、気持ち良すぎてだめか、も、」

 満足気に牙を見せて笑ったムスタが持ち上げたままのサキの足を肩の方まで押さえて、ゆったりと腰を使いだした。
 サキはあっ、あっと声を上げてムスタを受け入れ、ムスタがサキの中で初めて吐き出すとそこはぐねりとうねった。

「辛くはないか」
「へーき……」

 着衣を乱して息の整わぬサキはちらりと見える乳首もぷくりと染まり、白い腹には白濁が散り今も誘っているように見える。
 ムスタはまだ萎えぬ己を抜いて前立てをくつろげたままだったパンツへとしまい、サキを布巾で丁寧に清めていった。

 すう、と眠りに落ちたサキの腹をそっと撫で、ムスタもサキを抱え込むように横になり目を閉じた。
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