灰かぶりの少年

うどん

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灰かぶりの少年30

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「ぅ…ん」


目が覚めた


「寝ていたのかな…」


虚ろ虚ろでまわりを見渡す
見慣れた風景
自分の納屋だ


どうやって戻ってきたのか覚えてないが確かにここは住み慣れた納屋の中


隙間から爽やかな風が流れ込み朝を告げる
どれくらい寝ていたのか…


ムクっと体を起こして胸に手をあてる
トクントクンと心臓が鼓動を打って生きている証を実感する


いつも眠った後は明日の朝はあるのだろうかとふと思った事があった
目を覚まさず、永遠に眠り続けているのではないかと考えていた


でも…例えそうだとしても構わない
僕は生きていてもなんの意味もない存在
ただ辛いだけ…


だからいつでも僕というモノがなくなってもいい様に心掛けている
自分に出来る精一杯なこと

偶に出会う大好きな動物達の世話

毎日与えられるお屋敷の仕事




全てをこなしてから死ねばいいのだ




自分の中で決めつつゆっくり立ち上がる

「いっ…全身痛いや…、まず体を洗ってそれから…花壇のお花に水をやりに行こう」


水辺には注意を払って素早く適当に洗い、花壇用のバケツに水を汲んだ


「綺麗なお屋敷の花壇だからたくさんお水をあげないと枯れちゃうな」


水辺と花壇まで距離があり重たい水を運ぶのは大変だが植物は好きなので苦になった事は一度もない


「よく育って、これからも綺麗に咲き続けるんだよ」


花に話しかけながら順番に水をやっていく




「あっ…!!」



花に触れようと手を前に出した時、急に手を誰かに踏みつけられた


「おやおや、大きなゴミの塊があると思ったら灰かぶりではないか」


「えっ…お兄様!」


「いちいち振り向くな」


ギリリィィ!


「いた…ぁいぃ、ごめん…っなさい!」


成人男性の全体重が踏まれている手にかかっているので途轍もなく痛い


「良かったな…お前に仕事が入った、今夜またこの花壇に来い」


「…ぇっ…わかり…ました…」


小さく返事をした
また誰かも知らない相手とのご接待
胸の動悸が止まらない


「今夜の相手はかなりの上級階級の方だ、くれぐれも失態が無いように気をつけろ」


「はい…存じております」


「…うむ、では連絡事項は以上だ」


「ありがとうございます…」


僕はお兄様がやっと去っていくのを確認すると静かに目元に溢れる涙を拭いながらお花達の水やりに戻った






















ーーー


太陽が沈みかかっている

時間が経つのは早い
もう約束の仕事の時間…

景色は暗いが花壇までの道のりは慣れているので迷わず行ける


でも…足どりは重い
その理由は自分でも既に分かっていた

 
「あれっ?」




ユラッ~~



花壇の所で人影が見えた
顔はよく見えない、仮面をつけているのか不気味な感じである


「やぁ、こんばんは。君が今夜のお相手の子かな?」


「はいっ、お待たせして申し訳ございません。」


「ずいぶん可愛い子だね、君はお花は好きかい?」


「好きです、なのでこの花壇に咲いているお花達のお世話をいつも楽しみにしています」


「そうかい、それは良かった」


見かけによらずとても優しい口調で話し掛けてきた
声が少ししゃがれているせいかお年を召しているようにも感じる


「あの…今夜僕を買って下さりありがとうございます、紳士様にとって良い時間となる事を願っております…」


「そんなにかたくならなくてもよいぞ、ここは寒いから早くこちらにきなさい。君の為に部屋を用意させた、是非見てもらいたい素敵な花があるんだ…見てくれるかい?」


「お花…ですか?紳士様からそんなお言葉を頂けるなんて恐縮です」


「ではさぁ行こう、楽しみだ」


紳士様に手を握られ緊張したがあたたかい手であった
もしかしたら今夜はいつもと違い、和やかな楽しい夜になるかもしれないと期待してしまう

そう思うと心がだんだんほんわか明るくなってくる

優しい紳士様と…
嬉しい








思わず目を細め忘れていた笑顔になっていた

もう紳士に対しての始めの警戒心は完全に解けてしまっていたのかもしれない…






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