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灰かぶりの少年49
しおりを挟む室内にある大きな時計がボーンと何回か鳴り響く
正午の合図
侯爵様の昼食の準備時間なので少し慌ただしく使用人の人達が行ったり来たりと部屋を往復する
僕はその光景を鉄格子から眺めていることしかできないので時々使用人の皆から睨まれることもあった
本当だったら自分もお手伝いして皆の役に立てていたかもしれない
そう考えてみるととても申し訳なく目を逸らしてしまう
「もう昼食の時間か…灰かぶり、そこから出てきて私のフォークを持ってきなさい」
「あっ…はい、お持ちします」
鉄格子から出てもよいとお許しをもらったので急いで別のテーブルに乗っているフォークを掴み侯爵様の方へ歩みよる
「主人を待たせるな、早くしなさい」
「すみません、只今…」
気持ちは駆け足だが実際はなかなか前へ進めないので悲しい
残っている使用人達の笑い声も何となく聴こえてきた
まるで見世物ー
おずおずと震える手でフォークを侯爵様の前に置き、すかさず昼食の邪魔にならないように身を慎む
僕は昼食というそんな豪華なモノはない…ましてや奴隷の身分で侯爵様の近くで食事なんて始めからあり得ないことだ
「おや…っ手拭きを忘れてしまった」
「僕っ、お持ちします!少々お待ちください」
「では…たのもうか」
部屋を出てキョロキョロと誰かいないか見渡す
手拭きを置いている場所なんてはじめから知らないので誰かに聞くしかない
「あっ、あの…侯爵様にお手拭きをお渡ししたいのですがどちらにあるのでしょうか?」
「はっ?なんだ奴隷…侯爵様にお手拭きだと?」
「はい…侯爵様の御命令です」
「それなら仕方ない…今、持ち合わせの予備お手拭きを持っているが…」
「ありがとうございます!」
「ふんっ、但し条件がある」
「…条件ですか?」
「こっちへ来い!」
手首を強く掴まれ、突然誰もいない部屋に連れ込まれた
「何をなさるのですかっ!?」
自分の置かれた状況が上手く把握できない
「お手拭きが欲しいんだろう?だったら黙って俺の言うことをきけ」
ダンッと壁に叩きつけられ灰かぶりの細い体が反動で跳ね返る
「あうぅッ!」
「静かにしろ、いいか?胸が露出するように上服を捲れ」
「は…っぃ…」
ペロッ…ペチャッ…
男の舌が念入りに自分の乳首に吸い付いて転がす
お手拭きの為抵抗することは無いが、もしもあったとしても体調が優れないので戯れるがままになるだろう
いつもの様に行為が終わるのを待つだけ…
男は股間もグリグリとすり寄せてくる
「う…ぅぅやぁ…ツ」
辛くて思わず涙声を発した
「…そこで何をしているのだ?」
部屋の扉がスッと開き、廊下から溢れる一筋の光が薄暗い部屋に差し込む
暗くてあまり顔は分からないが声の宿主はどこか風格があり声も低く何となく冷たさも感じた
「あっっ、貴方様は!」
「こんな所で…侯爵様に報告するぞ?」
「いやっこれはっ…そのっ‼︎」
「報告されたくなかったらこの場からすぐに消えろ」
「申し訳ございませんっっっ‼︎」
男は血相を変えてこちらを見向きもせず慌てながら逃げていった
「…ぁっお手拭き…っ」
お手拭きは男が握ったままだ
「君はもしかして侯爵様の奴隷かな?」
「はっ…いそうです」
「なぜこんな所を彷徨いている?」
「侯爵様がお使いになられるお手拭きを探していて、それで先ほどの方がお持ちになられていたのでお分けして頂く代わりに条件付きであの様なことになってしまいました」
「へー、条件ね…」
「でも、助けていただきありがとうございました!」
灰かぶりは深々と頭を下げ地面に触れ伏す
「お手拭きどうするんだい、あの男が持って行ってしまったけど?」
「…今から…また探します」
いつまでもゆっくりしていられない、どうにかしないと–
「偶然かな…実は俺も一つだけ持っているんだが」
「えっ!お持ちなのですか!?」
「そう、もう使わないものだから俺には必要がない」
まさか思ってもいない偶然で驚く
「君にあげようか?」
「いっ…良いのですか?本当に ?」
「かまわない」
「ありがとうございます、感謝します!そういえば貴方はどちらの貴族様でしょう?こちらのお屋敷の方なのですか?」
いつかお礼がしたいのでお名前だけでも聞きたい
「…それは秘密にしておこう、また近々会うかもしれないしな…」
「ぇっ…?」
どういうことだろうか
言葉の意図がわからない–
「ではまた」
そう言い残し去っていく
一体あの方は誰だったのか疑問ばかりが心残りであった
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