玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~

やみのよからす

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第10章 レイコさんは自重しない

第10章第033話 オタリンでの休日2 オタリン観光

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第10章第033話 オタリンでの休日2 オタリン観光

Side:ツキシマ・レイコ

 さて。今日はオタリンの貴族街の中にある教会参詣という体での観光です。
 セレブロさんとバールくんと。さらにアライさんとレッドさんも一緒に出かけます。
 セレブロさんたちで騒ぎにならないかと心配しましたが。周囲を騎乗した衛兵が囲ってくれていますので。それでも大きな白狼と銀狼ですからね、見かけた民からは警戒されまくりです。エイゼル市では、子供達が寄って来るくらいには人気者なんですけどね。
 貴族街にて馬車から降りたは降りたで、今度はアライさんとレッドさんも目立ちますが。さすがにきちんと連絡が行っているようで、騒ぐ人はいません。注目は浴びまくりですけどね、モフ率高いですし。

 教会の見学は、さすがにセレブロさんとバールくんは外でお留守番ですが。レッドさんはアライさんが抱っこして回ります。レッドさんがセットなら、まぁ動物扱いされるなんて問題が起きることは無いでしょう。


 教会では、司祭さんが付いて、展示室に展示されている物の説明をしてくれます。
 当時の兵士の装備とか、貴族の服装とか。人物画や、その人が所持していたという剣なんかも展示されています。

 「これ、ロトリーてみたことあります」

 アライさんが見つけたのは、当時の硬貨と一緒に豪華な布張りの台に展示されている帝国金貨です。金は金ですが、発掘された感のある一枚。傷が多い一枚ですが、厳重に展示されています。

 「東の帝国の金貨なんだって~ 埋まっていたんだって~ ごほうびようだろうだって~」

 クラウヤート様が抱っこしたシャールちゃんの解説付きです。この砦の一角に埋まっていたとのことです。年代測定が出来る訳ではありませんが、まぁ帝国からセイホウ王国を経由して持ち込まれたのは間違いないでしょう。
 実際、セイホウ王国で流通していた貨幣に加えて、褒美用に帝国製の大金貨が持ち込まれたという記録があるそうで。シャールちゃんが言っているように報償用なのは間違いないでしょう。ただ、なんでこれが埋まっていたのか。想像をかき立てられますね。

 「レイコから貰った金貨はピカピカだったわよね?」

 「お爺さまの執務室に一枚、綺麗なのが飾ってあります」

 …最初にアイズン伯爵に会ったときに、持っていた金貨の扱いが雑だと叱られたのを思い出しました。たしかにここの金貨に比べれば、あれは美品と言えるでしょう。
 手持ちの帝国金貨のほとんどをアイズン伯爵とネイルコード王室に譲ってしまいました。まぁ個人で持っているより、欲しい人のところで管理された方がいいでしょうし。自分の分は数枚あれば十分です。
 マーリアちゃんにも一枚、ネイルコード大金貨と交換で譲っています。最初は無償で渡すつもりでしたが。当時の評価額で買うと言われまして。双方妥協して地金価格で譲りました。どうせ売らない使わないのなら、それで十分です。
 ちなみに。最初に教都に来たときに支払いに使った帝国金貨…アライさんを引き取ったときの支払いですね。あれは教都の教会本部で展示されているそうです。

 「…刻まれた傷は、歴史そのものだからね。ここの金貨の方が、私が持っていた物より価値があると思うよ」

 私が貰ったのは、当時の本物を取ってあったのか、赤井さんが作った物か。…性格からして、取っておいた物っぽいですが。
 この金貨がどうして埋まっていたのか。何かしら物語があるのでしょう。それを想像させてくれるこの傷にも、きちんと価値があります。

 当時の筆記記録なんかも残っています。初代領主による物ですね。まだ国王は名乗っていませんでした。
 航海日誌には、上陸した直後にキャンプ地を一匹の鹿にキャンプを襲撃されて。大きな被害を出しつつもなんとか倒し、ここで得られた最初の糧となった…ということが書かれているそうです。
 こちらの鹿は、魔獣化していなくてもでかいですからね。北からの魔獣のせいでしょうが、狼もボアも蛇も…鶏すらもでかい。

 昼食は、砦の中のレストランでは。…鹿肉、出てきました。
 山地の方で狩られたのが、よく取引されているそうです。…なんかこの街では縁起物扱いだそうです。

 「しかのおにく。おいしいね」

 お肉大好きシャールちゃん。アライさんが隣でスタンバります。
 鹿肉は、冬前が一番美味しいそうです。日本にあったような霜降り牛ではないですが。赤身肉のなかなか上等なステーキです。カトラリーにナイフが付かないので、サイコロステーキですけどね。塩は添えてあって、お好みだけ付けてください。

 「アイズン伯爵と最初にあったときにでかいボア倒したのを思い出したわ」

 あの後の焼き肉大会と。…半泣きで匂い落としに服を洗ったのは。もう良い思い出です。
 何があったのか説明したら、陛下達に笑われました。

 クラウヤート様が、セレブロさん達のおみやげに肉を分けてもらえないか交渉しています。両前足が残っているそうなので、金貨を払って宿に続けてもらうことになりました。


 昼食後。街に戻りながら道中、ちょっと離れたところから、山から市街地にかけられている水道橋なんかも見学します。

 「今の街では、井戸をほってもあまり水が出なかったから、山から水を橋で渡しているんだって。すごいよね、水のために橋をつくるなんて」

 シャールちゃんが説明してくれます。
 砦の裏の山地からの水利を想像します。街は海水面よりはちょっと高いところにあり、山からの川は砦と街の間を流れています。地下水も途中で逸れるか深そうです。そのために、砦から街へ水道橋を作ったのでしょうね。

 この世界に来て見た海近くの街が、高台や山の麓に作られることが多いのは、想像ですが津波とかの警戒かもしれません。帝国のレイコあたりからの知恵なのか、経験則なのか。海面のすぐ近くとかに建物が無いわけではありませんが、街の中心部や砦は、津波避けるような位置取りがされているように思います。
 こちらで地震の経験はセイホウ王国で起きた一回きりで、大陸ではあまり起きないようですが。大洋の中の島で大きな地震が起きるのなら、沿岸で被害が出るような津波も起きてきたのでしょう。


 宿からも見える、港の防波堤代わりの岩で出来た半島。ここからは港が一望できます。
 小さな砦…というより台、お台場の"台"ですね、それがあって。昔から文字通りの灯台として使われているようです。薪をくべるところには、今は炭と灰しかありませんが。夜には、組まれた鉄枠に立てかけた木を燃やすのだろうと思います。下には干した木材が蓄えられていましたしね。

 「あ。あの旗、バンシクルのっ!」

 シャールちゃん、なかなか目が良いですね。港に入っている船の旗が見えるようです。
 サイズからして漁船なのでは?と思いますが。こちらでも入港時には国籍を示す旗を立てるのが慣習です。

 「多分、バンシクルとオタリンを往復しつつ、沖で漁業をしている船でしょうね。港近くとは違う魚がけっとう捕れるそうですよ」

 バーラル様が補足してくれます。接岸した船から、釣果を水揚げしているようですね。明日の市場には、珍しい魚が並ぶかな?

 灯台の砦からは、港街と砦が一望できます。
 山の様子からして、ここら一帯は草原か森林だったでしょう。そんなところに植民してきたセイホウ王国の人達。

 「どうしたの?レイコ」

 「ん? ん~。まぁ人はたくましいなって思って」

 ぼーと街を眺めていたら、マーリアちゃんが声をかけてきました。
 六百年でここから大陸に広がっていった人々が確かに居ました。

 「多分だけど。河口の、あの辺よね、初めて上陸するとしたら。そこをちょっと上ったあたりに最初の集落を作ろうとしたら…」

 「鹿に襲われたって手記にはあったわね」

 教会の展示物を思い出したマーリアちゃん。
 魔獣化した鹿ではなかったと思います。そんなのが初手で来たら、すぐにでもここを撤退していたでしょうね。

 「周囲に生えていた森か林か。そこを伐採して集落の周りの柵を作って。でもそこに定住するのには不安を感じて…」

 「そうね。元の地形がわかりにくいけど。川向こうのあの山の麓、そこに移って砦を築いて守りを固めたんでしょうね」

 「それでも。畑は川沿いに広げつつ。さらにここから東の平野を目指して。当時の様子は、もう街には残っていないけど。どう発展してきたのか、なんとなくわかるのがすごいわよね」

 レッドさんを抱っこしているアライさん。シャールちゃんも一緒。なんかレッドさんがちらっとこちらを見たようですが。
 レッドさんなら詳細を知っているかな? まぁその記録を覗き見るのは、なんか無粋にも感じます。

 「レイコ。ここにも鉄道が通るのよね? 川の近くの畑、あそこを通すしか無いかな?」

 こういう幅いっぱいに街と畑が広がっている所では、土地確保は難題です。

 「マーリアさん。その辺はまだ広まらないよう注意してくださいね。土地権を買い占めようとする人が出るかもしれないですから」

 クラウヤート様が話に割ってきました。
 この時代。土地は国の物で。売買賃貸されるのは、土地の使用権利、土地権です。実質財産としては扱われていますが。それでも所有権は国ですから、土地の強制徴用くらいは合法です。
 さすがに只で取り上げるには、自然災害や戦争の対策等、相当な理由が要りますので。最低でも土地の相場価格で買い上げる必要は出てきますが。鉄道の為に必ず必要とされる土地!なんて、高騰確実な商品ですよ。

 「!っ。確かに、むやみに話題にしない方が良いわね。」

 マーリアちゃん吹聴の危険性を理解してくれたようです。

 「とは言いつつも、僕も想像してしまいます。砦から街へ伸びている道、駅を作るとしたらその脇でしょうか? でも、もっと港に近い方が良いかも… いろいろ考えてしまいますね」

 「今のクラウヤート様、アイズン伯爵に似てたわね」

 楽しそうに話すクラウヤート様、クスクス笑うマーリアちゃん。

 「いや。…六百年前に何も無かったここに、街と砦ができて。そしてこれから鉄道が通って、さらに発展すると考えると。将来どうなるんだろうと考えるとワクワクするんです。ほんと、お爺さまが街の開発に執着する理由がわかる気がします」

 港からの運輸。倉庫の増設。いっそ港をもう一つってそちらに鉄道を通すか。なんかそんな話で、マーリアちゃんとクラウヤート様が盛り上がり始めました。
 うん。確かに後継者たり得るってところですか。



 宿に帰ると。なんとでかい魚が届いてました。きちんと絞められて血抜きもされて、さすがに冷凍とまでは行きませんが。港で氷が盛られたようです。
 宿の人が市場の偉い人に打診しておいてくれたそうで。おそらく沖を回遊しているんでしょうね、穫れたのを持ってきてくれました。もしかたら、さっきのバンシクルの船かもしれませんね。

 五十キロくらいと、マグロとしてはちいさい…なんかそういう種は地球にもいましたね。ビンチョウマグロでしたったけ?…正直、マグロの種類までは区別できません。サバやカツオだって、サイズが変わったら私にはマグロと見分け付かないでしょう。
 それより。冷凍庫はこちらにも来てていたんですね。魚の保存用と言うより、製氷機として使われているようですが。

 赤身の様子は、カツオよりは赤くなく、マグロよりは、赤と白のコントラストのあるブリよりですかね? 刺身にしたくなる良い感じのお魚です。ただ刺身は、寄生虫対策の冷凍が普及するまで我慢です。
 ともかく。これでツナの材料ゲットです。あとは油と玉子拡販要員の確保を。

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