玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~

やみのよからす

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第1章 エイゼル領の伯爵

第1章第017話 メニューの追加です

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・Side:ツキシマ・レイコ

 全部の馬と、食事の準備などに使う水を合わせて、結局5往復ほどした。
 結構綺麗な川だけどそこは用心して、飲む分に関しては一度湧かしたものが用意されているそうだ。このレベルの衛生の知識はあるのね。

 水を汲んでいる最中に気がついたけど。鮎だか鮭みたいな魚の影がある。鱗の輝く感じから、鯉には見えないな。結構大きいですぞ。

 「川魚を取ったりはしないんですか?結構大きいのがいましたけど」

 エカテリンさんに聞いてみた。

 「時間ができたら釣りをしている奴もいるけど。数匹釣れたところで皆に行き渡らないからねぇ」

 たしかに。全員の食事に出すのなら、そこそこの数は必要かな? 試してみましょう。
 川辺で靴と靴下を脱いで、浅いところを進む。エカテリンさんが付いてこようとしたけど、水面から離れて待ってもらった。
 頭を出している岩にひょいっと飛び移ってから両手を水に浸し、ビッと電気を流してみた。せいぜい数百ボルトくらいで、手の近くしか効果無いかな?と思ったけど。岩陰に隠れていた魚が何匹が浮いてきた。
 気絶したそれらを、流されないうちに水くみの桶に入れた。最初の一発で3匹ほど取れた。

 いくつかの岩に飛び移りつつ、同じ事を繰り返して、大小二十匹くらいがとれた。

 「マナ術で麻痺させるってのは聞いたことがあるけど。それみたいなもんかい?」

 「同じかどうかは知らないけど。多分似たようなものじゃないかな?」

 両手の人差し指の間で、パチパチとスパークさせてみた。

 「ああ、たぶん麻痺系のマナ術と同じだな…そんなに強い光のは見たこと無いけど。上手い奴はな、殴った瞬間とか、剣で組み合った瞬間に、その技をちょこっと使うんだよ。大して威力は無いけど、相手の隙を作るには十分って感じでな。私も鍛錬でやられたことあるけど、うおってなった瞬間に追撃入れられるからな、それ」

 感電とか失神とか、そこまでできる人はほとんどいないとのこと。やっぱ私が規格外ってとこなんでしょうね。



 採ってきた鮭っぽい魚は、料理担当の人に喜ばれた。大きい方からさっそく腑を取って三枚に下ろしていた。

 「今夜は豪華に一品増えるな」

 料理担当の人も騎士である。料理は本来持ち回り当番なのだそうだが。隊の中に料理が得意な者がいる場合、他の作業を免除して料理に専念してもらうんだそうな。食事は美味しい方が皆が幸せだからね。

 下ろした方の魚はソテーのような料理にするようです。
小さい魚は、開いて塩を振って串に刺しておく。そもそも川魚は保存が効くものでも無いので、そのまま今夜の不寝番の夜食にするそうです。

 騎士隊長のダンテさんと料理番の騎士の間では、赤竜神の巫女様に何をお出しして良いのか…ということで一悶着ありました。とは言っても、野営の場でそうそう特別な料理など出せるものでも無く。
 そこは、私が皆と一緒のものを食べてみたいと要望したことにして、治めて貰いました。

 「満腹かアレルギーでも無ければ、出された物は黙って喰えってお母さんが言ってた。おもてなしにケチ付けちゃだめだって」

 「アレルギー?」

 料理騎士さんが聞く。

 「人によって、ある食べ物が体に合わないことがあるんです。それをアレルギーって言います」

 「あまり聞いたことないが…古いものを食べたらお腹壊すのとは違うのか?」

 「それとは別ですね。普通は毒にならないものが、人によって毒になるってことですから。酷いのになると、麦が毒になるなんて話もあります」

 「麦が毒なんて、どうやって生きていけば…って。ああ、そういうことか」

 料理騎士さんが発言の途中で納得していた。
 そこまでのアレルギーだと、麦が主食の世界では生き残ることもままならないはず。周知されること自体がないのだ。
 地球では、そういう体質でも生き残れる。だから、そういう体質が人類に溜まっていく。
 突然変異と自然淘汰は進化の原動力だが、自然淘汰が働かなくなった人類は生物としては劣化していく…ってお父さんが言ってたな…

 「食わず嫌いは損している。一度は口にしておけ。ってのも、お父さんが言ってました」

 まずいと思っている物をわざわざ出すところはないのだから。もしかしたら美味しいものかもしれないものを食べ逃すのは勿体ないと、父は何でも食べていた。私も好き嫌いは無いほうだ。
 そもそも、特別扱いされると居心地が悪いと感じる、心は小市民だから。皆と同じ物を戴きたいですと、正直に告げました。



 野営地の真ん中に薪を焚いたが。煮炊き自体は簡易な調理場でやっていた。マナを使った可搬式コンロみたいなものがこの世界にはあるらしい。
 焚木は、灯りと暖を取るためだそうで。さらになにか香草のようなものを燻していた。これの煙が虫除けになるんだそうな。

 荷馬車にかけてあった板と、折りたたんでしまってあった木足を組み立てて、簡易テーブルを組んで。私は、ジャックさんや隊長さんたちと同じ卓にて席に着くきます。
 芋、野菜、保存肉のスープとパン、そして川魚のソテーが並びます。他の人たちも、トレーとカップに同じメニューをもち、岩やら丸太やらに腰かけて食べ始めた。

 西の空はまだ赤いが、天頂はすでに夜の色。焚木からの火の粉が、煙と共に上っていき、瞬き始めた星に混ざっていく。
 夜の帳が降りつつある宿営地で、和やかな感じで食事は進んでいった。

 ソースが面白い味かな? 見た目は茶色で、味もウスターソースよりのお好み焼きソースって感じ。お肉に合う味ですね。港ソースって言うんですか。
 レッドさんの分は、私と同じ物をお願いしました。もちろん、量は減らしているけどね。ただ、私たちはフォークとスプーンで食べるのですが、この子には無理なので。パンに挟んでミニサンドイッチにしてもらいました。
 器用に掴んで、喜んで食べています。アイリさんもエカテリンさんも、それをニコニコして見ています。ほんとこの子は行儀が良い。猫食いもしないし、起用に食べますね。

 「ク~」

 「うん。美味しいね」

 料理騎士の人が、軽くガッツポーズしていました。

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