玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~

やみのよからす

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第4章 エルセニム国のおてんば姫

第4章第001話 もろもろ開発依頼してみます

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第4章第001話 もろもろ開発依頼してみます

・Side:ツキシマ・レイコ

 というわけで。マルタリクのハンマ親方のところを訪れています。アイリさんとタロウさんも一緒です。

 私のこちらに来てからの職歴が、貴族護衛から、食堂の給仕、土木現場に、戦争の最前線。…なんか凄いことになっていますが。まぁ、この世界で生きていくことにしたのだから。この世界の進歩のために出来ることからこつこつとやっていくことにしました。
 とりあえず、これまでで気になっていた開発依頼をまとめてやってしまおうかと思います。
 でも、この世界の今の技術で出来ること出来ないことははっきりしてますので。日々の生活や作業に便利そうな物の提案から…ですね。自分では使わない物もあるけど、早め々々です。

 最初は手押しポンプです。
 宿の水場は、シーソー式…人力クレーンと言った方がわかりやすいかな?。
 この街の井戸は、水脈まで掘ったというよりは、街に整備されている上水道の水溜場という感じなので。クレーン式もそんなに深くない井戸だから使える手ですが、モーラちゃんだと体重が軽いのでちょっと苦労します。釣瓶を引っ張り上げるよりはだいぶ楽なのでしょうが。
 手押しポンプの図面を描いてみましたけど、図だけだとピンとこないようで、原理の説明からしないといけませんでした。
 竹と棒と布切れで水鉄砲を作って、ピストンで水を吸う…というところまで説明すれば、後の理解は早かったですね。
 問題点は、鋳造する本体の原型と型作り。弁の部分の素材と耐久性。井戸の底まで伸ばすパイプは、まんま竹を使うことになりそうです。便利ですよね竹。水道パイプの代わりに竹は結構使われているそうで。竹の持ちを良くするために漬けておく薬みたいなのもあるそうです。防腐剤ですかね?
 まずは、竹と木材で、原理確認のための試作をすることになりました。
 一番原始的なピストンの利用方法ですけど。将来的には蒸気機関なんかも狙っています。

 つぎにシャベル。
 ここの土木現場で使うシャベルは、木製の前縁だけが鉄になっているだけのもの。しかも平ら。日本でも大昔に使っていたタイプですね。とりあえず、刃?の部分を全て鉄製にしたものの試作依頼です。
 尖った先端、足で押し込める構造と強度。土を掬い易く、なおかつ全体の強度を上げるための湾曲。
 まぁ、鉄の使用量がぐんと増えるので即採用とはなりそうにありませんが。いくつか試作してみてくれるそうです。作業の効率が上がるのなら、採用の可能性はあります。材料の鉄に関しては、ユルガルムでの鉄生産量も増えそうですし。
 ついでに、備中鍬のアイデアも出しておきました。先が三つに分かれた鍬で、畑の土をほぐすのに重宝しますし。普通の鍬よりもまだ鉄の使用量は少ないですからね。
 うん。農民一人あたりの生産量を増やす知識は、出し惜しみしない方向で行きましょう。脱穀機とかのアイデア等も伝えておきました。

 さらに猫車。
 土木の現場では、土砂の輸送が二人で棒を肩に担いで間に紐で笊をぶら下げて…というやり方でしたので。一人でもそこそこ楽に運べる道具…ということでの依頼です。
 一通り全木製で作れるかな? 車軸支えくらいは金属パーツを当てたいところですが。
 職人さんも、木製でいけるかどうか検討しています。とりあえず試作してみてくれるそうです。上手くいけば、土砂の運搬もかなり楽になると思います。

 完全趣味でたこ焼き器。
 こちらは、まずは銅板からのたたき出しになりそうですね。
 全鉄製の方が熱の持ちが良いので、大量にタネを注ぎ込んでも冷めにくいという利点はありますが。マナコンロの熱量はもともと結構なものですから。こちらはまず銅製で様子見して、タコヤキの試作が済んでから検討します。
 青のりっぽい海藻については、カルマ商会で「香りの強い干した海藻」とやらはあるそうなので。それを試してみる予定です。
 …問題はタコですね。イカでさえ食べていなかったのに、ましてタコなど…です。でかいタコはこの辺には居ないそうなので、イカとか他の食材で代用になりそうです。まぁ、肉とか魚でも美味しそうではあります。
 鰹節も欲しいところですが。堅い木のように成るまで干した鰹…一度茹でてから麹菌を生やして乾燥と熟成…。一応製法事態はガロウ会頭にも伝えてはありますが、問題はカビの種類ですよね…。試してみてはくれるそうですが。
 まぁ、ソースとマヨネーズはあるのです。鰹節はなくても良しとしましょう。…中に魚入れればいいじゃん。

 ついでに、板バネです。
 馬車の防振には、箱状の部屋を乗せた木製フレームそのものしなりで抑えているようですが。乗り心地はいま一つです。
 職人さんの話を聞くに、鉄製の板を使おうとしたことはあるそうです。U字型横にしたような鉄板を部屋と台車の間に入れたそうなのですが、今度はビヨンビヨンと揺れが収まらないという事態に。
 防振には、衝撃吸収と振動減衰の二種類の構造が必要です。バイクのサスペンションなんかが分かりやすいですね。スプリング部分で衝撃吸収して。オイルダンパー部分で振動を減衰させます。この二つのバランスが大切。
 ただ、スプリングもオイルダンパーもこちらではまだ無理ですので。鋼の板を重ねてバネにする構造を取ります。この重ねるってのが板バネの肝でして。重ねた板が擦れることで振動を減衰させてくれます。単純な構造ですが、それだけに地球でもいろんなところで使われていました。

 原理を説明したら、こちらも試作してみたい…とのことですが。そろそろハンマ親方のところではキャパオーバーです。
 一度、マルタリクの職人組合の方に出向いてくれとお願いされました。



 とりあえず昼食後。今日の最後の依頼、紙の生産についてですが。ここで職人組合の方を訪問しています。
 完全に鍛冶職人の埒外の話になりますので、職人ギルドの協力を仰ぎます。

 この国では、証文などの高級用途には、羊皮紙が使われますが、安い物でも数十ダカム、数千円しますので。日常レベルでは、木の板が使われています。ただ、単なる切り出した板では無く、鉋で薄く削ったような木の板です。
 斜めにした台の方に鉋を取り付けて、その上を木材を滑らすことで、薄く削り出し。耐久性を上げるために特殊な草を煮詰めたものに浸して伸ばして乾燥させることで、この国で広く使われている筆記用板となります。木紙…というより板紙とでもしてもしておきましょうか。
 この板紙を作る木には適した品種があるそうで。ネイルコード国東のアマランカ領がおもな産地だそうです。
 普通は、一枚が葉書くらいのサイズ。A4くらいの大きなのも無いわけではありませんが、曲げには全く弱いので、大きな物の場合には木目を直行させる形で貼り合わせたタイプが使われるこうです。もうこれは薄い合板ですね。

 文明と文化の発展には、知識を蓄え広める紙が必須です。人類の三大発明とされるものの一つには活版印刷がありますが。当然、印刷以前の問題として印刷する対象が必要です。件の鉋で削った板の利便性はそこそこ悪くは無いので、この社会では長くこれで停滞してしまったようですが。耐久性と扱いやすさはは紙と比べるべくもありません。

 え? 東方諸島ではすでに紙らしい物が使われている? ただ、輸入するとなると高額になる上に、高級度で羊皮紙以下とされているので、大規模に輸入とは成っていないとか。あと根本的なこととして、作り方がまったく分らないそうです。

 皮を剥くと中身が白い、葦のような多年草。木も使えるけど、資源としての継続性を考えると、とりあえず草の方がいいです。水辺に群生している竹みたいにけっこう高い植物、日本なら池などでけっこう見かける草ですが。
 その東方諸島の人に聞くというのが一番手っ取り早いとは思いますが。もっとも、こちらの世界に全く同じ植物があるわけでは無いので、この国にある草が使えるのか、この辺は探してもらわないといけません。
 その草を砕いて灰汁と一緒に煮てほぐして。粘性のある植物の汁と混ぜて溶いたところを簾みたいなので漉けば、紙のできあがり。
 職人組合の方曰く、記録用の紙…というか板の需要は増えるばかりなので、是非研究してみたいとのことです。
 ハンマ親方、なんか関係ないって顔して聞いてますけど。もし成功したら、その砕いたり漉いたりする機械は、多分親方担当ですよ? ミキサー作っておいて良かったですね。



 最後に、蒸留酒です。実は、飲料用というよりは消毒用に欲しいいんですよね。ダーコラ国のあの街では、そこらの酒では消毒効果が足りないとレッドさんに指摘されていました。
 ずっと西の方から入ってくる製法が分らないキツい酒…というものは存在するそうですが。その作り方が分る!ということで、お集まりの職人ギルドの人達が騒然としています。…作り方が分ると言うよりは、これでいくらでも飲めるぞとか考えてませんか? 職人さん達はドワーフには似ているわけではありませんが、こんなところがドワーフです。
 蒸留の原理は簡単。水が沸騰しない程度の温度にお酒を加熱すると、アルコールだけが蒸発しますので。それを冷やして集めるだけ。一度で3倍程度の濃縮ぐできるはず。消毒に使うには、大体3回くらい蒸留する必要があります。
 職人には怪我が付きものなので、消毒の話も熱心に聞いてくれます。ともかく原料は安い酒でいいので、蒸留すれば数段上の酒になりますし。消毒用なら、いくらでも需要はあるでしょう。
 飲む用は、消毒を兼ねて内側を焦がした樽に入れて冷暗所で数年寝かせます…あたりも押さえておきましょうか。香りの良い木材で作った樽、今からキープしておきたいですね。



 新年明けてしばらくしてから、数回雪も降りましたけど。次の日には溶ける程度でした。何年かに一回はドカンと積もるそうですが、毎年だいたいこんな感じだそうです。
 ただ、ユルガルム領の方は結構積もるそうですし、今年もまだ油断は出来ないとのことですが。

 そんな雪の積もったユルガルムからは、ターナンシュ様無事ご出産との吉報も届きました。例の崖崩れの現場も、小型馬車程度なら通れるようになり、雪の中でもなんとか連絡が届いたそうです。

 夏には、伯爵から再度ユルガルムに一緒に行って欲しいと言われています。お孫さんに早く会いたいですもんね。

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