玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~

やみのよからす

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第4章 エルセニム国のおてんば姫

第4章第002話 ツインテール来襲

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第4章第002話 ツインテール来襲

・Side:ツキシマ・レイコ

 日本で言えば二月くらいですかね。寒い日が続きます。
 この時期にはあまり雪は降らないそうですが。水を張った桶なんかを出しておくと、氷が張ったりします。
 今日の私は、ファルリード亭でモーラちゃんのお手伝いをしています。なんかウェイトレス業も慣れましたね。
 お昼時の繁忙期を過ぎて、まったりした雰囲気になってきて、そろそろ私達も昼食を食べようか…という頃。

 「ちょっと!触らないでよ!」

 という少女の声と共に、ドカっという音が。
 痴漢でも出たのか?と思うと同時に、宿の入り口がバタンと開かれました。

 「ここにツキシマ・レイコがいるって聞いたんだけど!」

 そこに立つは一人の少女。

 銀髪を、肩甲骨まで垂れるツインテールにしてる。瞳は紅く。耳はモーラちゃんほどではないけどちょっと尖っているかな。
 身長は私よりちょっと高いくらいだろうか。見た目12歳くらい? 凄い美人さん、いや美少女だよ。

 その背より長い、先端に袋を被せたような棒かなにかを担いでいます。
 服はライムグレーンのワンピース、下にはパンツ…ズボンを履いてますね。細かい刺繍が施された結構な高級品に見えます。ベルト部分にはポシェットがいくつか。
 ゴルゲットは金色に、あれは赤竜神のマーク…教会の紋章ですね。

 外には転がっている男の人が。…本人には誰も直接は聞いていないですが。多分ファルリード亭の監視と護衛をしてくれている国か領から派遣されている人。お昼はいつもファルリード亭で食べてくれています。
 この子を制止しようとして飛ばされたようですね。この子、結構強いようです。

 ガタン!と、店内で食事をしていた男の人が立ち上がります。多分、倒れている人と交代で昼を食べていた方です。
 でもまぁ。この子を男手で排除するのも違う気がします。女の子に向かおうとする男の人を手で制して、私が対応することにしました。

 「私がツキシマ・レイコですが。お客様、何か御用でしょうか?」

 エプロン姿ですので、接客モードで。

 「あなたが魔女ツキシマ・レイコね! 色香で兵士を誑かして、ダーコラ国との国境で町を襲わせたという!」

 ピクン。

 …うん、大丈夫。気にはしているけど気にはしていない。
 でも…襲わせたとまで言われると、ちょっと来るものがあるかな。

 「…って。その格好、子供の給仕? あんたみたいなチンチクリンがどうやって色香で誑かすのよ?!」

 知らんがな…

 「黒髪って所以外、聞いていた容姿と全然違うじゃ無いのっ!」

 「…そんなこと言われても、私がツキシマ・レイコなのですが。ほら、レッドさんも」

 カウンターでお休みだったところごめんなさいね、レッドさん。ちょっと姿を見せてあげて下さいな。

 「クー? クァー…」

 あくびをするレッドさん。かわいいです。

 「…たしかにドラゴン? 小竜とか言われていたけど、想像よりだいぶ小さいわね。」

 というとき。うおっ!なんかでかいのが戸の外に姿を見せました。
 付き従えるは、体長二メートルはあろう銀狼。尻尾と頭を含めれば三メートル半はあるでしょうか。知ってます?犬の体長って、お尻から肩までなんですよ?
 伯爵家に引き取られたバール君は、白狼…というより、サモエド的なかわいらしいモフモフでしたけど。目の前に居るのは、銀狼、まさに狼!。毛の透明度が高いのか、単なる白では無く、角度によって黒く、全体として銀色に煌めいています。その顔つきは精悍で、犬や狼というよりはキツネに近いかな。しかも、金色の瞳に縦長の瞳孔。
 もし地球で見かけたのなら、フェンリルとでも呼びたくなるような神々しさがあります。

 「セレブロ、そこでちょっと待っていて。食堂には入れないから」

 ん? 非常識な少女から、なんか常識的なセリフが…

 「ともかく。あなたを倒すなりダーコラ国に連れて行くなりすれば、エルセニムの仲間が助かるのよ! でも、子供をしばく趣味はないから、大人しく捕まりなさい!」

 あなたも子供ですけどね。
 うーん、どうしようかな?

 「ちょっと作戦タイムを要求しますっ!」

 「? 許可するわっ!」

 …ノリはいい子ですね。
 店内の先ほどの男の人に話しかけます。えっ俺?って顔をしてますけど、もう国か領の人だってことは分ってます。
 ちなみに、店の前で飛ばされた人は、起き上がって通りからこちらの様子をうかがっています。大きなケガは無いようで、良かったです。

 「あ…あの、レイコ様?」

 「あなたが公務でここにいるのは分っていますので。とりあえずその辺は置いといて。あの子、どうしたら良いと思います?」

 「ああ、また頭領にどやされるな。ここの飯は美味いから役得だと思ってたんだけど。…まぁいつもならここに近づく不審者は、捕縛して連行して事情聴取なんですけど。表ではり倒された彼、私より強いんですよね。私には捕縛は難しいでしょう」

 「では、私が捕縛しても良いんですよね?」

 一応、司法権の確認。いきなり店内で暴れたのなら問答無用ですけど。妙なところで常識的です、この子。
 捕縛よりは話し合いで解決したいところですが。

 「はい。それに越したことは無いのですが… なんか訳ありな感じですね、あの子。ああいう子を捕縛連行したら、レイコ様が不快に思われませんか?」

 …そのへんも慮ってくれています。ほんと頭が上がりませんね。

 「とりあえず、私が話をしてみます」

 「…承知しました」

 タイム終了です。

 「あの。あなたのお名前は?」

 「そう言えばまだ名乗っていなかったわね。マーリア・エルセニム・ハイザート、これでもエルセニム王国の王族よ!」

 エルセニム、聞いたことない国ですね。

 「ダーコラ国の北にある小さい国です。閉鎖的であまり周辺と交流が無い小国なので、詳細は不明なのですが。銀髪紅目の魔族が住むとかいう噂が…」

 と、男の人が教えてくれました。
 魔族とか言う言葉が聞こえたのか、マーリアさん、顔を顰めています。だめですよ、人を見かけで判断しちゃ。
 まぁ確かに、この子からは今まであった人達より桁違いに濃いマナを感じますね。エルセニム国の人ってのは、そういう人種なのでしょうか? レッドさんもちょっとびっくりしています。

 「マーリア様? とりあえず私は、ここから出ていくつもりも大人しく捕まるつもりもないので、抵抗したいんですけど。良いでしょうか?」

 「…いい根性してるわね。いいわ、決闘で身の程を教えてあげるっ! 表に出なさいっ!」

 決闘ですか。とりあえず店内で暴れるつもりは無いようです。…ちょっと面白くなってきました。

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