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第5章 クラーレスカ正教国の聖女
第5章第010話 マナの応用
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第5章第010話 マナの応用
・Side:ツキシマ・レイコ
さて。ベビーパウダー作りにちょっと道草しましたけど、目的の講義の方です。
まずはノドムさん達エルセニムのマナ師と、ユルガルム領のマナ術師によるマナ操作全般の講義です。私も、マナが一般的にどう利用されているかは、基本的なことしか知りませんからね。
マナというのは、基本的にバッテリーであり回路でもありとして動作します。
まずは、一番の基本であるマナコンロ。この世界で一般的に普及している熱源です。トングみたいな金具をマナ板にセットすると、マナ板が赤熱するほど発熱します。
魔獣から取り出した首から脊柱の骨を細かく砕いて加熱。そこに石英の粉を混ぜてさらに加熱。焼結させたものがマナ板です。こういう処理をすると、マナの疑似分子は、自分で整列するようですね。整列方向がバラバラなので網目状となりますが、接続は確保されます。この辺がマナの性質ですか。
ユルガルム領では、このマナの発掘も出来ます。蟻の巣になりましたけど。ただ、まだ発掘の効率は悪いようです。蟻から結構な量のマナが回収できたので、魔獣でマナを濃縮できるのでは?という話が出ていますが。マナの採掘に蟻を使おうという人はまだいないようです。まぁ蟻は全滅してますけどね。どっかから探してくる?
マナ板をトングで挟むと、トングを介して一方方向の電流が流れます。ただ、その電流で発熱するわけではなく、その電流が切っ掛けとなってマナがエネルギーを放出…という仕組みのようです。トングに流れる電流を増幅して、マナ板の中でジュール熱になる?
マナランプも原理的には似たような構造ですが。マナコンロの発熱に使う電流を別のトングに流して、そのトングを赤熱化させます。エネルギーはほとんど熱になって、光の量が多いとは言えないですね。そもそもトング部分が白熱するほどの温度に耐えられません。
とまぁ、この辺までがネイルコードとかで見たマナの利用ですね。
森林などの木材や化石燃料に依存しないだけでも、画期的なエネルギー源と呼んでいいものですが。単純に熱源としてだけしか使われていません。メンターたる体を持つ身からすると、いかにも勿体ない…けど。さてどう応用をしていくか。
ちなみに、マナ板がバッテリーから電気を取り出すというのなら、レイコ・バスターはバッテリーを爆発させるような物です。これを意図的に誘発できるのは、いまのところ私やレッドさんに、たぶん赤井さんだけのようですね。
応用出来たとしても、ダイナマイトの代わりにしかならないでしょう。まぁダイナマイトはそれはそれで有用ですが、工事以外に使われるのは日の目を見るより明らか。
これらとは別に、マナ術というものがあります。体内のマナに新陳代謝の一部を担わせて、常人以上の筋力を出したり。達人ともなれば、レイコ・ガンのようなマイクロ波を出したり、電気を流したりなんて技も出来ます。マナ塊を持った状態でそのマナ塊から打たないと、自分へのダメージもあります。
マナ術のように、マナがどのように人間の思念に反応するかは私もまだよく分かっていませんが。人の意思である程度マナの回路を組み直すことも出来るようです。体内に取り込まれたマナがナノマシン様にに人間の神経系に張り付いていて、そこからの操作を受け付けている…というイメージですか。魔獣のマナ塊を見るに、逆に宿主を乗っ取っているようにも見えます。
というところで。私がエルセニム国で見て気になっていたのは、マナランプの点滅です。
ノドムさんが、チョークみたいなマナの棒? 魔獣から取り出したマナの塊を削り出したものだそうです。とりあえず、マナチョークとでも呼びますか。それでマナ板の上をなぞっています。
なぞった後に薄ら模様のような線が描かれて…最後に一カ所、銀線を貼り付けて…スポット溶接ですか?それ。マナ術で瞬間的にマナチョークの先を加熱して…ってそんな操作もできるんですか。
最後に、接続されたところをトングで挟むと…マナ板の一部が点滅するように赤熱を繰り返しています。
…マルチバイブレーター回路ですよこれ。ICがシリコンの上に回路が印刷されたものであるように、マナ板の上に回路を描いちゃいましたよこの人。コンデンサーでは無く、赤熱時の抵抗増加をスイッチングのトリガーにしているんですか。
これは、ずっと昔からエルセニム国のマナ師に伝わっている技術だとかで。マナ術師ではなくマナ師って呼ばれているわけが分りました、確かに別物です。
まぁ、何の役に立つのか?と言われれば…この価値の神髄を知っているのは、地球の人だけでしょうね。
…ともかく、ちょっと応用について考えてみましょう。
赤熱している部分から電気が取り出せるように改造してもらいます。スイッチングの回路とは垂直に銀線あたりを配線するだけで電気が取り出せるようです。さらに三つの点滅回路を繋いで、順番に電流が流れるようなマナ回路を作って貰います。
先ほどの鉱物談義の最中に、自然磁石も出てきていたのでお借りして。銅線も長めに用意して貰います。もっとも、銅線に被膜もないので、コイルへの配線も空中配線です。ハンダが欲しいところですが。錫ならなんとかマナチョークで溶かせます。
三相の点滅回路。コイルに磁石。これでモーターが作れます。玩具に使われるモーターよりは、パソコンの中のファンとかのモーターに近い原理ですね。
二日後。ハンマ親方に部品の加工を手伝って貰い。軸やら軸受けやら、半分木製という不格好ながらも…クルクルクル、おお回りましたよっ! トルクはまだまだ貧弱ですが。これをいかに強力にしていくのかが今後の課題ですね。
「面白いけど、何に使うんだ?」
ハンマ親方が、聞いてきます。まぁまだこれだけでは、回るおもちゃレベルですからね。
地球の電車のように、蒸気機関どどっちが良い?と迷うほどのパワーを出すには、まだまだ研究が必要ですが。
「とりあえず、扇風機?」
まずはこの辺でしょう。
扇風機とはなんぞや? と言うか、プロペラというものの原理が知られていないので。とりあえず、そこらに転がっていた端材で竹蜻蛉を作ってみました。
軸を両手でこすってプーンと…
「「おおおっ!」」
シンプルなおもちゃですが。なんか皆が大興奮です。
「ななな、なるほど! これで空気を下に押し出して、いや風を作り出して、その反動で浮いているのですな!」
コッパーさんがさっそく分析しています。
高効率なプロペラの形状はまだいろいろ理論がありますが。そのへんはおいおいで。
実は、マナ回路を弄っているうちに、ひとつ面白い特性に気がつきました。
電気を取り出すために銀線で配線したマナ板、ここに他のマナ板から電気を流すと、流された方の片面が冷えるんです。電子冷却とかペルチェ素子とかのあれですね。
試しに、もう少し広い面積に銀板を張り付けて電流を流すと、流されたマナ板の片面に部分的な結露が…。うんうんいけますよこれは。
電流を増やすことなら比較的簡単ですので。マナコンロのマナ板を利用して、そこらに転がっていた木の箱の天辺に取り付けてみます。
…うーん、電流増やせばもっと簡単に冷えるかと思ったのですが、反対側での発熱が冷却側にまで伝わってしまって失敗。大して冷えませんね。
放熱面側の電極を兼ねる銅板には、錫を使って銅板のフィンを沢山付けてもらいます。済みませんノドムさん達をこんなことに引っ張り出して…うん、これならなんとか冷気が箱に溜まりそうですね。
数日後、簡易冷蔵庫の完成です!
早速試運転です。マナ板のフィン側が熱く、片方が冷たくなっていることを確認して。瓶に入れた果実水を箱に入れて蓋をしました。
次の日。うーん。ひんやりという程度には冷えましたかね? 箱の中が外気より温度が低くなっているのかは確かです。放熱の効率が銅のフィンだけではまだ足りないようです。
ハンマ親方がユルガルム領の職人さんと検討しています。コッパーさんも参加しています。
要は、放熱が間に合わないのが原因です。もっと冷えろと電流を無闇に増やすとマナ板全体が発熱して逆効果です。
マナ板に銀板を張る代わりに、溶かした銀をマナ板の上に流す。フィンの面積を広くして放熱できる熱量を増やす。水タンクを上に付けて片面を水冷にする。先日ほど作ったモーターにプロペラを付けて風を送る。いろいろアイデアが出てきます。
もう一つ。この冷却マナ板を2枚重ねにして、マナ板の放熱面をさらに別のマナ板で冷やす作戦です。温度差が高くなれば、その分効率よく放熱できますからね。全体の発熱は増えるので、放熱面の効率化は必須ですが。
問題点と試してみたい解決策も出てきました。
ともあれ。冷蔵庫はぜひ欲しい文明の利器です。ぜひ改良して商品化して欲しいですね。
「う…うっ…タロウ! こんなすごいもの、うちの商会だけじゃ抑えきれないよ? 」
「国で管理してもらっても良いんじゃないか? エルセニム国との配分も別途検討しないと行けないし。外交問題だろ?」
アイリさんとタロウさんが、奉納関係でまた頭抱えていますね。利権はともかく、販売には十分食い込めるでしょ?
あと。暑さは平気な今の私には必要では無いけど、絶対売れる文明の利器!、クーラーです!。
ファンが使えるのなら、後の原理は簡単。温度は、先ほどのひんやり程度での十二分です。問題は部屋の広さだけ。
「これで部屋を冷やすってか? また贅沢なマナ道具だな」
壁に設置して。室内の空気を巡回させるファンと、放熱器を冷却するプロペラと、二つ必要ですね。ギアかベルトで一つのモニターでなんとか?
室内側には横長のフローファンが欲しいところですが、あれけっこう理屈が難しいってお父さんがエアコンの掃除しながら言ってました。
まぁ原理は検証できました。あとは改良と応用です。…ハンマ親方に丸投げしますっ!
ついでに。マナから電流を取り出す方法が分ったのなら、もう一つ電球についての話。
エジソンの電球…たしか竹を蒸焼きにして炭化させたものをフィラメントとして使って。電球の中は真空だったと思います。
タングステンのフィラメントに、アルゴンとか窒素ガスを封入…この時代ではまだ無理ですね。
マナランプの限界がトング部分の耐熱性にあることは分っていますので。ガラスで密封した球の中を、熱で真空にして…という方法をメモしてみました。この辺もガラス関係の技術者に伝えるそうです。
ガラス職人、こちらにもいるんですね。
とは言っても、教会で使うような儀式用のカップとか、ステンドグラスとかになるそうで。でかい板ガラスはまだ作れないようなのですが。
鉛や錫のように低い温度で溶ける金属の上に溶けたガラスを流すと、広くて真っ平らな板ガラスが作れる…というあたりの話をしてみたところ、これにも食いついていました。
あと、レンズも作っているそうで、望遠鏡を軍向けに作っているそうです。ただ、凸+凸レンズの望遠鏡では、視野が広くて拡大率も高くなりますが、像が上下左右ひっくり返ってしまいます。それを防ぐための凸+凹レンズの組み合わせでは、視野が狭くて拡大率が低くなります。
解決方法はあります。双眼鏡のプリズムですね。プリズムを使って二回反射させることで上下左右ひっくり返して像を正常にする…って仕組みです。ガラス職人、問題が一気に解決しそうで大喜びです。
あと、望遠鏡や虫眼鏡はあるのに、顕微鏡が無い。
「顕微鏡!ぜひ!ぜひお願いします! 欲しいですっ!」
コッパーさんが食いつきます。こちらは別に見えている物がひっくり返っても問題ないですからね。望遠鏡のレンズですぐ作れそうです。
プレパラートと明り取りの鏡、この辺を備えた地球では普通の顕微鏡のデザインを描いて渡しました。こちらも色々科学の発展に寄与して欲しいところです。
あと一つ。老眼鏡も発注しておきました。
簡単なメガネは存在するようですが、まだまだ洗練されていません。丸レンズではなく、横に細長く切り出して軽量化。フレーム、柄、鼻当ては、地球のデザインを提供します。なんだかんだで完成された形ですしね。
…アイズン伯爵、ファルリード亭のカーラさん、真っ先に送りたい相手はこの辺でしょうか。まぁ必要とする人はいくらでも居るでしょう。度数を変えての大量生産をお願いすることになると思います。
・Side:ツキシマ・レイコ
さて。ベビーパウダー作りにちょっと道草しましたけど、目的の講義の方です。
まずはノドムさん達エルセニムのマナ師と、ユルガルム領のマナ術師によるマナ操作全般の講義です。私も、マナが一般的にどう利用されているかは、基本的なことしか知りませんからね。
マナというのは、基本的にバッテリーであり回路でもありとして動作します。
まずは、一番の基本であるマナコンロ。この世界で一般的に普及している熱源です。トングみたいな金具をマナ板にセットすると、マナ板が赤熱するほど発熱します。
魔獣から取り出した首から脊柱の骨を細かく砕いて加熱。そこに石英の粉を混ぜてさらに加熱。焼結させたものがマナ板です。こういう処理をすると、マナの疑似分子は、自分で整列するようですね。整列方向がバラバラなので網目状となりますが、接続は確保されます。この辺がマナの性質ですか。
ユルガルム領では、このマナの発掘も出来ます。蟻の巣になりましたけど。ただ、まだ発掘の効率は悪いようです。蟻から結構な量のマナが回収できたので、魔獣でマナを濃縮できるのでは?という話が出ていますが。マナの採掘に蟻を使おうという人はまだいないようです。まぁ蟻は全滅してますけどね。どっかから探してくる?
マナ板をトングで挟むと、トングを介して一方方向の電流が流れます。ただ、その電流で発熱するわけではなく、その電流が切っ掛けとなってマナがエネルギーを放出…という仕組みのようです。トングに流れる電流を増幅して、マナ板の中でジュール熱になる?
マナランプも原理的には似たような構造ですが。マナコンロの発熱に使う電流を別のトングに流して、そのトングを赤熱化させます。エネルギーはほとんど熱になって、光の量が多いとは言えないですね。そもそもトング部分が白熱するほどの温度に耐えられません。
とまぁ、この辺までがネイルコードとかで見たマナの利用ですね。
森林などの木材や化石燃料に依存しないだけでも、画期的なエネルギー源と呼んでいいものですが。単純に熱源としてだけしか使われていません。メンターたる体を持つ身からすると、いかにも勿体ない…けど。さてどう応用をしていくか。
ちなみに、マナ板がバッテリーから電気を取り出すというのなら、レイコ・バスターはバッテリーを爆発させるような物です。これを意図的に誘発できるのは、いまのところ私やレッドさんに、たぶん赤井さんだけのようですね。
応用出来たとしても、ダイナマイトの代わりにしかならないでしょう。まぁダイナマイトはそれはそれで有用ですが、工事以外に使われるのは日の目を見るより明らか。
これらとは別に、マナ術というものがあります。体内のマナに新陳代謝の一部を担わせて、常人以上の筋力を出したり。達人ともなれば、レイコ・ガンのようなマイクロ波を出したり、電気を流したりなんて技も出来ます。マナ塊を持った状態でそのマナ塊から打たないと、自分へのダメージもあります。
マナ術のように、マナがどのように人間の思念に反応するかは私もまだよく分かっていませんが。人の意思である程度マナの回路を組み直すことも出来るようです。体内に取り込まれたマナがナノマシン様にに人間の神経系に張り付いていて、そこからの操作を受け付けている…というイメージですか。魔獣のマナ塊を見るに、逆に宿主を乗っ取っているようにも見えます。
というところで。私がエルセニム国で見て気になっていたのは、マナランプの点滅です。
ノドムさんが、チョークみたいなマナの棒? 魔獣から取り出したマナの塊を削り出したものだそうです。とりあえず、マナチョークとでも呼びますか。それでマナ板の上をなぞっています。
なぞった後に薄ら模様のような線が描かれて…最後に一カ所、銀線を貼り付けて…スポット溶接ですか?それ。マナ術で瞬間的にマナチョークの先を加熱して…ってそんな操作もできるんですか。
最後に、接続されたところをトングで挟むと…マナ板の一部が点滅するように赤熱を繰り返しています。
…マルチバイブレーター回路ですよこれ。ICがシリコンの上に回路が印刷されたものであるように、マナ板の上に回路を描いちゃいましたよこの人。コンデンサーでは無く、赤熱時の抵抗増加をスイッチングのトリガーにしているんですか。
これは、ずっと昔からエルセニム国のマナ師に伝わっている技術だとかで。マナ術師ではなくマナ師って呼ばれているわけが分りました、確かに別物です。
まぁ、何の役に立つのか?と言われれば…この価値の神髄を知っているのは、地球の人だけでしょうね。
…ともかく、ちょっと応用について考えてみましょう。
赤熱している部分から電気が取り出せるように改造してもらいます。スイッチングの回路とは垂直に銀線あたりを配線するだけで電気が取り出せるようです。さらに三つの点滅回路を繋いで、順番に電流が流れるようなマナ回路を作って貰います。
先ほどの鉱物談義の最中に、自然磁石も出てきていたのでお借りして。銅線も長めに用意して貰います。もっとも、銅線に被膜もないので、コイルへの配線も空中配線です。ハンダが欲しいところですが。錫ならなんとかマナチョークで溶かせます。
三相の点滅回路。コイルに磁石。これでモーターが作れます。玩具に使われるモーターよりは、パソコンの中のファンとかのモーターに近い原理ですね。
二日後。ハンマ親方に部品の加工を手伝って貰い。軸やら軸受けやら、半分木製という不格好ながらも…クルクルクル、おお回りましたよっ! トルクはまだまだ貧弱ですが。これをいかに強力にしていくのかが今後の課題ですね。
「面白いけど、何に使うんだ?」
ハンマ親方が、聞いてきます。まぁまだこれだけでは、回るおもちゃレベルですからね。
地球の電車のように、蒸気機関どどっちが良い?と迷うほどのパワーを出すには、まだまだ研究が必要ですが。
「とりあえず、扇風機?」
まずはこの辺でしょう。
扇風機とはなんぞや? と言うか、プロペラというものの原理が知られていないので。とりあえず、そこらに転がっていた端材で竹蜻蛉を作ってみました。
軸を両手でこすってプーンと…
「「おおおっ!」」
シンプルなおもちゃですが。なんか皆が大興奮です。
「ななな、なるほど! これで空気を下に押し出して、いや風を作り出して、その反動で浮いているのですな!」
コッパーさんがさっそく分析しています。
高効率なプロペラの形状はまだいろいろ理論がありますが。そのへんはおいおいで。
実は、マナ回路を弄っているうちに、ひとつ面白い特性に気がつきました。
電気を取り出すために銀線で配線したマナ板、ここに他のマナ板から電気を流すと、流された方の片面が冷えるんです。電子冷却とかペルチェ素子とかのあれですね。
試しに、もう少し広い面積に銀板を張り付けて電流を流すと、流されたマナ板の片面に部分的な結露が…。うんうんいけますよこれは。
電流を増やすことなら比較的簡単ですので。マナコンロのマナ板を利用して、そこらに転がっていた木の箱の天辺に取り付けてみます。
…うーん、電流増やせばもっと簡単に冷えるかと思ったのですが、反対側での発熱が冷却側にまで伝わってしまって失敗。大して冷えませんね。
放熱面側の電極を兼ねる銅板には、錫を使って銅板のフィンを沢山付けてもらいます。済みませんノドムさん達をこんなことに引っ張り出して…うん、これならなんとか冷気が箱に溜まりそうですね。
数日後、簡易冷蔵庫の完成です!
早速試運転です。マナ板のフィン側が熱く、片方が冷たくなっていることを確認して。瓶に入れた果実水を箱に入れて蓋をしました。
次の日。うーん。ひんやりという程度には冷えましたかね? 箱の中が外気より温度が低くなっているのかは確かです。放熱の効率が銅のフィンだけではまだ足りないようです。
ハンマ親方がユルガルム領の職人さんと検討しています。コッパーさんも参加しています。
要は、放熱が間に合わないのが原因です。もっと冷えろと電流を無闇に増やすとマナ板全体が発熱して逆効果です。
マナ板に銀板を張る代わりに、溶かした銀をマナ板の上に流す。フィンの面積を広くして放熱できる熱量を増やす。水タンクを上に付けて片面を水冷にする。先日ほど作ったモーターにプロペラを付けて風を送る。いろいろアイデアが出てきます。
もう一つ。この冷却マナ板を2枚重ねにして、マナ板の放熱面をさらに別のマナ板で冷やす作戦です。温度差が高くなれば、その分効率よく放熱できますからね。全体の発熱は増えるので、放熱面の効率化は必須ですが。
問題点と試してみたい解決策も出てきました。
ともあれ。冷蔵庫はぜひ欲しい文明の利器です。ぜひ改良して商品化して欲しいですね。
「う…うっ…タロウ! こんなすごいもの、うちの商会だけじゃ抑えきれないよ? 」
「国で管理してもらっても良いんじゃないか? エルセニム国との配分も別途検討しないと行けないし。外交問題だろ?」
アイリさんとタロウさんが、奉納関係でまた頭抱えていますね。利権はともかく、販売には十分食い込めるでしょ?
あと。暑さは平気な今の私には必要では無いけど、絶対売れる文明の利器!、クーラーです!。
ファンが使えるのなら、後の原理は簡単。温度は、先ほどのひんやり程度での十二分です。問題は部屋の広さだけ。
「これで部屋を冷やすってか? また贅沢なマナ道具だな」
壁に設置して。室内の空気を巡回させるファンと、放熱器を冷却するプロペラと、二つ必要ですね。ギアかベルトで一つのモニターでなんとか?
室内側には横長のフローファンが欲しいところですが、あれけっこう理屈が難しいってお父さんがエアコンの掃除しながら言ってました。
まぁ原理は検証できました。あとは改良と応用です。…ハンマ親方に丸投げしますっ!
ついでに。マナから電流を取り出す方法が分ったのなら、もう一つ電球についての話。
エジソンの電球…たしか竹を蒸焼きにして炭化させたものをフィラメントとして使って。電球の中は真空だったと思います。
タングステンのフィラメントに、アルゴンとか窒素ガスを封入…この時代ではまだ無理ですね。
マナランプの限界がトング部分の耐熱性にあることは分っていますので。ガラスで密封した球の中を、熱で真空にして…という方法をメモしてみました。この辺もガラス関係の技術者に伝えるそうです。
ガラス職人、こちらにもいるんですね。
とは言っても、教会で使うような儀式用のカップとか、ステンドグラスとかになるそうで。でかい板ガラスはまだ作れないようなのですが。
鉛や錫のように低い温度で溶ける金属の上に溶けたガラスを流すと、広くて真っ平らな板ガラスが作れる…というあたりの話をしてみたところ、これにも食いついていました。
あと、レンズも作っているそうで、望遠鏡を軍向けに作っているそうです。ただ、凸+凸レンズの望遠鏡では、視野が広くて拡大率も高くなりますが、像が上下左右ひっくり返ってしまいます。それを防ぐための凸+凹レンズの組み合わせでは、視野が狭くて拡大率が低くなります。
解決方法はあります。双眼鏡のプリズムですね。プリズムを使って二回反射させることで上下左右ひっくり返して像を正常にする…って仕組みです。ガラス職人、問題が一気に解決しそうで大喜びです。
あと、望遠鏡や虫眼鏡はあるのに、顕微鏡が無い。
「顕微鏡!ぜひ!ぜひお願いします! 欲しいですっ!」
コッパーさんが食いつきます。こちらは別に見えている物がひっくり返っても問題ないですからね。望遠鏡のレンズですぐ作れそうです。
プレパラートと明り取りの鏡、この辺を備えた地球では普通の顕微鏡のデザインを描いて渡しました。こちらも色々科学の発展に寄与して欲しいところです。
あと一つ。老眼鏡も発注しておきました。
簡単なメガネは存在するようですが、まだまだ洗練されていません。丸レンズではなく、横に細長く切り出して軽量化。フレーム、柄、鼻当ては、地球のデザインを提供します。なんだかんだで完成された形ですしね。
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