玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~

やみのよからす

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第10章 レイコさんは自重しない

第10章第019話 教都への移動

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第10章第019話 教都への移動

Side:ツキシマ・レイコ

 理不尽に絡んできたのリシャイマの船…こちらはあれから音沙汰無しです。
 こちらはこちらで、手続きさえ終われば、とっとと下船して教都に向けて出発です。

 港町セネバルへの迎えには、クラウヤート様が来てくれました。バール君も一緒ですね。
 今回の訪教国は、戴冠認定式だけではなく、鉄道説明会と称した教国周辺国との協議、国際条約のたたき台を作る会議の開催という目的もあります。
 準備のために、アイズン伯爵やネタリア外相はもっと前から教都入りしています。

 「アインコール陛下。船旅ごくろうさまでした。教都への移動の手配は済んでおりますので。今から移動すれば、夕方には教都に着くと思いますが、それでよろしいでしょうか?」

 「クラウヤート殿、先に訪教しての準備ご苦労だな。…港の観光に心引かれている者がいるようだが。まぁとっとと移動した方が良かろう」

 ご婦人と執事さんが観光したがっているようですが。さすがに置いては行けませんからね。

 「…なにかあったのですか?」

 皆がリシャイマの船を横目で見ます。

 「ここに長居する必要も無かろう」

 ラコール騎士団長が促しました。

 「承知しました。準備させます」



 「マーリアさん。レイコ殿。無事到着何よりです。レッドさんもアライさんもご苦労様です」

 出発準備の指示をして。クラウヤート様がバール君を連れてこちらに挨拶してきます。

 「バウッ!」「お疲れ様てすっ」「クーックク!」

 「クラウヤート様も、お仕事ご苦労様です。会議の準備、大変でしょ?」

 マーリアちゃんに労って貰って嬉しそうなクラウヤート様。

 「周辺各国の参加者への連絡役と、事前会談の調節が多いね。まぁいろんな人がいるから、勉強になる…というより、心が鍛えられるよ…」

 …ちょっと遠い目をするクラウヤート様です。なんかいろいろ苦労していそうですね。

 「バール君も連れてきたんですね」

 マーリアちゃんがセレブロさんと仲良くするバール君をモフモフします。

 「母上の提案なんだけどね。最初は獣を連れてきたなんてとか怖がられていたんだけど。お茶会とかに連れて行くと、ご婦人や子供達が、バールにすごく喜ぶんだよ。今ではこいつ目当てで呼ばれることもあるくらいで…」

 エイゼル市でのバール君効果に目を付けたって感じですか。貴族街では大人気なバール君です。
 大型犬より大きいくらいの白狼バール君。真っ白なため野獣味はかなり薄まりますし。このモフモフは、そうあらがえるものではありません。

 「もちろん、安易に野生動物を飼い慣らそうとすることが酷く危険だという事は、その都度説明しているけどね」

 「そうね。いざとなれば、セレブロに唸ってもらえれば一発よ」

 セレブロさんの大きさで牙剥き出しで唸られてびびらない人はいないですからね。
 見た目可愛い動物が欲しいとねだる子女が出るでしょうが。野生動物とは、基本的に人には馴れないものです。
 地球では、野生動物と触れあうみたいな動画も溢れていましたが。あれは特別な事例と思うべきでしょう。逃げるべき天敵か、排除すべき競争相手か、それとも餌か。弱肉強食の世界に生きている野生動物は、そもそも共存という概念を期待するような生き物ではないのです。感染症も恐いですよ。

 「アライさん達も人気出そうですよね」

 「ローザリンテ殿下には、それも武器たと教えていたたきました。お仕事たと思って頑張ります」

 うん、あざとさで頼もしいアライさんです。すっかり外交官な考え方…ですね。
 その前に、ラクーン達が人と同格だということを周知する必要がありますけどね。ネイルコードでやった人権宣言、それを正教国でもやってもらいいます。
 ふぅ。やること一杯です。



 迎えの馬車は、ネイルコード製でした。サスペンションが板バネというだけで、揺れ方が違います。
 街道の方の整備も進んでいるためか、乗り心地は悪くないですね。

 当然、馬車一台では全員乗り切れないので、分乗となりますが。
 この馬車には、私とマーリアちゃん、クラウヤート様、あとリシャーフさんと護衛の二人も同乗します。男性はクラウヤート様だけですが。まぁ配分からあぶれたので、こちらに来たのですよ。
 レッドさんは、トゥーラさんが抱っこしています。はい、トゥーラさんが立候補しました。

 残念ですが、アライさんはロトリー国使節の馬車に。
 セレブロさんは、数日船に乗っていたためか、歩きで行きたいそうです。バール君もセレブロさんに付いて小走りです。

 私やマーリアちゃんはともかく。正教国トップたるリシャーフさんと同乗ということで、ちょっと緊張しているクラウヤート様ですが。

 「どうかしら?クラウヤート君。お仕事の方は順調?」

 「はっはい。色々大変ですが、なんとか付いていっております」

 ふーむとクラウヤート様を眺めるリシャーフさん。

 「あのアイズン伯爵のお孫さんだし。優秀だし、見た目も悪くないし。釣書とか殺到しそうね。」

 釣書。要は婚約の打診ですね。
 今は十六歳でしたっけ?クラウヤート様。領政にも関わっていますし。最近はアイズン伯爵の助手のような業務もしているそうで。今回の認定式と説明会にもメンバーとして参加しています。

 「えっ…あ…あの…。まぁ確かにお爺さまのところにいくつか来ているそうですが。」

 ふーむ。視線がちらちらとマーリアちゃんの方を漂っていますね。
 …リシャーフさんは気がついているようですが。肝心のマーリアちゃんは、側で歩いているセレブロさんとバール君に意識が向いています。

 『脈あるの?』『微妙です』
 リシャーフさんとアイコンタクトで会話します。通じるのが女子力です。
 クラウヤート様がマーリアちゃんに気があるのは、見ていて明確ではあります。セレブロさんとバール君も仲が良いですし、領庁でもよく会うそうです…仕事で。

 「ま、まだ精進したいと考えていますので、今は結婚とかは考えていないというか…」

 まぁ何度も言いますが。マーリアちゃんは超絶美少女です。そこにシルバーブロンドに紅眼という要素も相まって、人間離れした美少女です。
 エルセニム人ということで忌避する人はいますが。彼女の見た目を忌避できる人は…まぁ連れの男性の視線がマーリアちゃんに取られたら、同伴の女性からすればそりゃ不愉快でしょう…それくらいですか。

 マーリアちゃんも当然、そういう視線には気がついているというか、もう馴れたというか。視線とはそういうものだからと気にしないのが常態になっています。クラウヤート様からの好意も、どこまで気がついているのやら…
 う~ん…お友達同士の恋愛問題…積極的に応援したうほが良いのか、見守るだけにした方が良いのか…

 「リシャーフ様は、結婚しないのですか?」

 自分の話題になっているとも気がつかずに、マーリアちゃんが話を振ります。
 護衛のタルーサさんとトゥーラさんが、ちょっとピリッとする中。リシャーフさんが前のめりになって小声で話します。

 「まだ内緒だけどね。…実はアトヤック様とね…結婚前提でお付き合いしていて…」

 「え? お兄様?」

 突然爆弾を突っ込まれましたっ! アトヤック様! マーリアちゃんのお兄さん! って、エルセニム王太子!
 ダーコラ国に行ったときには、いろいろ協力して貰いましたあの方です。

 「今までそんな素振りっ!」

 お兄さんのことなのか、リシャーフさんのことなのか。動揺しているマーリアちゃん。

 「…いろいろ影響を考えると、ファルリード亭や汽車の中で話せるようなことでもないからね。皆にも黙っていたけど…」

 この馬車の中ならちょうど良い…ってことですが。クラウヤート様にも口止めを念押ししています。
 リシャーフさん曰く。
 アトヤック様は、最初はエルセニム人の奴隷解放やら賠償問題。最近は他国にまだいるエルセニム人についての交渉とかで教都に駐留していることが多いそうで。さらに王太子教育も兼ねて教会で勉強もしていたそうで…教会で勉強というのも、なかなかに肝が据わっていると思いますが、なにかしら意義を見いだしたのでしょうか。そういった中で、二人は知り合ったそうです。
 リシャーフさんは二十代後半になりつつありますが。アトヤック様も二十代中盤。まぁアリな組み合わせですね。

 ただ。
 アトヤック様は、マーリアちゃんの兄と言うこともあって、超絶美形といって良い容姿ですが、白髪紅眼の国エルセニムの王太子。リシャーフさんは、代替わりしたとは言え、こないだまでエルセニム人を虐げる側だった赤竜教のトップ。ロミオとジュリエットどころではない因縁でガチガチです。
 結婚したとしてどちらの国に属するのか、どのような国政を行うのか。そこに報復的な差配がされたりはしないのか。
 まぁどちらの国も混乱するでしょうね。

 「これもここだけの話だけどね。エルセニム国がネイルコードに臣従して辺境領になる…という話も出ているのよ」

 びっくりしてマーリアちゃんを見ますが。これについては平然としています。

 「…もしかしてマーリアちゃんは知っていた?」

 「レイコ、ごめんなさい。さすがにこのレベルの話ともなると、親しいからと明かせるような話でもなく…。でも、お兄様の結婚は、私も今初めて聞いたわよ」

 …いやいや。教都に向かう途中の馬車でそんな重要な話をカミングアウトされても…

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