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クロ
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美月は肩で傘を押さえながら、両手でぎゅっとクロを抱きしめる。
いつもふさふさなクロの毛並みは、突然の雨によって濡れてしまっていた。
それでも、クロは千切れんばかりに尻尾を振って、美月を見て嬉しそうにクゥーンと鳴く。
「……いつもお迎え、ありがとね、クロ。さあ、帰ろうか?」
ウォン、とクロは返事をして、立ち上がった美月を穏やかな目で見上げてくる。
そうして、一人と一匹は揃って山頂の家路へと向かった――これは、美月が山の下の中学校へ通うようになってから、いつものことだ。
美月は、クロにも傘を差しかけながら、いつも通り今日あったことをクロに話して聞かせる。
とっても桜が綺麗だったこと、学園も先生方も先輩方も素晴らしかったこと、軽食、ううんパーティーのような素敵なお昼ごはんを御馳走になったこと、そして、……学園の初日なのに、失敗してしまった話のところで美月の声色が湿った。
クロはちょっと首を傾げ、それからさらに美月に寄り添い、慰めるように美月の手をぺろぺろと舐める。
「あ~もう!……クロ、大好きだよ」
美月は立ち止まり、もう一度クロをぎゅっと抱きしめる。
「大丈夫だよ。それからは、ちゃんとしたの。……たぶん。ちょっと怖かったけど、理事長さんとも面接?して、無事何とかなったみたいだし。翠ちゃんにも、たくさん励ましてもらったから――大丈夫、明日からまた頑張る!」
宣言した美月の顔をクロがべろん、と舐めた。
そんなに無理するなよ、とでも言われた気がして、美月はへにょりと笑う。
「……でも、もし、もしもまた、失敗しちゃったら、クロにだけは、隠さず報告するね?」
自分達以外ここには誰もいないのに、美月はこっそりと小声でクロに語りかける。
そうして、全身真っ黒なのに、唯一額に十字のような白い模様のあるクロの頭をゆっくりと撫でてから、立ち上がって前を見た。
前方には、もう家の明かりが見えている。雨はいつの間にか、小雨になっていた。
「遅くなっちゃったから、心配してるかな?……よぉし、クロ!家まで競争しよう?」
美月は折り畳み傘を畳むと、走り出した。隣で弾むようにクロも走る――もうすぐ、家だ!と美月が思った時、家の前をうろうろと行きつ戻りつする人影に気がつく。
自分を案じ、待っていてくれるその姿に、美月の心は温かくなる――
「おばあちゃん!ただいま~!」
美月の明るい声に、その人物は弾かれたようにこちらを見た。
「美月ちゃん!お帰りなさい」
傘を片手にタオルを抱え、うろうろしていた美月の祖母珠子は、ほっとしたように美月に向き直った。
「……思ってたよりも帰りが遅かったから、おばあちゃん、心配で。クロちゃんがお迎えに行ってくれてるから、大丈夫だとは思ったけど、雨も降って来るし……」
言いながら、珠子は美月にタオルを渡し、クロの頭を撫でる。
「心配かけて、ごめんね、おばあちゃん。クロもありがとう」
「ウォン!」
「あらあら、やっぱり美月ちゃんもクロちゃんも濡れちゃって……先に湯場で身体を温めていらっしゃい。後で、着替えを持って行ってあげる」
祖母の勧めに美月は頷き、玄関にカバンを置いた後、またすぐにクロと共に裏庭へと歩き出した。
いつもふさふさなクロの毛並みは、突然の雨によって濡れてしまっていた。
それでも、クロは千切れんばかりに尻尾を振って、美月を見て嬉しそうにクゥーンと鳴く。
「……いつもお迎え、ありがとね、クロ。さあ、帰ろうか?」
ウォン、とクロは返事をして、立ち上がった美月を穏やかな目で見上げてくる。
そうして、一人と一匹は揃って山頂の家路へと向かった――これは、美月が山の下の中学校へ通うようになってから、いつものことだ。
美月は、クロにも傘を差しかけながら、いつも通り今日あったことをクロに話して聞かせる。
とっても桜が綺麗だったこと、学園も先生方も先輩方も素晴らしかったこと、軽食、ううんパーティーのような素敵なお昼ごはんを御馳走になったこと、そして、……学園の初日なのに、失敗してしまった話のところで美月の声色が湿った。
クロはちょっと首を傾げ、それからさらに美月に寄り添い、慰めるように美月の手をぺろぺろと舐める。
「あ~もう!……クロ、大好きだよ」
美月は立ち止まり、もう一度クロをぎゅっと抱きしめる。
「大丈夫だよ。それからは、ちゃんとしたの。……たぶん。ちょっと怖かったけど、理事長さんとも面接?して、無事何とかなったみたいだし。翠ちゃんにも、たくさん励ましてもらったから――大丈夫、明日からまた頑張る!」
宣言した美月の顔をクロがべろん、と舐めた。
そんなに無理するなよ、とでも言われた気がして、美月はへにょりと笑う。
「……でも、もし、もしもまた、失敗しちゃったら、クロにだけは、隠さず報告するね?」
自分達以外ここには誰もいないのに、美月はこっそりと小声でクロに語りかける。
そうして、全身真っ黒なのに、唯一額に十字のような白い模様のあるクロの頭をゆっくりと撫でてから、立ち上がって前を見た。
前方には、もう家の明かりが見えている。雨はいつの間にか、小雨になっていた。
「遅くなっちゃったから、心配してるかな?……よぉし、クロ!家まで競争しよう?」
美月は折り畳み傘を畳むと、走り出した。隣で弾むようにクロも走る――もうすぐ、家だ!と美月が思った時、家の前をうろうろと行きつ戻りつする人影に気がつく。
自分を案じ、待っていてくれるその姿に、美月の心は温かくなる――
「おばあちゃん!ただいま~!」
美月の明るい声に、その人物は弾かれたようにこちらを見た。
「美月ちゃん!お帰りなさい」
傘を片手にタオルを抱え、うろうろしていた美月の祖母珠子は、ほっとしたように美月に向き直った。
「……思ってたよりも帰りが遅かったから、おばあちゃん、心配で。クロちゃんがお迎えに行ってくれてるから、大丈夫だとは思ったけど、雨も降って来るし……」
言いながら、珠子は美月にタオルを渡し、クロの頭を撫でる。
「心配かけて、ごめんね、おばあちゃん。クロもありがとう」
「ウォン!」
「あらあら、やっぱり美月ちゃんもクロちゃんも濡れちゃって……先に湯場で身体を温めていらっしゃい。後で、着替えを持って行ってあげる」
祖母の勧めに美月は頷き、玄関にカバンを置いた後、またすぐにクロと共に裏庭へと歩き出した。
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